2023年9月にハマっていた7曲の感想文で、アーティストの五十音順にするとこんな感じ。
・uotak feat.初音ミク『音楽の幽霊』
・King Gnu『SPECIALZ』
・MY FIRST STORY『Listen』
・MY FIRST STORY『東京ミッドナイト』
・未来古代楽団 feat.安次嶺希和子『光あれ』
・Mili『Sleep Talk Metropolis』
・理芽『えろいむ』
とうとう9月最終日まで最高気温30℃超えで、ここまで暑さがだらだらと長引くとキレるというよりも悲しくなってきますね。
今曲はとにかく歌詞が素晴らしいので全文引用しておきます。
『音楽の幽霊』曲:uotak
死んだ音楽は 音楽の幽霊になって
昔歌ってくれた人のところへ行きます今生きている音楽も いつか幽霊になって
あの日自分のこと 口ずさんだ人の所へ行く
それしかもうできないから
死んだ人は 人の幽霊になって
頭を撫でてくれた人のところへ行きます今生きている人も いつか幽霊になって
あの日自分の手をつないでくれた人のところへ行く
それしかもうできないから
そのあとは そのあとは 新しい音楽に生まれ変わる新しくて 美しくて 懐かしい気がする音を鳴らす
聞く度に泣いてしまうよ……。
魂というものがこんなにもあたたかいことと、それをこんなにも忘れていた自分に呆然とします。
普段怪奇現象系のホラー猟奇話ばっか読んでるから、こういう絵本みたいに優しい幽霊像もあるってことを忘れてしまうんですね。
特にラスサビ「新しくて 美しくて 懐かしい気がする音を鳴らす」が何回聞いてもやばい。
新しくて美しくて懐かしい気がする音って確かにあるじゃないですか。
そういうのももしかしたら全部、音楽の幽霊の生まれ変わりなのかも。
「死んだ人は 人の幽霊になって 頭を撫でてくれた人のところへ行きます」も、こんなの問答無用で泣けるに決まってるじゃん。
編曲も「人生」という感じですごくいい。
まずは片手で弾けるような簡単なピアノから始まり、次第にそれが流暢な両手になって、他楽器のドラムやエレキが入って華やかになっていく。
幼少期から青年期で獲得していく他者との色の重なり、そしてまた一人の歌声に戻っていく晩年。
3分24秒の音の中で人の一生の流れが確かに描かれていて、そこにもまたぐっとくる。
冷静にはならないで
あなたはそのままで
どこまでも特別よ
アニメ『呪術廻戦 渋谷事変』OP。
超格好いい~~~~!!!
前期『懐玉・玉折』編OPとは対象的に画面を赤と黒の2色に絞り切っており、その思い切りの良さに痺れました。
ここまでダーク方面一本に振り切れたのも『懐玉・玉折』編があったからだろうし、もっと言えば売上が確約された2期だったから。
手印だけでキャラを連想させるカットを1期のOP1でやるのは難しいはずだけど、でも今、ここでなら出来る。
金と愛の詰まった映像で好きなようにぶん殴られるの、ファンだったらたまらないよな。
曲もまた映像を引き立てつつ、また映像に引き立てられた熱がとぐろ巻いているようですごいです。
サビ「無茶苦茶にしてくれないかい?未来を存分に喰らい尽くして」は渋谷事変の狂乱を端的に言い表したフレーズだし、2番Aメロ「東京沿線大荒れ模様」は天気予報のように各戦闘シーンを流している。
OP映像でもラスト付近で実際の東京の航空写真が写るけど、そこの人口密度を光らせるだけで熱い気持ちにさせてくるのはもうずるじゃないか!?
I am not perfect, I'm perfectly imperfect
Apple Musicのレコメンドでたまたま流れてきた曲で、一瞬で気に入ってプレイリストに入れたんだけどアーティスト名自体は初耳。
ただその後にヒットチャートのトップ100:日本を見たら『I'm a mess』という曲でトップ8にいてびっくりしました。
調べてみたらアニソンも数曲手掛けているみたいで、結構知名度のあるバンドなのかな?
『I'm a mess』はTikTok流し見していた時にも流れてきたし。
それはともかく今曲の前半の木琴と&ストリングスの編曲がめちゃくちゃ好きです。
切れ味が鋭くて不穏な弦の音に木琴の角の無い丸い音。
その2つで支えられたパートは丁寧で上質な響きしており、また前半がそうだからこそ、サビで一気にロックバンドの音がなだれ込んできた時に目が覚めるような鮮烈をそこに見る。
間奏の「You gotta be more You gotta be gold Be gold be gold」でボルテージを上げていくところも王道で超格好いい!
