「また明日」って今日も言わせて / 劇場版「若おかみは小学生!」【感想】
腐女子のBL妄想が捗るおすすめ曲① ヒトリエ「フユノ」
そういう妄想がしたくなる曲って、神曲の確率高すぎでしょ!?!?
「ねえ、これBLソングじゃね?推しカプのためにあるような曲じゃね?」
っていう腐女子の勘違いコメント共に紹介されているような曲、ぶっちゃけ同類のツボを抑えてくる確率が高すぎる。
誰かのイマジネーションを刺激したという事実は、どっかの音楽番組がやってるような毒にも薬にもならないアンケートランキングなんかより、よほど信頼性があると思うんだよ。
っていう、そういう話です。まずは私から!
かつてのボカロ好きなら知っているだろうwowaka率いるバンド、ヒトリエ。
レース職人はいつも俯いた手元の狭い視界で、大学生は数字で世界を見ている。
周囲の人々は2人を理解してくれてるし、世間とのコミュニケーションも特に問題はない。
大学生は講義の空き時間に、本屋にあるような初心者向けレース編みセットを買って開けてみたりする。
けれど、いつもその試みは失敗に終わる。
どれだけ眺めたってレース職人には数字はただの数字でしかなく、
大学生の指先が編み出す模様の目は荒い。
相手と同じような世界を、同じような美しさで見ることは出来ないわけで。
でも後日、お互いがお互いの努力の痕跡を見つけるんだよ。
大学生は、ゴミ箱の中からくしゃくしゃに丸められた新聞の3面を見つけるし
レース職人は、大学生の机の上に自分の物ではないレース用の糸束を見つける。
新聞のナンプレなんて、大学生から見たらどこで躓くのかも分からない簡単なものだし
置いてあった糸束は、レース職人なら購入するはずもない安物。
そして、それがとんでもなく嬉しいんだよ、お互いにとって。
恋人が自分と同じ目線で、ものごとをやろうとしてくれた。
その事実がたまらなく嬉しいし、その幸福感のままベッドになだれ込んでほしい。
お互いが見てる世界も、感じる美しさも違うけれど、同じ言葉で、同じ熱を感じて欲しい。
この冬の日に。
妄想を言葉にするのって、創作するタイプの人間じゃないからむずいし恥ずいな……。
でもほんと、こっ恥ずかしい妄想しちゃうくらいにこの曲が好きなんですよ。
ピアノは糸の形をしていたし、ドラムは数字のような正確さで足跡を刻んでいくから。
幸福を紡ぎ望む百合アンソロジー / 「Avalon」&「Avalon~bitter~」【感想】
本屋で表紙買いした百合アンソロジー2冊についての感想。
表紙&装丁が最高すぎる。
はい、もう一回Amazonリンクの画像拡大して貼るから見て。
ああああ〜〜〜〜、最高〜〜〜〜!!
表紙とカバー下のSSを担当しているのは、イラストレーターの切符。
キャラクターが可愛いのは勿論だけど、特筆すべきはやっぱり背景じゃない?
西洋絵画を意識しているんであろうタッチ、ぼかし、光源がたまらない。
もう芸術の域です、百合は芸術!!
「Avalon」の方は、モネやシスレーを彷彿とさせる印象派系のにじみが本当に美しいし
「Avalon ~bitter~」の方は、ゴールドと模様の組み合わせが、もろにクリムト系のゴージャス感。
(アルフレッド・シスレー「ポール=マルリの洪水と小舟」)
(グスタフ・クリムト「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」
中村晋弥(LUCK'a Inc.)によるデザイン&装丁も最高なんですよ!
左がカバー下のSSで、右がカバー。
こんな素敵なカバー下、見たことある!?!?私は初めて見ました。
表紙の手触りもマットPP加工でさ、高級感のあるいい手触りなんだよ。
彼女達が来ている衣服を、なぞるようなこの官能的な手触りだけで値段分の元が取れます。
収録されている話でグッときたのは2冊合わせて3作品。
打率で言えば低いけど、まあアンソロジーなんて好きになれる話が1つあればいい方なので。
1.いとう「良い旅を」(「Avalon~bitter~」)
あなたがあまりに優しいから
あなたが色々な星を巡る夢ばかり見ていたの
私の重力に引かれておちてなんてほしくない
…いや こんな言い方不誠実ねすべきこと
全ては成せなくてごめんなさい
一緒にいられなくてごめんなさい …そして 良い旅を
百合SF。
SFに関しての私は、伊藤計劃もアーサー・C・クラークもレイ・ブラッドベリも読んだけど、「マジで意味が分からん」の一言に尽きる残念系。
回りくどい文章の羅列で、結局は人間の感情を描いただけにしか思えなくて、好きになれない。
けれど惹かれる。難解だからこそ、読み解いてみたいと思う。
「理解出来ないものを、理解できるもの以上にありがたがってはいけない」っていう名言もあるけどさ、回りくどい言葉でしか深めていけない感情もあるんだろうし。
今作に関しては、そういうSFっぽい会話のやり取りが味わい深かった。
特にラスト
「あの人の言っていた 愛と責任についてよく考えるのだ
何一つ知ることが出来なかったから
特にこんな――美しさの中では」で夜明けを迎えるところが王道で最高だった。
ただただ光が美しいという事実に、そしてこの光こそを彼女に見せたがったミツガワの真心に少し泣いたよ。
例え完璧に理解できなくとも、心震える景色に圧倒されたい。
2.須藤佑実「おねがい」(「Avalon ~bitter~」)
