『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』の前編・後編を観てきました。
原作は2016年にオトメイトから発売された乙女ゲームで、私は無印だけプレイ済。
ゲームのストーリー自体は面白かったものの、特に思い入れは無い作品だったので今回の映画もスルーしようかと思っていたんですが、公式サイトから見れるノンクレジットOPがめちゃくちゃ良くって!
それにつられて前編を公開終了3日前に観に行ったんだけど、想像の100倍良かったです!
即後編の初日チケットを取り、後編公開当日に配信が開始された前編をもう1度観て向かうぐらいには良かった!
まあ期待値がほぼゼロで行ったのでこの評価なんだけど、ハードルが下がりまくった状態で見る映画ってこんなに良いところ探しばっか出来るんだなと自分でも驚き。
いや~~~でも出来も十分に良かったと思うよ。
以下、前編&後編+原作ゲームのネタバレ感想!
前編
(前編は既にU-NEXTで配信されているので、画像もそこから引用)
横山克×キズの最高タッグ
まず第一に言いたいのが、音楽の素晴らしさ!
アバンのあらすじ紹介ムービーからBGMがすごい良くって「え!?音楽良くない!?作曲者誰!?」と配信見返したら
横山克か~~~~い!
そりゃ私が好きなはずだよ、未だに『Occultic;Nine』のサントラ聞いてます!
オカルティックナインのBGMでもそうだったけど、彼の作るエレクトリックなBGMは都市型クライムサスペンスにめちゃくちゃ合うんだよね。
そしてそこから流れ出すキズ『人間×失格』が!
マ~~~ジで最高!!!
アバンムービーからこのOPが爆音で流れ出した瞬間に勝利を確信しました。
この時点で55分の上映時間に1800円(特別興行なので割引なし)の元は取れたし、後は楽しむしかないよね?
もう本当にこのOPを映画館のど迫力スクリーンと音響で味わえた事自体が幸せでした。
信じられないくらい気持ち良かったです!
歌詞もカラマリの雰囲気をすごい的確に言い表していてすごいんだよね。
人に産まれて人を真似て
人と呼ばれるように
人を繰り返し人を知り
人並みに愛し人並みに愛されて
人らしくして人に化けて
人みたい
ごめんね ほんとは
君の涙で遊んでいたい
この言葉って原作ゲームの黒幕:冴木目線っぽくもあるし、今作の黒幕:捨和ミツルっぽくもある。
X-Day事件の犯人達も大体こんな感じだし、何か本当、作品の核を上手にすくい上げて音にしてくれた感じがあります。
曲終わりに「はじまり はじまり」と物語開始の宣言をしてくれたのも、OPオタクとしては痺れた!
OP映像も個人的にはノンクレジットよりクレジット有の方が良かったかな。
配信で改めて見返すと、クレジットのフォントやその出し方、細部にまでこだわり尽くしてくれた事が伝わってくる出来。
モーショングラフィックスの方々が本当に頑張ってくれた映像だと思います。
原作ゲームの再現もバッチリ!
今作は本編上映前にウェルカムムービーとして攻略対象者達のミニキャラ寸劇が入るんだけど、その入りからして原作愛に溢れていて心が温かくなりました。
原作ゲームの開始画面を模して、かつ「Push Any Button」の表記まであったんですよ。
もうあの「Push Any Button」が目に入った瞬間に、「うわ!懐かしい、vitaじゃん!」って声を上げそうになりました。
アプリやswitchに移植もされてるけど、私にとってのカラマリはやっぱりvitaで、その懐かしさを再現してくれただけで胸が熱くなる。
自分の過去記事を検索したら、カラマリのトロコン日時は2017年9月15日って出てきたので、もう6年も前のことになるのか。
6年前に1度やっただけのファン未満の乙女ゲーマーですらこんなにグッときているので、作品ファンなら多分もっとずっと嬉しいはず。
アバンムービーで原作OPを構成するスチルの再現をしてくれたのも最高に良かったです。
ファンの間では作画面を不安視する声もあったみたいけど、個人的には全然気にならないレベル。
逆に作画良い方じゃない!??
まあ前編だと引きの場面でちょっと怪しいところがあったけど、後編はずっと「顔綺麗だな~、作画良いな~」と思って観ていました。
主人公:星野市香の顔、CV.本渡楓による声共にめちゃくちゃ可愛いし!
ちゃんとキャラデザ:花邑まいの瞳の再現をしようとしているのに好感が持てます。
というか、スタジオディーンはこんな面ッッッ倒くさい服装の作画をよくやってくれた方でしょ!
もし私がアニメーターだったらこんな制服1回描かされただけでも発狂するのに、モブ警官全員この服だからね!?
この休憩シーンが出てきた時、アニメーターの方々がいかに普段、無理難題を吹っかけられているのか伝わってきて気が遠くなりそうでした。
よくやってくれた方だと思うよ、本当に。
攻略対象について
ゲームプレイ時は笹塚尊が一番好きだったんだけど、今回の映画を観てると柳愛時の良さにやられる。
「市香を死なせたくない」って言ってくれたところや、「市香を頼む、これは柳さんからの伝言」って岡崎さんに残してくれるところも、恋愛感情というよりは純粋に仲間を想う気持ちに溢れていてじーんとしました。
CV.森田成一の声も寡黙だけど真っ直ぐな正義感に貫かれていて超格好良い!
