steamにて『Recolit』というドット絵探索ゲームをやりました。
プレイ時間は1時間半でED数は2。
宇宙服を着た男の子が夜の町を行ったりきたりするADVで、こういうホラー要素のないドット絵探索ゲームって好きなんですよね。
舞台は見慣れた現代日本なんだけど、特筆すべきはドット絵科学館のリアリティ!
例えばこういう恐竜化石は他のドット絵ゲームでも見かけたりするんだけど
ハンドルをぐるぐる回して電力供給を学ぶのはなかなかないでしょ!
他にもホイールの中で走って発電したり
風で浮くボールの近くでスタンプラリーのスタンプ押したり
延々と続くボールコースターを眺めたり。
この科学館ステージが本当にめちゃくちゃ楽しかったです。
小学生の時に行った社会科見学の興奮を大人になった今から再体験してるかのようで、たまらない気持ちになる。
子供ってこういう触れる展示物が大好きだし、その名残が今の私の中にもある。
ハンドルを回すだけのことがあんなにも楽しかった幼少期の輝きにやられてしまうよ。
科学館ステージの最後では自分が着ているのと同じ、でも大きさが全く違う宇宙服に出会うって終わるのも微かな恐怖があってよかった。
やっぱり宇宙服ってちょっと怖いよね。
人間が着る衣服の中で最も露骨に、布一枚隔てた隣りにある死を感じさせるものだし。
アイテムの説明文も良き
今作は収集要素としてステージにあるアイテム説明に触れるというのがあるんだけど、その時の説明文もひんやりとした夜の雰囲気があって好き。
例えば誰も出てこないマンションのインターホンを延々とピンポンしていく時。
まんなかに「welcome」とかかれている。
この言葉は、たぶんぼくに向けられたものじゃないんだろうと、頭のかたすみで思った。
その一方で小学生男児らしい説明文も出てきたり。
ヘンなかたちの石像。
駅での待ちあわせに使われていたりする。
「未来にはばたく」って書いてあるけど、みんな「ばんざいバード」って呼んでた。
分かるよ、高校生世代の子くらいまでは全員ばんざいバード呼びしてそう。
あと世界に光を灯せる特別なアイテムでは説明文が文字化けしてるんだよね。
この世界そのものへの違和感や、超越した存在をすっと差し込んでくるスマートさが上手。
以下、ストーリーのED感想なのでネタバレ注意。
ネタバレ感想
2つあるEDのうち、個人的にはノーマルというかバッドというか「すいみんした」EDのほうが好きです。
ここには何もない
いまはそれが、いちばん心地いい
もう一つの「よふかしした」EDで探索できる家ステージの出来はすごくいいので、そっちをやった方がいいのは当たり前なんだけどね。
リビングのインテリアは生活感あって親近感湧くし
お風呂場では湯気エフェクトで浴室が曇ってる描写までしてあるのが細かい。
もちろんそこからの主人公の誕生日パーティーの寸劇だって微笑ましいと思ってる。
だけど正直「今、何を見せられてる時間?」って戸惑ったのも事実だから!
こういう風に自分の誕生日を祝ってくれる友達が今はもういないこと、その寂しさが堪えるのはこっちの「よふかしした」EDの方だと思うんだよ。
この思い出を思い出さずに即寝るEDの方で、主人公は「ここには何もない。いまはそれが、いちばん心地いい」といって安らぎを得ている。
私はその安堵を肯定してあげたい。
何かを得ようと動く必要もなく、何から逃げ出すこともなく、ただ自分の手の中には何もないことを確認して眠りに落ちる。
そこに寂しさも辛さもなくて、ただ穏やかさがあるだけなら、孤独な大人にとってそれは本当に、本当に幸福なことだって私は思うんです。
タイトルについて、開発者コメントによると
『Recolit』というタイトルは「再び」を意味する「Re」、「"Co"llect」、lightの過去系である「lit」を組み合わせた造語です。
引用:https://www.gamespark.jp/article/2023/05/03/129592_2.html
とのことで。
直訳するなら「もう一度集める過去の光」って感じかな?
でも、輝かしい友情の思い出なんてなくても生きていけるよ。
彼がベッドに入る直前、窓から見上げた月の光を想います。
言葉も熱も持たないゆえに誰も傷つけず、自分が生まれる前から死んだ後もそこにあり続ける悠久の光。
誕生日ケーキの上に立つロウソクのように強く眩くとはなくとも、風に揺らがず消えないその光が、彼の寝顔を照らすものであってほしいです。