少し前に書いた『THE MUSIC DAY』の感想で、DEEN FUJIOKAの『Apple』が格好良かった!という話をしたんですが、そこから徐々に彼自身がプロデュースしている映像を観るようになっていまして。
で、彼が企画・プロデュース・主演を務めた映画『Pure Japanese』も観たところ、個人的にすごく刺さったのでその感想。
内容としては「過去のトラウマを抱える男が、孤独な少女との出会いをきっかけに、狂気を暴走させていく姿を描いたバイオレンスアクション」とのことで。
まあ確かにそんな感じの話では、ある……のか?
最終的にディーンフジオカ演じる立石がばっさばっさヤクザを殺していく話なのは確かなんだけども。
ただ私が興奮したのは、とにもかくにもライティングの美しさ!
面の光と点の光、その配色センスがすごく好み!
映画というよりは舞台照明、舞台照明というよりはイラストレーションのような色使いが印象的でした。
特に感動したカットについて5つほど書いておきます。
まずは宴会場での演説シーン。
登壇者の後ろにある金屏風にだけ強く橙の光を当てることで、その反射をぼんぼりのように見立てさせるのが上手い。
頭上にある蛍光灯のうち、サイドのものだけ鮮やかに青いのも気に入ってます。
現実的に考えれば、単なる宴会場の一部だけ蛍光灯がああも水色な訳がないじゃないですか。
この非現実的なカラーリングがファンシーでかつ不気味。
こちらも同会場による主人公と老人との宴会シーン。
ビビッドピンクの使い方がまるでキャバレーのチープなイルミネーションさながらの蠱惑的な感じなんだけど、画面に映るのは全員老いた爺なものだからそのギャップがどことなくグロテスク。
右端からはほぼ闇みたいな光量の絞り方も、思い切りが感じられて気持ちいい。
こっちの場面では、夜でありながら緑のカラーリングが主体。
画面中央少し右に写ってる赤の点は信号機で、しかも本編では点滅してる。
緑の中で瞬く赤、という光の使い方は上手いな~と思ったし、アナウンサーの服の色が赤紫なのは、緑の補色が赤紫だから。
見れば見るほど画面全体のカラーセンスがデザイナー寄り、しかも基本に忠実なかなりの優等生だなと思います。
一緒に宴会していた老人の入院シーン。
まず、後ろの歩行手すりと手前の吹き抜け部分の柱が繋がっているレイアウトに、直線に対するこだわりを感じます。
光の当て方で言ったら、このカットに一番関心したかも。
左にブルー、右にオレンジの光源が使われ、主人公の体は寒色なのに、影は暖色になっている。
色違いの影と主人公が背中合わせになるよう、ライトの位置だって厳密に微調整されているはず。
右端に灯る火災報知器の赤はまさしく警報で、覚醒していく主人公の危険性を周囲に伝えている。
ライティングという訳ではないけど、物語の中盤、血塗れの女子高生とやくざの男が向き合うカットもお気に入りの一つ。
テーブルクロスの角と、セーラー服の肩。
机の方は四角く、肩の方は丸く血に濡れていて、この汚れ方もちゃんと両者を対比させているんだと思います。
雑然とした小物の配置センスもすごい!
配置者の美意識のもとにアイテムが選ばれ、細かく場所の指定がされているんだとすぐに分かる。
個人的な好みで言えば、1枚目と4枚目、故人と神に供える供花が派手にカラフルなのもどことなく昭和レトロで気に入っています。
あ〜、でも2枚目、主人公に荒らされた選挙事務所の見やすいメチャクチャさも好きだな。
雑然とダンボール箱や旗が転がっているだけなのに、空白とのバランスが良いのかすごく見やすい。
映画に関心を持つきっかけとなった新曲、『Apple』のパフォーマンスビデオについても少しだけ語っておこう。
このMVで一番ぐっとくるのが出だしのサビ、「今も 未来も 君の世界も」のとこ。
一面の赤の中に一瞬だけりんごの内側、果肉の黄色をフラッシュで入れてる。
その残像があるから、視聴者にはこの赤がりんごの皮だと伝わるんだよね。
ここでもやっぱり、面の光と点の光の使い方が絶妙に上手いなあと思います。