MBS Truthという男性向けエロゲブランドが2001年に出した監獄学園凌辱ゲー『灰被り姫の憂鬱』をプレイしました。
プレイ時間は8時間程度でED数は各キャラごとに10。
中々に風変わりな伝奇系学園凌辱ノベルで面白かったです!
ストーリーのあらすじ含めて全部ネタバレ感想に回したのでここで言えることなんてほぼ無いんだけど、先にシステム面への愚痴だけは言っておこう。
3つの不満点
まず第一の不満点はバックログ機能がないこと。
2001年のゲームなので割り切るしかないんだけど、一文読み逃したら直近のセーブデータからロードし直すしかないのが手間でした。
そしてその面倒くささに拍車をかけるMAP移動モード!
だ~~~るいんだよなあ、これが……。
プレイした事がある人ならこの選択画面のだるさを分かってくれるはず。
今作は木曜から月曜の朝までの約4日間を校舎のどこで過ごすかによってルートが決まるんだけど、その選択回数が多すぎる。
朝1回、午前中3回、昼1回、午後3回、放課後3回、夜1回の12回分どこかに行かないと1日が終わらず、それを4日続けるんだから1ルート攻略あたり48回。
フルコン目指して10人分こなそうとなると480回この選択画面と出くわすハメになります。
で、このMAP画面は「棟選択→移動場所選択」と2回選択を要求してくるので、クリック数で言えば960回。
960回も同じ画面上でカチカチカチカチしてて、うんざりしない方がおかしいでしょ……。
ただ闇雲に回数を浪費しようとしても、イベントがある場所へ行かないと時間は一切進まないし!
まあステータス画面で各攻略者への好感ポイントを確認しつつ、ヒロイン達との時間を重ねる攻略は面白かったと言えば面白かったけど。
ルートが確定した瞬間に900ポイントになるのにはウケたんだよね。急にインフレ。
あとエロゲに言うのも何なんだけど、性行為シーンが多すぎ!
プレイ時間8時間に対しての72回は、私がプレイしたエロゲの中でもダントツの数だし、今後その記録が破られる事もマジで無さそう。
5分に1回というペースで始まるものに興奮も何もなく、逆に徒労感の方を強く感じる仕上がりになっているのは、「あぁ、灰被り姫の儀式を行う男子生徒の方もこんな感じで苦痛なのね……」ってプレイヤーに思わせたいからなの?
ただ使い回しは1枚もなく、72枚分の新規CGが拝める点はボリューミーで良かったです。
逆に性行為以外のノーマルCGがたった4枚しかないのにも驚くんだけど。
まあいいや!愚痴はここまで!
逆に言えば上記の3点以外に不満は一切ありません。
物語自体はずっとめちゃくちゃ面白かったです!
以下、ネタバレ感想。
ネタバレ感想
まず今作が鉄棒に吊るされた死体の描写から始まった瞬間に、私は今作のことを大好きになれそうな予感がしました。
その後のHRで告げられたマザーの言葉で、予感は確信に変わる。
死は、救済ではない。
死は、虚無でしか無い。
虚無は、救済ではあり得ない。
ハレルヤ。
こんなん心の中の中二病が疼き出すに決まってるじゃん!大好き!
