復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

ドット絵美少女銃兵達による100日間の祖国防衛戦を描く『溶鉄のマルフーシャ』感想

ディストピアを舞台に少女達が銃器で戦う『溶鉄のマルフーシャ』というゲームをプレイしました。

ストーリーモードでのプレイ時間は10時間でED数は10。

 

隣り合う国全てと戦争をしている自国を守るため、襲い来る敵国の機械兵を100日間ばんばん撃ち落としていくドット絵バトルゲームなんですけど、めちゃくちゃ楽しかったです!


雑魚相手にサブマシンガンで無双するのが気持ち良すぎる。

爆発音や銃撃の音もリアルで、ガン・シューティングならではの昂揚感を煽ってきて超快感。


ただ私が一番驚いたのはゲーム開始直後に流れるアニメOPの主題歌アーティストだったり。

KOKIA×美少女銃撃バトルはそりゃ正解でしょ!!

私の中でKOKIA×美少女銃撃バトルものといえば、2008年に放映されたアニメ『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』OP『たった1つの想い』という曲なんだけど、この『I'll be there』もそれに負けず劣らずの名曲だと思います。


Aメロから漂っている不穏さがサビで急激に現実になる感じが、まさに戦争というものの非情さを体現しているよう。

一番最初の銃声が鳴るまではどれだけ不穏でも静かだった日常が、轟音と共に全て雪崩落ちていく。

 「戦争はいつだって老人が始め、若者が犠牲になる」という言葉があるけれど、今作の戦争もまさにそれだよね。


ただそれをやるせないで諦められる程、少女達の指先は凍っていない訳で。

自身の血肉を鼓舞するために必要な熱と音があの何百何千も響き続ける銃声なのだと思うと昂揚するし痛々しいし、すごく痺れる。


この曲のフル版もしくはゲーム版サイズの配信が待ち遠しいんだけど、発売から1年経ってもそんな動きは無さそうだし難しいのかなあ。

せめてOPに使われている部分の歌詞だけでも公開して欲しいところです。

 

 

慢性的な金欠感がきつい

今作では1日防衛するごとにやけにリアリティのある給与支払明細書がもらえるんだけど、序盤から終盤まで支払いは常に5円(通貨の単位が不明なため一応円呼び)程度。

画像

基本給60円のうち、介護保険料で10円引かれてるのがマジで腹立つ。

この状況で国からの介護サービスなんて絶対機能してないだろ!

住民税に加え、しれっと「低級国民税」なるものも課されてて泣きそう。

貧しい者をさらに貧しくしていくスタイル、さすがディストピアとしか言い様がない。


あと上級民と低級民で明確に待遇が別れているのもきついところがあります。

画像

【装備解禁通知】

本日より門の防衛に地雷を許可します。

敵国からの猛攻により上級民より不安と騒音の苦情が出ております。

新たな装備を使い速やかに迎撃を行ってください。

地雷により低級民に被害が出た場合、報告は不要です。

低級民に被害が出た場合、報告は不要、ねえ……。

というか上級民も今さら騒音の苦情なんて出している場合なんですか?



アートブックの絵が美麗

switch版だとアートブックも一緒に収録されてるんだけど、各キャラの個別イラストがめちゃくちゃ良い!

画像

画像

画像

"良"すぎるでしょ……。

OPや本編のドット絵状態でも皆の可愛さは折り紙付きだったけど、リアル等身になると本当に皆綺麗で美人。

それに加え風景との調和も素晴らしいんだよね。

戦争状態のディストピア国家の中で、それでもここにいて、ここで生きて暮らしている少女達の日常が冷静に描き出されていて感動します。

全部PCの壁紙にしたいくらい一枚絵として完成されていて、惚れ惚れとするばかり。


以下、キャラと各EDネタバレ感想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェリセットED

今作の中で私が一番好きなのは、何だかんだでフェリセットちゃんです。

いや、だって一枚絵見てくださいよ!

超格好良くて超美しい!!

上級民の住居であろう富裕層ビルをバックに、一人低級層家屋の上に立ち、影の中からこちらを見つめる少女。

その静謐な佇まいは強者のそれなんですよ。

上級狙撃兵としての性能もトップクラスに高いし、もうメロメロとしか言いようがないです。


それにプロフィールで見れる経歴もグッとくるものが多いんですよね。

画像

良家の末娘として大切に育てられてきた。
天才的な射撃の腕を買われ軍にスカウトされた元エリート狙撃兵。

穏やかな性格と確かな実力で部隊内で評判も高かったが、狙撃のミスで仲間を射殺してしまった経験があり、それ以来すべてに堕落的な性格に変わってしまっている。

今では邪魔ものとしていろいろな部隊をたらい回しにされている。

2等級国民ってこの国の中じゃ相当の富裕層だし、何なら登場人物の中でも彼女の等級が一番高い。

でも今は落ちぶれていて、しかもその原因は自分のミスによる仲間の射殺だから自分を責め続ける事しか出来なくて。

あの一枚絵にある貧富の差、哀しみを帯びた影はそういうことだったのかと合点が行きました。


ただED7での会話だと彼女の本来の優しさが強く強く出ていて泣いちゃったよ。

画像

【フェリセット】

おはようございますお姉さん。
とてもとても喉が渇きました。今日は籠城何日目でしょうか。

 【マルフーシャ】

もう覚えていない…。
ごめん水は昨日あげたのが最後だったんだ。

【フェリセット】

そんな…お水、最後だと知っていれば二人で分けて飲みましたのに。
お姉さんは優しいですね。
私のことを邪魔者とせず、ここまでしてくれたのはお姉さんだけです。

このままお姉さんを死なせるわけにはいきません。

私が窓から指揮をしている人間を狙撃します。
混乱が起きている間に逃げてください。

【マルフーシャ】

わかった、でもフェリセットはどうする。

【フェリセット】

私もすぐにお姉さんを追いかけますよ。

さあ!走って!


