本屋で表紙買いした百合アンソロジー2冊についての感想。
表紙&装丁が最高すぎる。
はい、もう一回Amazonリンクの画像拡大して貼るから見て。
ああああ〜〜〜〜、最高〜〜〜〜!!
表紙とカバー下のSSを担当しているのは、イラストレーターの切符。
キャラクターが可愛いのは勿論だけど、特筆すべきはやっぱり背景じゃない?
西洋絵画を意識しているんであろうタッチ、ぼかし、光源がたまらない。
もう芸術の域です、百合は芸術!!
「Avalon」の方は、モネやシスレーを彷彿とさせる印象派系のにじみが本当に美しいし
「Avalon ~bitter~」の方は、ゴールドと模様の組み合わせが、もろにクリムト系のゴージャス感。
(アルフレッド・シスレー「ポール=マルリの洪水と小舟」)
(グスタフ・クリムト「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」
中村晋弥(LUCK'a Inc.)によるデザイン&装丁も最高なんですよ!
左がカバー下のSSで、右がカバー。
こんな素敵なカバー下、見たことある!?!?私は初めて見ました。
表紙の手触りもマットPP加工でさ、高級感のあるいい手触りなんだよ。
彼女達が来ている衣服を、なぞるようなこの官能的な手触りだけで値段分の元が取れます。
収録されている話でグッときたのは2冊合わせて3作品。
打率で言えば低いけど、まあアンソロジーなんて好きになれる話が1つあればいい方なので。
1.いとう「良い旅を」(「Avalon~bitter~」)
あなたがあまりに優しいから
あなたが色々な星を巡る夢ばかり見ていたの
私の重力に引かれておちてなんてほしくない
…いや こんな言い方不誠実ねすべきこと
全ては成せなくてごめんなさい
一緒にいられなくてごめんなさい …そして 良い旅を
百合SF。
SFに関しての私は、伊藤計劃もアーサー・C・クラークもレイ・ブラッドベリも読んだけど、「マジで意味が分からん」の一言に尽きる残念系。
回りくどい文章の羅列で、結局は人間の感情を描いただけにしか思えなくて、好きになれない。
けれど惹かれる。難解だからこそ、読み解いてみたいと思う。
「理解出来ないものを、理解できるもの以上にありがたがってはいけない」っていう名言もあるけどさ、回りくどい言葉でしか深めていけない感情もあるんだろうし。
今作に関しては、そういうSFっぽい会話のやり取りが味わい深かった。
特にラスト
「あの人の言っていた 愛と責任についてよく考えるのだ
何一つ知ることが出来なかったから
特にこんな――美しさの中では」で夜明けを迎えるところが王道で最高だった。
ただただ光が美しいという事実に、そしてこの光こそを彼女に見せたがったミツガワの真心に少し泣いたよ。
例え完璧に理解できなくとも、心震える景色に圧倒されたい。
2.須藤佑実「おねがい」(「Avalon ~bitter~」)
どうしてこんな無意味なことを 繰り返さなきゃいけないの
この涙は どこに行くの
せめてこの涙が海に溶けて 雲になればいいのに
そしてやがて雨になって あなたの背中をたたくの
失恋自殺からのループ片思い執着百合。
いや〜、ストーリーの結末と始まりを繋げる滴が、物語として綺麗すぎるね。
「こんな日はいつも 懐かしい人が一瞬浮かんでは 消える」
主人公が流した涙はちゃんと雨になって、その雨はひろちゃんの中で漠然とした涙となり、また主人公を無為な嘆きへと目覚めさせる。
メビウスの輪のように、ひっくり返され続ける砂時計のように。
終わっては始まり、始まっては終わってゆく、切れ目のない慕情が哀しい。
3.桜庭友紀「魔女と女王」(「Avalon 」)
どうせ賭けるなら 持てる最高を
街の存続を賭けた女王様vs魔女もの系百合。
詰め込みまくったセリフ・絵・展開、とても熱量のある同人作品を読ませてもらったという感じ。
正直、話にはついていけないんだけど、でも喰らいついていきたいと思わせてくれる情熱が確かにある。
一本の漫画というよりは、何処かのゲームのコミカライズ化という印象すら受けるほどの情報量なので、考察とか好きな人にはウケそう。
振り返ってみると、私は分かりにくい百合が好きなのかもしれない。
こういうこだわりが詰まった、良くも悪くも同人っぽい商業誌、個人的には結構好きなので次もあったら買いたい。