灰被り姫の儀式について
クラス全員の男子に丸一日凌辱されることで、執行委員という立場を得られる「灰被り姫の儀式」。
個人的には結構ヌルいというか、女の子側にもメリットがある取引だなと感じました。
もちろん身体と精神面ではひどく酷だろうけど、儀式はほぼ1日で終わるし、儀式が終わったら誰でも一人選んで吊るすことが出来るし、その翌日からは指一本触らせない事だって出来る。
第三者の目から見たらそこまで悪くない条件に思えるよ。
そこまで手酷い暴力がある訳でもないし、凌辱ものとしては割と軽めかも。
学園と主人公の秘密について
凌辱要素が薄い代わりに何の描写が濃厚かと言えば、この奇怪な学園の「秘密」。
あんな奇妙な儀式がまかり通る学園は当たり前だけど現世ではないんですよね。
亜理砂ルートで「生と死の境目…魂の修練場にしてあたしたちの狩場」、舞子ルートで「血塗られた土地」「餌場」という発言があるので、言わば養殖場めいた煉獄というか。
簡単に生徒が殺されるのも家畜扱いとしては妥当なところか。
主人公の甲斐という名前=カインだということも舞子ルートで明かされている。
カインと言えばカインとアベル、兄弟間で起こった人類最初の殺人者のイメージが強いけど、今作で言えば「アダムとエヴァの息子」で「土を耕す者」の意が重要視されてるんだと思う。
天使の末裔だという事は茉莉ルートで、土を耕す者は亜理砂ルートで明言されていた通りに。
昼の世界と夜の世界
またこの学園でもう一つ重要視されるのは「昼の世界」と「夜の世界」、その2つの住人を管轄する者達。
それがマザー(茉莉)と執行委員達(桜子、沙希先輩、小夜)とシスターと眠り姫(亜理砂)の4者であって、各自完全な協力関係という訳でもなさそう。
それぞれ統治者、管理者、処刑者という立場で世界という「システムの維持」のために動いているだけなので、そのシステムの所有権を巡って殺し合いもするんですよね。
私がルート攻略した順は、翠璃→五月→絵梨→江頭→麻耶→舞子→流奈→亜理砂→茉莉→桜子という順番なんだけど、一番最初に真相ルートとも言える茉莉ルートをやっておいた方がいいかも。
灰被り姫の儀式の意義と、去年の灰被り姫の儀式で何が起こったのかを先に把握しておいた方が、物語の飲み込みがスムーズのはず。
というかこの作品は昼と夜で対になるルートをちゃんと出すんですよね。
昼の統治者であるマザーこと茉莉のルートと、夜の制圧者である眠り姫こと亜理砂ルート。
江頭ルートが昼のクーデターであるのに対し、舞子ルートは夜の反乱と言っていい。
なかなかに面白いバランスの取り方だなあと思います。
森末茉莉ルート
図書館で司書をしている茉莉が学園のマザーだと明かされ、去年の儀式も含めて色々説明してくれる真相ルート。
あなたの知っている灰被りの儀式は、システムを維持する為のもの。
もう一つの灰被り姫の儀式は、この世界を維持する為のもの。去年の灰被り姫の儀式が、もうひとつの性質を持ったものだった。
でも、去年は失敗した。
ひとりの灰被り姫では、力を受け止められないという事実を誰一人知らなかったのが直接的な原因ね。
去年の灰被り姫だった桜子は儀式途中で死に、今の桜子はマザーが立てた代役であること。
五月含めた図書委員のメンバーは桜子から作られた、いわば桜子の分身であることも明かされる。
わたしたちは、桜子から5人の灰被り姫を作ったわ。
再生したのよ。
ひとりの灰被り姫では去年の二の舞…今年は、たぶん上手く行くわ。
ちゃんと言葉で説明してくれるのがありがたいね。
屋上で再びの灰被り姫の儀式を図書員の5人と行い、それが成功すると5人は1人の桜子に戻って、言わばハッピーエンド。
いや、復活するんかーい!
桜子ルートで散々囁かれた「死者は、戻ることは無い」は何だったんだ。めちゃくちゃ蘇ってる。
個人的にはこれぐらいのハッピーエンドが合っても全然いいんだけど、代役の方の桜子は一体どうなったんだろう?
元の桜子に統合されたのか、それとも「執行役員としての桜子」として別人格に区別されて抹消されたのか。
1年前の桜子と1年後の桜子、この2人が同時に存在することを学園側が公にするはずはないし、プレイヤーとしてはせめて統合されたと思いたいところ。
そうでなければ代役として1年間過ごした桜子はどこにも、誰にも受け入れられなかった事になり、その全否定はさすがに可哀想だなと思うので。
亜理砂ルート
昼の学園を統治するマザーと対をなす、夜の学園の支配者:亜理砂ルート。
