復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

アリプロのOPも最高!steam版『誰ソ彼ホテル Re:newal』感想

steam版『誰ソ彼ホテル Re:newal』をプレイしました。

プレイ時間は8時間半でバッドエンドを除いたED数は2。


元々は2017年にスマホアプリとして出ていた『誰ソ彼ホテル』を2022年にリメイクしたのが今作『誰ソ彼ホテル Re:newal』で、課金要素を排除してsteamにきたのが2024年。

私は無印版をアプリで触ったことがあったんですが、毎日こまめにチケットをもらってストーリーを進めるのが性に合わず1章の途中でやめちゃったんだよね。

だから今回、課金要素無しのリメイク版がsteamに来てくれて嬉しかったです。

 

一昨年にリメイクされたのも知っててずっと興味があったので尚更。

誰ソ彼パピヨン回廊

誰ソ彼パピヨン回廊

  • ALI PROJECT
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

なぜならOPがアリプロだから……!

出だしのクラリネットとピアノ、生オーケストラっぽい豪華な音からしてすごくアリプロ、もとい片倉三起也編曲という感じがする。

これフルもショート版もイントロとアウトロのメロディーが全く一緒なんですよ。

その始まりと終わりが繋がっている感が『誰ソ彼パピヨン回廊』の回廊部分を指しているようで面白いな。


宝野アリカの作詞ももちろん良い!

お急ぎにならず考えあそばし」は、あの世とこの世の間に建つこの黄昏ホテルに滞在し、自分が生きているのか死んでいるのか、無くした記憶を取り戻すために考えるっていうゲームのストーリーそのもの。


幻と現の間 開く扉の鍵 もうとっくにお持ちね」はリメイク版だからこそグッとくるフレーズじゃない?

無印版をプレイしたプレイヤーなら物語の全てはもう分かってるはず。

閉じた扉の鍵は既にこの手にあって、それでももう一度その扉を開く。

新しくなったホテルの、新しくなった皆に出会うために。

プレイヤーのその行為を「開く扉の鍵 もうとっくにお持ちね」というフレーズで言い表せるところに彼女の才能をありありと感じます。

 

映像もセンス合って好きだな~。

これを手掛けた映像制作会社も知りたかったんだけど、ゲーム本編のスタッフクレジット見てもYouTubeの概要欄見ても載ってなかったので永遠に分からずじまいっぽい。

サビで主人公の音子ちゃんの眼差しが蝶を追い、駆けるシーンが特にいいんですよね。

パピヨンはフランス語で蝶、蝶といえば人の魂。

それを考えれば、黄昏ホテルの廊下にいる蝶を音子が追いかけないわけがないよね。

その後の「傷ついて」でパチンコ玉男とキョーコ&トオル、「傷つけて」で大外と切子、「零してきた涙の」でカネコノと寿寧ちゃんが映る人選もバッチリ!

 

 

ゲームシステムについて

今作のゲームシステムは脱出ゲーム×ADV。

黄昏ホテルに訪れた客の部屋はその客の記憶によって変化するので、その内部を探索し

仕掛けられたパズルを解いて重要なアイテムを発見していくという流れ。

謎解きはゲーム内ヒントで答えまで見ることが出来るので、全く詰まることなくスムーズに進められて良かったな。

難易度も程よく優しく、程よく難しくというレベル。

 

ホテル内の背景も重厚感あるアンティーク調にまとめられていて素敵。

それとは対象的に、客室内には拷問部屋や家庭環境が複雑かついじめられてきたことを示唆する部屋もあって、そのギャップがまた心をどんよりさせる。


そう、このゲームってお洒落で浪漫あるビジュアルとは裏腹にかなり暴力的な犯罪描写が多くてR-15くらいはかけた方がいい印象。

ヤクザに生き埋めにされてる密漁者、過食嘔吐と睡眠薬過剰摂取して死んだアイドル、女子中学生の足の間にナイフを差し入れて割礼どうのこうのの話をしてくる連続殺人鬼。

私ですらぎょっとする言葉を平気で投げかけてくるキャラもいるし、これを小~中学生が一番触れやすいスマホアプリで展開するのはどうなんだろう。

でもこういう過激な描写を一番喜ぶのは小中学生世代なのも分かるんだけどね……。

 

 

ストーリーについて

ストーリーは全8章と章仕立てになっていて分かりやすかったです。

物語が進むごとにタイトル画面の背景が華やかになっていくのもサービス精神豊富。



キョーコ&トオルの額縁がハートかつ片方は地面に落ちてるの、4章が終わった後に見ると納得がいきますね。

 

あとステージセレクトが最初からフローチャート方式になってるの、個人的には快適で大好きだけど同時に「スマホ版をベタ移植しただけだな……」という印象も持つ。

選択肢がない場面でもこまめにシーンが分けられていて、「スマホ版ではここでチケット要求してたんだろうな~」というのがありありと分かるというか。

タイトル画面の「TAP TO START」も、steam版なんだからせめて「CLICK TO START」とかにした方が良かったんじゃない?