どうしてこんな無意味なことを 繰り返さなきゃいけないの
この涙は どこに行くの
せめてこの涙が海に溶けて 雲になればいいのに
そしてやがて雨になって あなたの背中をたたくの
失恋自殺からのループ片思い執着百合。
いや〜、ストーリーの結末と始まりを繋げる滴が、物語として綺麗すぎるね。
「こんな日はいつも 懐かしい人が一瞬浮かんでは 消える」
主人公が流した涙はちゃんと雨になって、その雨はひろちゃんの中で漠然とした涙となり、また主人公を無為な嘆きへと目覚めさせる。
メビウスの輪のように、ひっくり返され続ける砂時計のように。
終わっては始まり、始まっては終わってゆく、切れ目のない慕情が哀しい。
3.桜庭友紀「魔女と女王」(「Avalon 」)
どうせ賭けるなら 持てる最高を
街の存続を賭けた女王様vs魔女もの系百合。
詰め込みまくったセリフ・絵・展開、とても熱量のある同人作品を読ませてもらったという感じ。
正直、話にはついていけないんだけど、でも喰らいついていきたいと思わせてくれる情熱が確かにある。
一本の漫画というよりは、何処かのゲームのコミカライズ化という印象すら受けるほどの情報量なので、考察とか好きな人にはウケそう。
振り返ってみると、私は分かりにくい百合が好きなのかもしれない。
こういうこだわりが詰まった、良くも悪くも同人っぽい商業誌、個人的には結構好きなので次もあったら買いたい。
両親の性交で生まれた、饒舌なあなた / 西加奈子「炎上する君」【感想】
西加奈子「炎上する君」の文庫本(又吉直樹(ビース)の解説付き)を読んで、だーだー泣いている。
収録されている8つの短編。
その中でも特に「あなたは、太陽の上に住んでいる。」から始まる一番最初の短編、「太陽の上」が泣けて泣けてしょうがなかった。
一度でも引きこもり経験がある人はぜひ読んでみて。
これは私たちのことを描いた小説だから。
(私は中学2年生・高校1年生の時に2回、半年間不登校で引きこもった経験あり)
だって8ページ、日常生活品を通販する主人公の行動描写がもうあの時の私だもん。
注文した箱が届けられるとき、あなたはいつも緊張する。
SMプレイ用の道具が出てきたらどうしよう、卓上卓球セットが出てきたらどうしよう。
それらは「誰かとやると楽しいもの」だ。
無意識で、自分が、「誰かとやると楽しいもの」を、買っていたらどうしよう、とあなたは危惧している。しかし、あなたはそんな心配をしたことは一度もないし、これからもしないだろう。
あなたの手元に届くのは、初心者向けのタロットカードだし、プレイステーション・ポータブルだし、大人用の緻密な塗り絵だ。
姫路城と松本城のプラモデルだったこともあったし、プランクトン育成セットだったこともあった。あなたは、ひとりだ。
タロットカード、PSP、大人向け塗り絵、プラモデル、育成セット。
引きこもりが選ぶ遊び道具の品選び、笑っちゃうぐらいに的確だ。
実際、あのときの私はこれらほぼ全部に、手を出そうとしたよ。
「誰かとやると楽しいもの」から目を逸らし続けて、「自分ひとりでできること」ばかり選んでやっていた。
それでいいと思っていた。だって、そうするしかなかったから。
だからこそラスト、女将さんの性交の声で、再誕生する主人公は私なのだ。
あなたは少し、震える。なぜか分からない。
夏生まれのあなただが、今日が誕生日であると思い出す。
日にちは分からないのだが、なぜか強くそう思う。今日が自分の誕生日だ。黒い文字は、乱暴な律儀さで、あなたのノートに「それ」を教えている。
「誰かとすると楽しいこと」。あなたは饒舌だった。
今日があなたの誕生日だ。
あなたは両親の性交で生まれた。饒舌なあなた。あなたは降りてくる。
太陽の上から、降りてくる。
性交=「誰かとすると楽しいこと」で、私は生まれた。
この単純明快な事実が、ひどく胸をつく。
「誰かとすると楽しいこと」をずっと避けていた寂しさも、それを諦めることによって得ていた安寧も、すべてがこの小説の言うとおりだった。
感情に蓋をして、すれ違う人を木のように眺めて、ひとりぼっちで、世界を泳いで。
ひとりぼっちで。
私は、ひとりでいたくなかった。(「空を待つ」より)
私が引きこもりになったのは、2回ともクラスに親しい友達を作れなかったことが原因だった。
(子供っぽいって笑うでしょ?
でも社会人になってからも、「職場に心を許せる人がいない……他の同期はちゃんと馴染んでるのに……」って泣いてるから、なかなかこの問題は根が深いよ)
出来ることなら、この本を当時引きこもって、茫漠とした日々を耐えていた私に贈ってあげたい。
「誰かとすると楽しいこと」を求めることに、怯えていた私に。
我々の些細な苦しみは、誰かの思い苦しみと比較され、苦しみと感じること自体が悪であるように思わなければならないのか?
僕達は自分の悩みさえも悩んではいけないのか?(又吉直樹(ピース)の解説より)
いいに決まってる。
一人だってことに悩んでいいし、苦しんでいいし、解決しようとしていいんだよ、って言ってあげたい。
歩こう。
太陽の上に住まうのでもなく(「太陽の上」)
空に浮かぶのでもなく(「ある風船の落下」)
船に揺られるのでもなく(「船の街」)
寝台の上で死体になるのでもなく(「トロフィーワイフ」)。
足を燃やしながら(「炎上する君」)、地面を歩こう。
日常になるのを焦ってしまうワンダーランド / 18禁BLゲー『贄の町』【感想】