復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

25歳研究員×13歳少女のヤンデレ短編フリーゲーム『少女の瞑目、男の謀略』感想

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ミギキマさん&きるえさん共同制作のヤンデレ乙女ゲーム四塞の恋事』収録『少女の瞑目、男の謀略』というゲームが好きです。
最初にプレイしたのは数年前になるんですが、最近再プレイしたところ、やっぱりこのゲームが大好きだなと改めて思ったので、その感想。

四塞の恋事』はいわゆるオムニバスで、30分~1時間程度のヤンデレ系短編が4本収録されています。
少女の瞑目、男の謀略』はその中の一編で、プレイ時間は約20分程。

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元々ヤンデレ系男が好きなので、収録されている短編はどれも好きなんですが、特に今作はクリティカルヒット

あらすじは以下、公式サイトより。

三年前、父と二人きりだった家に新しい住人が増えた。
彼は父と違って、いつも家に居てくれた。

誰かが家に居てくれるだけで、とても嬉しかった。
一人じゃないだけで、とても嬉しかった。
わたしは、彼が大好きだった。
そばに居てくれる彼が、大好きだった。

半年前、父が家を出て行った。

――――後のことは、全て彼に任せる。

そんな書き置きを残して、父は居なくなった。
幼い頃、母も同じように居なくなった。そのときには、父が居た。
そして今、父が居なくなり、隣には“彼”が居る。

引用:http://sunset77light.rdy.jp/sisai/index.html

大まかなストーリーとしては、両親がいなくなった少女を同居人の男が面倒を見る話でいい……んですか……?
確かにそういう話なんだけど、そう言ってしまうとどこか語弊があるような。

注意書きに『口の悪い男×甘えたな少女』とある通り、この同居人の男ことヨルム(25歳)めちゃめちゃに口が悪いです。
無邪気に会話しようとする13歳の主人公に対し「忘れたのかよ、鳥頭」「頭悪過ぎて、引く」「アンタはいつだって変わらずバカなんだから」ぐらいの暴言は普通に言います。

なので、プレイ開始直後から終盤ラスト1分まで、プレイ時間の9割は「この男、13歳の女の子によくここまで酷い事言えるな……」と若干引きながらプレイしていました。
でも、ラスト1分からの巻き返しが本当にやばい!
彼のことを急に好きになるんですよ、マジで急に!

地を這うレベルだった好感度が、ケタ違いに跳ね上がるあの興奮はたまらないものがあります。
この落差こそ、私がヤンデレものを好きでいる理由だと言い切っていいぐらいに。
直前まで「やってること、もはや虐待だろ」とか思っていたキャラに対しての印象がガラッと変わる。
暴力的にすら感じるくらい、たった一瞬で、強く、自分の感情が「好き」で上書きされていく感覚が好きです。
「好き」という感情の圧倒的なまでの強さと、そんな風に一瞬で全てを変えてしまえる恐ろしさの両方を感じるからです。

そもそもヨルムの顔がめちゃくちゃ良いんですね。

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黒髪白衣タートルネック眼鏡に隈まであるというビジュアルも超私好みなんだけど、やっぱり表情がいいです。

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目を逸らしながら物を言う目元の不健全さとか、呆れながら嘲ってくる口元の酷薄さとか。
ヨルムの顔の良さを、私は奇跡的だと思えるぐらいに好きなんだけど、この良さは何だろうな、どこから来てるんだろう。

ヨルムだけでなく、主人公の表情もすごく好きです。

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眉を下げて、目を伏せて、それでも笑みを浮かべる少女の中にあるのは、彼への愛しさと、自分に対する諦めで。
少女と呼ぶには似つかわしくない憂いの中に、私は彼女なりの知性を見ます。
散々「赤ん坊みてぇな脳みそ」だとか「マジでお花畑だな」だとかヨルムには罵られているし、ゲーム内での扱いもそんな感じだけど、でもこんな表情をする子に対して、私は馬鹿だなんて到底言えないよ。

作者であるミギキマさんを知ったのは、また別の作品からなんですが(『盲目偏愛キャラメリゼ』というフリゲ)初めてプレイしたきっかけも、サムネイルの男性絵に惹かれたからでした。
私は、
この人の描くキャラクター絵が本当に好きです。
言葉じゃ何一つ説明できないまま、ただとにかく心が好きだと思う。

以下、追記からはラスト1分のネタバレ感想
ネタバレ無しでプレイした時にこそ、あのボルテージの上がり様は最大限になると思うので、少しでも興味のある方は、ぜひぜひ今からプレイを!
 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ああ、可愛いな……お嬢は……
いつも可愛いけど、今日はまた……

…………はは、ほんと可愛い。可愛すぎ

あなたが居ないと、何も出来ないくらい大好きです

俺だけは、アンタを見捨てない。
 この世で唯一俺だけが、あなたのことを……

わかりますよね?
わかってますよね……?
……わかって、くれますよね?

