『DREDGE』という奇形の魚を釣りまくるクトゥルフ漁業ADVをswitchでプレイしました。
プレイ時間はクリアのみなら10時間、魚図鑑128種コンプまでなら15時間30分でED数は2。
巨大かつ不気味な海洋生物が生息する海を駆け回りながら
沈んだ財宝や魚を釣りまくるという内容なんだけど、
めっっちゃくちゃ楽しかった!!
時間と天候ごとに姿を変える海、異業魚のデザイン、波音と混じり合う音楽、どこから褒めればいいのか迷うぐらい全てが私好みでした。
YouTubeで公開されていた2分30秒のアニメトレーラーも、クリアした後に見ると最高の一言。
これだけのアニメPVが何で本編に収録されていないのか不思議なくらい。
とにもかくにも今作をプレイしていた約25時間、ずっと夢中でずっと楽しかったです。
刻々と変わる自然の海が美しい
海上を船で走ること、それ自体が気持ちよすぎてびっくりしました。
1時間単位で変わる空と海、その光が綺麗すぎて感動するレベル。
朝6時、漁に出発する際の朝焼けは希望に輝いてるし
沈む太陽は世界をオレンジ一色に染める。
本作のメインストーリーは海に沈んだ5つアイテムを引き上げてクトゥルフ(クトゥルフ神話に登場するタコの姿をした邪神)に捧げるというものなんだけど、そのアイテムが沈んでる地域ごとに風景ががらっと変わるのも面白い。
存在する地域は、チュートリアルの町を含めた「マレー諸島」「ツイストランド」「デビルズ・スパイン」「ステラーベイスン」「ゲースクリフ」の5つ。
北西に位置するツイストランドは入り込んだマングローブだし
その反対、北東のデビルズ・スパインは崩落した遺跡が点在する活火山。
当然釣れる魚も全く違うんだけど、全ては同じ海で繋がってて、船を走らせていけばどこまでも行ける感覚が「冒険!」という感じで興奮しました。
大洋での巨大海洋生物との邂逅もまた楽し!
幻覚と幻聴を引き起こす寝不足
今作の一番の目玉ポイントは、睡眠不足によるSAN値(正気度という意味)の低下によって幻覚、幻聴が引き起こされるシステムだと思う。
時計の下の目がギンギンになってくると、海上に瞬く複数の赤い目を見たり
夥しいカラスによって船が襲撃されたり
マップ上に存在しなかった岩が急に現れて激突したりする。
これって釣りもしくは移動時でないと時間が経過しないのがまた恐怖を煽ってくるんだよね。
釣りでやり過ごそうとしても魚資源は枯渇するし、延々と夜の海を彷徨っていかないといけない。
何とか夜明けを迎えたとしても、その視界には色収差が発生していて、主人公の疲労をダイレクトに伝えてくる。
寝不足は健康に害!という主張が私が今まで触れてきた創作物の中でも一番と言っていいほど強いので、もはや教育の一環として高校生、大学生あたりにやらせてみてもいいんじゃない?
ただ私が恐怖を覚えるのは幻覚よりも幻聴の方で、SAN値低状態の夜の海でのみ他の船の汽笛が聴こえること。
昼間には他の船の存在なんて影も形も見当たらないのに、闇の向こうから響いてくる汽笛はまるで同じ漁師仲間からの挨拶のように聞こえるのが怖い。
その疑似餌感、がこちらが今から狩られる側だという合図に思えて恐ろしいです。
荒削りで魅力的なキャラデザ
キャラクターデザインも、海で生きる人間を彫刻刀で掘り出したような質感があって好ましいです。
私が一番好きなのは、というかプレイヤーなら誰しもが好きだと思うのが、各地の拠点を管理する「旅商人」の女性。
航海に出るときは気をつけてね。
あなたの船が走っているのを見るたびに、私は笑顔になれるわ。
ま、ママ……!
いや、別にママではないんですが、安心感で言ったらマザーとしか言えない恩人です。
彼女の船の灯りと専用BGM「The Resilient Traveller」の有り難さは、このゲームをプレイしたプレイヤー全員が感じるはず。
老若男女、というかこのゲームに出てくるのは大体老人なんですけど、その描き分けもまた上手い!
特に気が触れた老人の描き方が抜群に上手くて感心しました。
この狂信者と旧町長はどちらも頭のおかしい人物として描写されているんだけど、そのベクトルは真逆なんですよね。
神の復活をひたすらに望むものと、邪神の存在にひたすらに怯える者。
陽の狂気と陰の狂気を瞳で描き分けた作品、私は今作しか知らないです。
奇形魚のデザインが良すぎる!