ただ今作の映画観てると、一人の男選んでこの事務所内の空気を悪くしたくないとも思っちゃうんだよね。
付き合うんだったら柳さん、笹塚、榎本君の3人全員同時攻略ルートがいいです。
ガバガバ雰囲気大好き!
あと私が映画館で思わず笑いそうになったシーンを2点挙げておこう。
まずはニュース画面に映る御國れいの宣材写真。
隣のおっさん議員とのギャップやば!
マジで政界のプリンスとしか言いようがなく、これこそが乙女ゲームのデザイン力……!とどこか圧倒されるものがありました。
もう1つは爆破後のシンポジウム会場。
大災害レベルで笑っちゃうんだよね。
一瞬のうちに建物がこれだけ崩壊する爆発ってかなりの大惨事のはずなのに、土煙や黒煙はほぼゼロで青空はあんなにも綺麗。
モブの観衆含め一切誰もこの爆発に動揺せず、受け流していくガバガバ感が妙にツボでにやにやしていました。
でもいいんです、一番良いところで流れ出すED曲『眠らない街』がめちゃくちゃ良かったから!
全てが格好良すぎる!!
まずタイトルの『眠らない街』というのがいいよね。
眠らない街と言えば一般的には新宿歌舞伎町、つまり今作の舞台である新宿そのものを最初から名指ししているのが本当におしゃれ。
特に「隣街で流行りのアイスを食べに行こうよ 全部終わってから行こうよ」というフレーズがヤバいんですよ。
カラマリの舞台となる新宿は、X-Day事件の影響で隔離措置が取られ、その中では銃刀法違反が解除されるほど治安最悪の封鎖された街なんですよね。
だから隣街に出掛けられるのは文字通り「全てが終われば」、終わればの話でしかない。
このED曲は攻略対象者達(柳、笹塚、榎本、岡崎、白石)目線の歌詞のように思えます。
「あゝ神様とか どうやら僕にだけ見えない」っていうのはもちろんアドニス側の犯人達もそうなんだけど、でもあの5人だって感じてたことでしょ?
改めて思うけど、このキズというアーティスト、物語の要約が上手すぎるね。
「はじまり はじまり」で始まった前編が「終われば」という仮定の願望で終わる。
そういうギミックまで含めて最高のED曲でした。
後編
後編は前編と比べるとかなりシリアスになっていて、絵コンテや演出、作画にも力を入れてるのが伝わってきました。
カラマリファンなら、あのひりついた雰囲気とどんよりした結末は満足いくものなんじゃないのかな?
個人的には前編のガバガバ雰囲気の方が楽しくて好きなんだけど、それでも映画オリジナルキャラ:捨和ミツルの結末にはグッとくるものがありました。
何よりEDのキズ『十八』が流れ出した瞬間の興奮がやばかった!
次は僕を見てほしい
脆いのはわかっている?その瞳には映らない僕は弱さを飲み込んで
捨和ミツルの事じゃん!!!
他にも「次は何をすればいい? 君と手を繋いだら 痛みには慣れたのに また滲みている気がしている」とか「次は何をしてほしい?ひとりにはしないでね」とか……!
サブスクで曲を聞いているだけでは知り得なかったこの曲の真髄が鮮明に見えて、「あ~~~、やっぱり本編を見るのってめちゃくちゃ大事だな」と改めて思いました。
「ああなりたくはないから、温もりを」の「ああ」も、自分の父親を指していたことが今なら分かるよ。
前篇では「揉めに仕事してきてるの?」ってぐらいの馬鹿に見えたのに、後編では彼こそが物語の原動力で痺れました。
本編のX-Day事件は4月から12月に至るまでの毎月1回、つまり9回起こるんだけど、それを踏まえての「拾=十」がいいよね。
映画オリジナルストーリーとして後付けされたこの事件にぴったりの名字だと思う。
曲タイトルの『十八』も彼の拾とかけたものなのかな?
八が何を指しているのかは分からないけど、個人的には彼が18歳だった時の心境で今作の主人公との出会いを歌ったものかな、なんて思います。
彼が最後、自決のために差し出された銃を一瞥もせずに払い除けるとこは本当に良かった!
警察に確保された時点で今から自分が殺されることなんて分かりきっていたのに、最後に主人公を見る眼差しは柔らかくて、この事件の全てに満足したように笑っていて。
彼としては父親を殺してネオ新宿プランをぶっ潰し、最後の最後に主人公という理解者まで得られたんだから本望なんでしょう。
自分が今まで生きてきた生に対して、納得してお別れが出来たのなら良いことだよ。
EDで「シャラララ」と唄うコーラスは彼へのさよならであり、葬送歌なんだろうなと思うとたまらない気持ちになります。
カラマリの男性陣はそれぞれ自分なりの「正義」を強く掲げるけど、拾和ミツルだってそうでしょ?
巨悪である父親を殺し汚濁にまみれた計画を白日の下に晒した彼の行動は、こちら側から見たら正義のヒーローにも見える。
殺したのは全員裏金まみれの人間だし、彼に賛同した仲間もそれなりにいた訳だし。
結局のところ、彼は自分の正義を貫けた人でもあるので、カラマリファンからのウケは良さそう。少なくとも私はめちゃくちゃ好きです。
CV.小西克幸による声も最高でした!