あたしが眠っている間、ここをあげる。
生と死の境目…魂の修練場にしてあたしたちの狩場。
天使の末裔のあなたなら、維持させることが出来るわ。さあ、今度は甲斐が世界を作るのよ。
数百年の眠りにつく亜理砂から学園の統治権を譲り渡され、執行委員会委員長に就任してハーレム君臨EDとなります。
亜理砂の言動はまるでこの世界の創造神のようにも映るけど、でもとあるCGで彼女の耳は尖っており、背景には黒い羽根が舞っている。
つまりは悪魔なんですよね、きっと。
傷を抱えている者は、血の匂いをさせているからね。
ねえ知ってる?傷ついた心はね、とっても甘いの。
↑好き。
舞子ルート
病棟に伏せる少女:舞子が「黒き獣」&シスターの1人と手を組み、学園の支配権を奪い取るルート。
個人的に物語の過程としてはこの舞子ルートが一番楽しかったです。
知人、友人が一気に殺されて、学園が急速に静まっていく雰囲気が、昼側の暴動とはまた違った闇の深さを感じさせて良い。
江頭率いる昼側のクーデーターが失敗に終わったのに対して、こちらはちゃんと成功する。
新しい世界の道化。餌たちを統括する者。
この為にあなたは作られたのよ、甲斐くん。血塗られた土地を耕す者。
汝、カイン。
「さっき『姫』を始末したわ。これであたしたちは自由になれる」という発言から分かるのは、シスターと舞子は学園の眠り姫こと亜理砂の支配下に置かれていたということ。
その転覆を狙って彼女たちは「黒き獣」という純粋な化物を使役し、「この世界をあたしたちの都合に合わせる」ことに成功。
舞子の正体には特に言及が無いんだけど、もしかしたら亜理砂と同族の悪魔だったのかも。
亜理砂と同じ病棟の中に遥か昔からいたらしいし、そりゃ横から掠め取りたくなっても不思議じゃない気がする。
で、「餌場の管理者」としての立場を受け入れた主人公は、彼女たちが言う通りに振る舞う道化EDに。
唯一ある立ち絵がこんなんでいいんですか、この主人公は……。
江頭雅夫ルート
失敗した昼側のクーデターこと、江頭ルートにも触れておこう。
本来なら翠璃がいるはずの美術室で、このニタニタ顔を見る度に心底うんざりしていたんですが、彼の話はそれなりに重要だったことも今なら分かる。少なくとも翠璃ルートよりはね。
彼はシスターと組んで学園というシステムの転覆を狙った訳なんだけど、黒き獣抜きのシスター単独だけで亜理砂を始末出来るはずがない。
結局江頭は執行役員側の人間に殺されて死亡、彼を筆頭にしていた反乱もそのまま沈静化されて終わり。
ただ江頭が取った行動で判明した事実も多数あるんだよね。
特に「一般生徒でも昼側の人間に擬態したシスターなら殺せる」ことと「本来のシスターは1名だけであり、現在3名いるシスターはその座をかけて裏切り合いの関係性にある」の2点は大きかったと思う。
こんなにも息ぴったりで、愉快な3人組処刑トリオだったのに……。
ラストのハレルヤ掛け声についても文字だと「ハレルヤ!」って書かれてるだけなんだけど、実際は「ハレッルゥゥゥゥ↑↑ヤッ!!!」だから。
あの声の面白さだけでも聞いてみてほしいところです。
須磨翠璃ルート
真っ当に灰被り姫の儀式が行われ、彼女もそれを乗り越えて執行委員の仲間入りを果たす翠璃ルート。
作中を振り返っても翠璃だけが唯一夜の世界との接点を持っていないんだよね。
一番穏当で、ゆえに一番真実からは遠い、どノーマルEDという感じ。
七重五月ルート
私は五月ルートを茉莉ルートの前にやってしまったんだけど、彼女が元桜子の化身だと考えると、全ての言動に納得がいって驚きました。
去年はあたしが臆病だから甲斐を悲しませてしまったけど。今年は、違うわ。
あたしがずっと守ってあげる。
甲斐を守ってあげる。だから、あたし灰被り姫になったのよ。
だからこそ代役である現桜子が激怒して、サーベルを引き抜いたのも分かる。
ここって本物vs代役のシーンだったんだな。そりゃ桜子がブチ切れるのも当たり前か。
目の前で甲斐の死を目撃した五月は、執行役員になれなかった灰被り姫達が過ごす病棟で、甲斐の幻を抱き続けるという精神崩壊ED。
これも彼女の愛の深さを思ったら、仕方のないことだと思います。
あとラストの一枚絵で緑の葉が舞い踊っているのを見た時、五月という名前には2つの意味があるんだなと思い至りました。
1人の人間が5分割されたという意味の「五」と、文字通りの「5月」。
桜が散った後の、新緑の季節ですね。
御堂絵梨ルート