初プレイ時、「ひ、ひぇ~~~~~!!こんな、こんな急に好感度が跳ね上がることある!??」とマジで大声で叫びました。

びっくりしました、本ッッッ当にびっくりした。
こんなにも急な角度で、一人のキャラクターに対する好感度が上がった事なんてなかったから。
私の場合、大体登場シーンで好きになれるキャラはずっと好きだし、ピンとこないキャラはずっとピンとこないままなのに。
自分の掌の返しっぷりに引くぐらい、私は彼の事が大好きになりました。

あんなに「お嬢は、一人じゃ何も出来ない。俺が居なきゃ、何も出来ない。そう、俺が居ないと何も出来ない。俺が居ないと、お嬢は生きていけない」「お嬢が理解すればいいのは、俺が居なきゃ何も出来ないってことだけ」とか言ってきたのに、最後の最後で「あなたが居ないと、何も出来ないぐらい大好きです」になるのがずる過ぎる。

立場はヨルムの方が上かもしれないけど、本当は全然、彼の方が心理的に、年端もいかない少女に隷属している。
しかも、それをちゃんと自覚しながら、主人公を支配下に置いているところが、彼の愚かで可愛いところじゃないですか?
見捨てられるのを恐れているのは、ずっとずっと彼の方なんですよね

だから「わかりますよね?わかってますよね……?……わかって、くれますよね?」に繋がるんだと思うと、もう泣きそうになる。
強要、確認、嘆願の順なのが、彼の執着の仕方で、彼の弱さでもあるような気がします。

もしかしたら彼は、割と真っ当に近い感性をしているのかもしれません。
もちろん、日常的に主人公を抑圧したり、主人公の父親を殺したりとろくなことはしていないんですが。
でも、主人公にいつか見捨てられるかもしれないという恐れを自覚して、主人公に無力感を植え付けるという対策を立て、それを暴言として実行することで、主人公の自立を阻むという目的の結果を得ている。
そういうプランの立て方に常識を感じるし、彼の地頭の良さが出ているような気がします。

あと、主人公が起きている時は、ずっと「お嬢」「アンタ」呼ばわりしてきたのに、ここで「あなた」と丁寧語になるのが、本当にたまらなく好きです。
主人公視点では100%棘しかない言動をしていたのに、この独白シーンでは全てが甘い。
…………はは、ほんと可愛い。可愛すぎ」の呟きには、砂糖を煮詰めて煮詰めて煮詰めまくっても、まだ足りない甘さがある。
絶対に無いと分かっているんだけど、この部分だけボイスドラマ化しないかな、と思ったり。
そう無茶な願いをしたいくらい、この場面のヨルムの声は蕩けているだろうし、私はそんな彼の声が聴きたいと思うよ。


何度も繰り返すけど、やっぱり私はヨルムの弱味が好きです。
これから彼と主人公はずっと2人だけの世界で、互いが互いを必要とし続けるんだろうけど、でもそうしなければならない必要性は、彼の方が、主人公より遥かに高くて。

改めて『少女の瞑目、男の謀略』というタイトルの素晴らしさを想います。

瞑目:目を閉じること。特に、安らかに死ぬこと。
謀略:相手を自分の望んでいる方向にもっていったり、事をうまく成し遂げたりするために弄する策。

これまでの物語の全てがこのタイトルに集約されている、とプレイし終わった瞬間に気付いた時の気持ちよさったらなかったです。

数年前の自分に対して、このゲームをDLして、このゲームを好きでいてくれて良かったと感謝するぐらい、今の私もこのゲームの事が好きだし、きっと何年経っても未来の私は、ヨルムと主人公、この2人のことを好きでいるのだと思います。