今更ながらに映画『THE FIRST SLAM DUNK』を観てきました。
いや~~~、全てが最高に格好良かった!
全てですよ、全て!
スラムダンク、別に原作読んだこともアニメ見たこともないし、主人公が桜木でライバルが流川、原作最後はどこかと戦って勝って終わったんだよね?みたいな前知識の無さで行ったんだけど、開始10秒からスタッフロールが終わるまでずっと泣き通し。
「誰だこいつ名前が分からん……」とおろおろしながらでも泣けるんだから、スラダン未履修の人も今すぐ行った方がいいです。
以下ネタバレ感想!
ネタバレ感想
とにかく言いたいのは音楽の良さ!
特にエンディング&挿入歌の10-FEET『第ゼロ感』の名曲っぷりがやばい。
遠い星の少年は その腕に約束の飾り
↑こんなん泣いてしまうんですが!!
「遠い星の少年は その腕に約束の飾り」ってフレーズを踏まえてキービジュアルの宮城を見返すと、ちゃんとその腕には兄の赤いリストバンドが巻いてあってだーだー涙が出る。
やっぱり私が冒頭から泣けたのって、宮城兄弟の1on1がすごく良かったからなんですよね。
男兄弟なりの可愛がり方というか、お兄ちゃんが弟を心の奥底から愛してるのが伝わってくるシーンで、弟にしてみれば彼を生きる模範にするには十分足る存在だったんだろうなと思うよ。
この「遠い星の少年」っていうは、劇中で宮城妹が長男の死を「遠い島で暮らしてるの」と言い表した通りに宮城兄のことであり、そして兄から見た宮城リョータの事でもある。
で、その2人の約束っていうのは、海釣りに向かう兄にリョータが叫んだ「1on1するって言ったじゃん!」なんだと思うとたまらない気持ちになる。
バスケで繋がってるんですよね……ううっ…。
霞んで消えた轍の先へ それが最後になる気がしたんだ
これも宮城兄弟のことじゃない?
沖縄から出てきて高校生になって、もう周囲は誰もリョータにバスケ上手な兄がいたことなんて知らない。
彼の弟と妹と、その母親しかもう捉えようとしない彼の痕跡。
その先へ行けるのは、湘北高校で背番号7番を背負って、山王戦のコートに立ったあの瞬間のリョータだけだよ。
兄が無邪気に語った「打倒!王者山王!」という夢を越えられる最初で最後の試合に勝てたことは、今後の彼の人生にとって、本当に、本当に大きな事だと思うので!
最後、元山王高校の沢北との再戦シーンは感慨深くて泣いちまったね。
手負の夢を紡ぎ直せば それが最後になる気がしたんだ
これはもう湘北&山王両チームメンバー全員のことじゃん!
山王側は沢北の神社エピしか入ってこなかったけど、それなりに各自エピソードはあるんでしょ?
湘北だってさ、メインに描かれた宮城兄弟程じゃないけど、ロン毛三井君とゴリにもそれぞれ傷ついた過去があるのは伝わってきた。
「手負の夢を紡ぎ直せば それが最後になる気がしたんだ」という言葉は、あのコートに立ったメンバー全員の決意の総称のようで泣いてしまう。
負けたままでは、傷を負わされたままでは、何一つ諦められないよねえ……。
まだ旅路の最中さ あの場所に加速する さらに
↑この映画そのもので泣く。
「あの場所」っていうのは、最後に宮城が立ったNBAのコートであり、「打倒!王者山王」と掲げた試合の終着点であり、流川と桜木が最後に走り込んだあのゴール下でもある。
自分が目指すと決めた一点、その一点のみを必死で追う男達の姿に胸が熱くなるよ。
映像について
この映画ってアニメで観るスポーツ観戦映画として、マジで黎明の大傑作だと思う。
だって2時間の間、ずっと1試合のバスケを描写し続けてるんだよ!?
普通のスポーツ映画だったら、日常シーン→試合→日常シーン→試合と場面転換が行われるのが当たり前であり(例えば部員集め→他校との練習試合で負ける→特訓→トーナメント戦とかね)試合の外の出来事まで含めての物語になるはずなんですよ。
でもこの映画はず~~~~~っと一つのコートで一つのボールを追いかけ続けて、そこにメンバーの回想が入る形になってる。
この構成が出来るスポーツアニメってマジで限られてると思うんだよね。
少なくとも原作なしのオリジナル作品では、ルール解説やメンバー紹介といったわずらわしい説明要素全カットなんて出来ないはず。
今作がそういう不要なものを全て削ぎ落とせたのは、完結した漫画を原作とした映像化作品だからであり、何より監督・脚本を原作漫画の作者:井上雄彦がやってるからでしょ?
そりゃ『SLAM DUNK』を最初から最後まで描き上げた張本人がやると言ったことはやるんだし、やらないと言ったことはやらないんだと思う。
あとね~~~CG+手書きによるキャラ表現とそこに合わさる音も良かった!
一番最初、ほんの一瞬だけはCGってぎこちなくない?って思ったんだけど、そこに合わさるボールのドリブル音が本物だから即気にならなくなった。
今作を傑作たらしめてる一つの要因は間違いなくこの「本物の音」にあって、ドリブルが床を揺らす音、パスが空を切る音、シュートがネットを揺らす音がリアルの試合会場そのものなんだよね。
いや、でもリアルの試合ではあんな風にめちゃくちゃいいタイミングでめちゃくちゃいい音楽がかかったりなんてしないので、今作は全てが意図的に作られた最高の映像作品です。
カメラワークだってそうだよ!
アニメだからこそ自由自在にゴール下をくぐらせたり、ダンク決める選手のド真ん前を抜いたり出来る。
ゴリ&丸ゴリのダンクシュート、めっちゃ迫力あって格好良かった!
上映時間は2時間なんだけど体感としてはあっという間で、その濃密さにも驚くものがありました。
残り20秒!ってタイマーが映った時に「えっ、もしかしてこの映画ってもう終盤!?」って我に返ったくらいだし、そこからはもう「勝つ!?勝つよね!?えっマジで分からなくなってきた、シュート!?シュート決めてくれ頼む!!」と祈る気持ちでいっぱい。
映画見てる時にあんなに自分の心音を意識したのって初めてだったし、それぐらい心の奥底から湘北のみんなに勝ってほしかったんです……。
いや、山王も山王でこすい真似をしてこない「最強」なので好感度はばか高いけども!
原作読んだら私は山王の方にハマる気がするんだよね。
最初から最後までちゃんと努力して真っ当に強い人間が私は好きなので。
現に試合終了後の沢北の涙には「そりゃやってらんないよな、あんな弱小のぽっと出の元不良共にこんな、こんなにもちゃんと負けて……」と隣で泣きたくなるものがありました。
これからより強くなっていくために必要な敗北だったと周りは言うけど、そんな事より今、さっき、あのメンバーで勝ちたかったに決まってるよね。
今作のストーリー構成+表現方法ってスポーツアニメ映画における一つの発明だし、今後これを模倣した作品も、これを越える作品もいつか出てくるとは思うんだけど、現時点での最高地点は間違いなく『THE FIRST SLUM DUNK』なので!
一人でも多くの人に劇場で観てもらいたいなと願うばかりです。