細かいことだけど、でも私は5,800円出して買ったゲームのタイトル画面がスマホ版と同じ”TAP”を使ってきた時、結構不安だったよ!

 

でもストーリー自体については大満足です。

今作のシナリオは最終章でまくってくるタイプの面白さで、それがそのままプレイ後の満足感に繋がってる。

という訳で以下、最終章以降のネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

最終章、何が楽しかったかといったら大外の末路をプレイヤーが決められることですよ。

地獄に落とすと決めた男を地獄に突き落とせるの、こんなに清々しいことだったんですね……。

このシーン、すごく爽やかで満ち足りた達成感があり「ざまぁ」という嘲笑とはまた違う感じがあって驚きました。

7章まで根底にこびりついていた彼への嫌悪感が、8章ラストで大幅にカットされる感覚というか。

私は今でも大外のことは大嫌いなんだけど(どこが嫌か説明するのも嫌)、彼のこの先の地獄を思うとOPの一番良いところで微笑むのぐらいは許容できる。

8章ラストまではOPを見返す度に本気で腹を立てていましたからね。


トゥルーエンドを迎えた後のこの「許し」の感覚は一体何なんだろう、と自分でもかなり不思議です。

今はかなりあっさりとした感情で彼の姿を見ることが出来る。

彼という脅威がもう自分とは遠く離れた場所にあること、その安心は軽蔑も見下しも含まずに、ただあたたかいものなのだなという新発見がありました。

 

……まあこれは姿に関することだけであって、再度何か新しいセリフをしゃべれば癇に障りまくることは目に見えているんですけど。

でも主人公が

自分の運命を左右する相手こそが、運命の相手だ。

だとすれば私にとっての運命の相手は……

「大外聖生」

彼こそが、私にとっての運命の男なのだろう。

と言ったように、主人公の運命の相手は大外だもんね。

OPで見つめ合って微笑むぐらいは全然OKだよ。


というか、大外にとっても運命の相手は音子ちゃんであって欲しいです。

彼が阿鳥先輩を自分の運命の人扱いするの、本当の本当に気色悪かったので……。

 

 

ビジュアルについて

キャラビジュアルについては立ち絵も綺麗だし一枚絵も美しいだしで文句のつけようがありません。

その中でも特に阿鳥先輩への恩恵がすごい!

絶対に阿鳥先輩の顔は格好良く書くぞ!という気合が伝わってくるね。


 

 

ただキャラとして一番好きなのはやっぱりルリちゃんかなあ。

彼女が最終章で自分の給与、もとい過去に遡れる時間を主人公に譲ってくれた時、主要キャラ達がホテルの従業員である理由がはっきりと分かったから。

ホテルで働いた時間の分だけ、自分が死ぬ前の時間に遡れる。

主人公一人でも阿鳥先輩の分だけでも足りなかった到達地点に、ルリちゃんの時間があれば届く。

ホテル内で一番幼くてもしっかり働いてきた彼女の、彼女なりの最大限の応援に胸が熱くなりました。

3人が同僚として、仲良く楽しく仕事してきた意味がここにあるよね。

 

そうして戻ってきた運命の分岐点に、カネコノとゆりやんの駅員ポスターが貼ってあったところも嬉しかったな。

今、ここで変わる主人公の運命を見守ってくれているような気がして。

 

 

物語の結末を迎えた後、タイトル画面の椅子に座るのは誰もいない。

これもまた主題歌フルのラスサビ「幻と現の狭間 閉じた扉の鍵は もうわたしへお返し」にかかっているようでグッときます。

 

ただエンドロール後に挟まれた新キャラと増築された黄昏ホテルのシーンを見るに、続編が制作決定されているらしく。


プラットフォームはiOS/Androidとのことだけど、待ってればsteam版かswitch版が出るのかな?

私は………うーん、大外の出番なしが確定したらやりたいです。

彼の新規セリフに耐えるのはさすがにもう無理なので。(そんなに?)