普通の漁業をしていく中で、たまにその姿が不気味に変化した奇形魚を釣り上げる時があるんだけど、そのデザインも超格好いい。
アニメPVでもその一部が映ってるんだけど、魚図鑑コンプ済の身だとここにある魚が奇怪なサバ、目玉だらけのサバ、万視のタラ、三頭タラ、棘ウナギ、発電グルーパーだと全部分かるのが嬉しいところ。
このアニメPVで映っていない魚でもまだまだお気に入りデザインがあるので、その一部をご紹介。
添えられた解説文がまたいい味出してるんですよ。
デメニギス(異形化前の魚は全部リアルに存在する)の奇形種、虚無目ニギス。
その眼の中で永久に繰り返されるパターン…
揺れる緑の海に溶け込む赤いサイクロン。
深淵があなたを焼き尽くす。
スヌークの奇形種、渦を巻く侵入者。
緩やかな渦がその身体をねじ曲げ、
見えざる次元に向かって引き伸ばしている。
ヒレナガウナギの奇形種、双子ウナギ。
常に離れようともがいているが、身が裂けた時には苦痛が待っている。
憎しみに満ちた兄弟は今にもはち切れそうだ。
あと奇形ではないノーマルの魚だと、シーラカンスの説明も気に入ってます。
過ぎ去った年月に打ちのめされた古代の巨魚。
その瞳はゆっくりと旋回し、悲しげにあなたを見つめる。
長い年月を生きながらえることは不幸であり、哀しみであると表現しているところがお気に入り。
あと新しい奇形種の魚を捕まえるとカットインが入るんだけど、その時に鳴る「どぅるん」というSEにも、気色悪い達成感があっていいです。
ただ何の心構えもなく見る「目玉だらけのサバ」は本当にきしょい。
以下、ネタバレありのストーリー感想。
クトゥルフらしい2つの結末
2つあるEDの分岐は、5つの重要アイテムを海から引き上げた後、それらを海に投げ込むかどうか。
収集家の言う通りに海に投げ込むと、収集家の妻と共に邪神クトゥルフが復活。
グレートマローもその被害に合い、ひいては世界全滅示唆ED。
で、もう1つはアイテムではなく自身が怪物に呑まれることによって維持される平穏ED。
どちらもバッドエンドだと言えばそうなんだけど、そもそも主人公ってちゃんとした人間だったのかな。
収集家との決別が鏡を叩き割る一枚絵になってるから見るに、収集家の意識の一部というか別人格というか、少なくとも独立した一個人ではなさそう。
収集家から奪った本を灯台守の老婆に見せると、
「お前はいつもそれを持っていただろう?まあいい。正気を保っているのなら、この機を活かすべきだ」と言われる。
……えっ、今までこの人、正気じゃなかったんですか?
急に主人公側の異常が明かされてびっくりしました。
私はてっきり収集家と灯台守が古い親友で、灯台守はその片鱗を主人公に見て意味深なアドバイスをくれているだけだと思っていたので。
収集家と主人公は同一人物ってことでいい、んですか……?本当に?
EDとしては、個人的には平穏EDより世界壊滅EDの方が好きです。
ED曲の「悪役登場!」みたいな壮大アレンジが格好いいし、何より灯台から光が消え失せているのがたまらないんです。
あなたはこの構造物の本質的な力について思索する。
無数の命を預かるこの巨大な石の柱の力を…それはいつまで立ち続けるのだろう?
その使命を果たし、崩れて廃墟となる日が来るのだろうか?灯台がそびえ立っている。
崩れて廃墟となる日、ちゃんと来ましたよ。
『DREDGE』は2023年3月発売のゲームなんだけど、今年1年かけてアップデートされる内容が明記されてるのも、ファンとしてはすごくすごく嬉しいところ。
5月中にマップ内にマーカーを付けられるマップ機能追加。
6月末日までに、モンスターが攻撃を仕掛けてこなくなる「パッシブモード」と海の生き物を加えた風景撮影ができる「フォトモード」追加。
9月末日までに、所有する船に好きなデザインのペイントや旗を掲げることが出来るボートのカスタマイズ機能を追加。
12月末日までに、新たなストーリー追加となる有料DLCがリリースされる予定となっている。
有料DLC、絶対に買います!
無料アプデ機能も超便利だし、何度でもまたあの海に回帰したくなっちゃうね。