またボーカルの声質がすごくいいのも人気の理由だと思う。
芯を持ちつつもその輪郭はかすれているような、男っぽくて特徴的な声だよね。
逆に『東京ミッドナイト』の方はメロディーの方がめちゃくちゃ好み。
この涙は飾りじゃなく 真実を隠しているだけ
こういう王道で踊るように疾走感のあるメロディーって、いつ何時でもするすると聞けて良き。
彷徨い迷い 戸惑い惑い僕らは歩こう
暗闇の路地を 祝福も知らずに
スクウェア・エニックスが展開している「Project_Grimms」というソシャゲのタイアップ曲。
『忘れじの言の葉』『はじまりのまえ、おしまいのあと』『英雄の詩篇』同様、未来古代楽団がグリムシリーズに提供する曲はやっぱりハズレが無い。
こういう造語コーラス+ストリングス曲が私はずっと好きだし、これからもずっと好きでいるんだと確信させてくれる曲ばかりなんだよね。
特に好きなのはラスト「祝福知らぬものよ 正しさ持たぬものよ なお行く愚かものよ」のコーラス部分。
Cメロコーラスが嫌いなオタクなんていないよなぁ!?
2番サビ「壊れた割れた 古びたルビー 瞼に翳せば 作られた景色 真実の色となる」もたまらなく良い。
ルビーを通して見た世界は血に染まったように赤いはずで、それを「真実の色」と言えてしまうのが。
I’m living a distant dream
I’m living for this dream(私は遠い夢の中で生きている
この夢物語のために生きている)
スマートフォンのプリインストール楽曲らしいんだけど、買ったスマホにこんな、現代社会への解像度が高すぎるゆえにやるせなくさせるような曲が入ってるの、傷つきませんか!?
少なくとも私は今曲を初めて聞いた時、明確に「傷つけられた」って感じたんだよね。
今の若者にとっては現実をそのまま歌うことすら一種の攻撃ですよ。
英文まで載せると長くなるから日本語訳だけ載せるけど、今曲の歌詞を読んでるだけで泣きそうになる。
本当はマイホームが欲しかった
新しいスマホだって必要だった
旅行だって行きたかったもう貴方の頃とは違うの 気づきました?
本当はデートに行く時間が欲しかった
子供だっていつかは欲しいと思ってた
まだ遅くないなんて言ってみなさいよ最善を尽くしてるの 私が生まれたこの時代で
特に「最善を尽くしてるの 私が生まれたこの時代で」が一番苦しい。
1番Aメロ「筋トレしてるよ 弁当だって作ってるよ 無駄のない丁寧な暮らし」にある通り、肥大化した理想を自分の生活に合う形で落とし込む術を私達は知っていて、同時にずっと「削られている」という感覚を持っている。
時間を、命を、豊かさを、音もないまま。
普通に生きていることを幸せだと思えない、思えないんですよ、どうしても。
「夢に見た日当たりの良いバルコニー 一杯のコーヒー 一枚のバタートースト」を一日だけ再現するのは簡単だけど、週7日維持する贅沢な暮らしなんて到底無理。
だからずっと夢を見る。夢の中で生きている。
サビの終わりで言う「ペースを落とすタイミングだね 私が走るレースに 参加者はたった一人」だって、正直3日も持たない綺麗事。
「SNSを見ない!他人と自分を比較しない!」って言ってる人達がそれをネットに書き込む病的さを、冷笑する私達もまたこのグラウンドにいる。
現代社会で生きることへの体感を音楽の形に形成出来る才能がMiliにはあって、その正確さにいつも驚かされてます。
私にとってMiliはどこまでも特別で稀有なアーティストだよ。
きみはずっと朝が怖いままの
わたしだけのかみさま
ジャニーズWESTの重岡大毅と橋本環奈が主演するJホラー映画『禁じられた遊び』主題歌。
タイトルや歌詞中に出てくる「エロイムエッサイム」はその映画内で出てくる呪文の言葉。
専門学校HALのCMの時もそうだったけど、理芽の曲は普通にテレビ観てる時に流れてくるからびっくりするね。
一発で彼女だと分かる声をしてるのもすごい。
地の底から響いてくるような低音EDMに、理芽の甘いような、デジタルちっくのような声が絡むとこが病みつき。
一番強いのはやっぱり「口づけして きみが天使なら 夜があいつに喰われちゃう前に」「約束して きみも天使なら 何も嘘じゃないように」というサビじゃない?
イマドキというか、令和時代にすがり祈る「きみ」という偶像の光が、音だけが響く空間の中に差している。
サビ後半「いつかそっと夏が死んでいきます」というフレーズも好きだな。
KAMITSUBAKI STUDIOに所属するアーティストは皆、夏が死んだり殺されたりするのが好きなイメージがあるんだよね。
個人的にはこんな人を殺せるほど暑い夏なんて本当に死んでほしいところなんだけど、音楽の中に生きる夏はまだあんなにも眩しくて涼やかな理想郷。