【マルフーシャ】

敵が…!あと少しなのに…!

(銃声)

援護射撃?!逃げてるはずじゃ!

【フェリセット】

今度は私がお姉さんをお世話する番です。

この後、現場に残ったフェリセットは敵に見つかって銃殺されるし、逃げたマルフーシャも捕まるという絶望エンドなんだけど(そしてそれが延々と続く)彼女が最後にくれた優しさと、見せた高潔さが忘れられません。

 

 

ベルカED

元看護師、現衛生兵のベルカちゃんを仲間にするとお部屋でずっと洗濯物を畳んでくれてるの、すごい可愛くないですか?

ツンツン口調でキレながらでも、医療従事者らしい振る舞いを忘れないギャップが好きです。

ED2では主人公が衰弱死して敵に反抗したベルカちゃんも殺されるという悲惨な展開なんだけど、そこでも最後の食料を主人公に譲ってくれるんですよね。

【ベルカ】

マルフーシャ、これが最後の食料よ。
無理にでも食べなさい。

【マルフーシャ】

ありがとう…。傷が痛むけど、まだやれる…。

【ベルカ】

目の前で死なれたら気分が悪いわ、死ぬんじゃないわよ!

さすがプロフィールで「トゲトゲ世話焼き衛生兵」とか「好きなこと:尽くすこと」と書かれているだけある。

最期の最期まで主人公に尽くしてくれた、偽物じゃない優しさが沁みるね。

 

 

アリビナED

赤髪ツインテアリビナちゃんはとにかく顔が良い!

可愛い~~~!

平和な時代に生まれればアイドルが天職のような子なんだけど、今生では「優秀な突撃歩兵」と評されているのにうッとなる。

優秀な突撃歩兵なんて、戦場では一番死に近い役職じゃんね……。


ED5では敵国に寝返ったフリをして助けてくれるところがヒーローみたいで惚れました。

画像

死線の上で尚、敵を欺こうと動けるところが優秀と言われるところなんだよね。


ちなみにこの一枚絵で彼女の髪が灰色なのは「外交官の父親と敵国との隠し子で、出自を隠すために髪の毛を染めている」から。

つまり半分は敵国の血を引いていて、その事実を上手く主張すれば主人公をそのまま売る事も出来たんだけど、彼女はそうしなかった。

主人公への信頼をニヒルに示してくれた最期がすごく格好良かったです。

 

 

ストレルカED

科学マニアかつ元生物兵器研究員のストレルカと同部屋になると、部屋中に本の塔が乱立するところが大好き。

部屋の様相がここまでがらっと変わるのはストレルカの時だけだし、彼女には何かしらの特別感があるんですよね。


10個あるEDのうち彼女との終わり、ED3だけが唯一自決を選べるルートでもあるし。

【ストレルカ】

…弾薬が尽きるまで戦おうか。
…あぁ、1発だけは残しておいてね?

8人の少女の中で、ストレルカだけが敵国の機械兵の材料が生きた人間であることを知っていたんですよね。

この先捕まって捕虜になれば生き地獄に晒されるということも。


全てを知っているから一番マシな手段を選べて、それが自殺。

…あぁ、1発だけは残しておいてね?」という台詞でストレルカは「自分は死ぬ」と名言したけど、マルフーシャはどうするんだろう。

敵国との銃撃戦で死ぬのか、ストレルカの自殺を幇助するのか、それとも心中という形を取るのか。

プレイヤーには明かされる事のない彼女達の最期を想います。


自死の良いところは、自分が死ぬ瞬間に何を思うのかを自分で決められるところにありますからね。

彼女達が自分自身で打つピリオドに、せめて微かな笑みと安らぎがありますようにと祈るばかりです。

 

 

真ED

各キャラとの個別EDと、100日間たった一人で防衛し続けるぼっちEDを超えて辿り着いた真エンドことED10。

画像

【最高指導者】

使い捨て予定の門兵部隊から思わぬ掘り出し物だった。

私の直属特殊部隊、「溶鉄」を新設する。

次の戦場でも活躍を期待するぞ。
マルフーシャ。

そ、そんなあ………(絶句)

今までのEDの中でも一番絶望感が強いし、考えうる限り最悪のタイトル回収で言葉を失いました。

今作はマルフーシャが”溶鉄のマルフーシャ”になるまでの、いわゆるエピソードゼロ的な前日譚だったってことですよね。

マルフーシャ以外の女の子は全員見捨てられて、マルフーシャだけがピックアップされて生き残るのはここで確定事項になる。


全てはマルフーシャが有能だったから、プレイヤーが頑張って有能にさせてしまったから、彼女はこの先何度も何度も今回と同じ事を、違うメンバーで繰り返すことになるんでしょう?

妹と再び暮らせる細やかな、本当に細やかな幸せはその辛さと釣り合ってる?

釣り合ってる訳ないよね?

でもマルフーシャはもうこの先最高指導者の言葉に従うしかないんですよね。


生き延びてしまったばっかりに権力に屈するハメになるこの理不尽さが、後味悪いのと同時に味わい深くもあって大好きです。