夜の住人達に「灰被り姫の儀式」をやられると、背に黒い羽根が生えてシスターになるというシスター堕ちED。
この結末は翠璃と対比させてるんだと思う。
昼の灰被り姫は執行委員に、夜の灰被り姫はシスターに。
現時点でシスターが3人いる以上、3回は夜の灰被り姫の儀式が行われたということになり、ただでさえ超過人数なのにそんな簡単に人数増やして大丈夫?とも思うんだけどね。
江頭ルートで「あの方たちが殺りたくてウズウズしている」という発言があった通り、処刑者は処刑者なりに殺人欲が強くて大変そうだし。
少なくともあれだけ心優しかった絵梨が、今後大量殺人に手を染めるのは確実な訳で。
あの背中に生える黒い羽根は、ダークサイドに変容していく少女の象徴なんだろうなと思います。
匂坂流奈ルート
絵梨にはシスター堕ちとはまた別に、昼側の灰被り姫になるルートも用意されているんですよね。
そこに至らせるのが百合というのもまた驚きなんだけど。
恋した女に触れるためだけに自身の肉体をクラスの男子ほぼ全員に売り、票をかき集める彼女の凶暴かつ狂信的な片想いの仕方は結構好きなんだけど、そこまで恋焦がれる理由が何一つ語られていないので「そ、そうなの?」と呆気に取られるしかないところがあります。
ただ彼女が儀式の途中に好き勝手に告白しまくった挙句その場で自害までしたから、「匂坂さん」呼びから「流奈」呼びにまで昇格出来たんだと思うと、まあ、良かったねという気持ちにはなる。
好きな女の子の為になら自分の全てを利用出来る、恋の異様な迫力に突き動かされているルートで私は好きです。
柏木桜子ルート
一応このゲームの本命と言っていい桜子ルートなんだけど、ぶっちゃけそこまで重要な印象は受けない。
屋上で桜子と話す→茉莉の部屋で会話する→空き教室で過去の幻覚を見るのループに感化された主人公が「この一年は、たぶん幻だったんだ」と結論付けて、桜子を刺し殺すという身も蓋もないEDだし。
もちろん主人公はその後即処刑されるんだけど、それを救いと言って片付けていいのかは疑問。私は駄目だと思います。
茉莉先輩が「あなたたちの魂は、何度、試練を乗り越えれば救われるのかしらね」と嘆いてまでくれてるのに、このルートの主人公は何も乗り越えていないと思うんだよね。
ただただ過去の幻覚に呑まれて、今の桜子を切り捨てただけ。
これを桜子ルートにしてしまうのは、桜子の方が可哀想だよ。
村瀬麻耶ルート
……と、桜子ルートに不満たらたらなくせに、麻耶が桜子と小夜先輩を殺して逃げる麻耶ルートの結末は大好きで笑っちゃうね。
【麻耶】
だって、優樹に約束したんだもん、破るわけにはいかないじゃない。
【甲斐】
本当は、ボクがやらなきゃいけないことだった…。
【麻耶】
いいのよ、甲斐…桜子は死んでいたの…だから、いいのよ。
桜子は、やっと安らかに眠ったわ。
最後の瞬間、以前の笑みを見せてくれたもの。
私が今作で唯一泣いたところです。
去年の仲良しグループだった主人公、優樹(という死んだ男子生徒がいるんです)、桜子、麻耶4人の友情EDと言っていいんですよね。
ルート攻略中には単なるおバカな元クラスメイトというイメージしかなかったのに、最後の最後でこんなにも、誰よりも格好よくなるのはズルい!
かつての友達と交わした約束を守り、小夜先輩への復讐を果たし、桜子を死によって解放し、その責を主人公の代わりに肩代わりまでしてくれて。
どうして彼女はこんなにも友達想いの優しくて強い子なんだろう。
「桜子は死んでいたの…だから、いいのよ」と言った時の表情を思い出すだけでもう涙が出る。
どうしてそんなに優しく、どうしてそんな、全てを諦めたように笑うの……。
主人公が最後、夜の住人の中に桜子と流奈の笑い声を聞くというラストも好きです。
シスターによって処刑されるとその魂は消滅するだけなんだから、彼女は上手く夜の世界に逃げおおせた訳なんですよね。
その暗闇の中でようやく彼女は桜子と、かつての友達と一緒に笑い合えているんだと思うと泣けて泣けて仕方ない。
桜子ルートの方では「最後の瞬間、以前の笑みを見せてくれたもの」という奇跡は起きていなかったので、余計に彼女の凄さが沁みる。
もう私は本当に、全てを殺して終わらせて、救ってくれる女の子が大好きです。
その他
主人公の男友達である雄二と充もなかなかにいいキャラクターでした。
初見時は「男性陣の顔色が土気色過ぎるけど大丈夫?」とか思っていたんですが、まめに主人公に声を掛けてくれる、頼れる男友達で良かったです。