2024年8月にハマっていた8曲の感想文でアーティストの五十音順にするとこんな感じ。
・ANMC feat. むト『Sad Sad Hot Latte』
・アメリカ民謡研究会『ー人の人間のー般的なエラーのー覧。』
・CLAN QUEEN『自白』
・CLAN QUEEN『プルートー』
・SennaRin『ADRENA』
・HITOGOTO feat.中島健人『ヒトゴト』
・LOLUET feat.ヰ世界情緒『双生コンフリクト』
・ゆうゆ feat.IA『ロベリアの追懐』
夏、何もかもを忘れてゆく夏……。
空いた宇宙のすみっこから
みなも何か探してる
KAMITSUBAKI STUDIOが制作を手掛けたミュージック系ノベルゲーム『ムーンレスムーン』ED。
「ANMC」でアノマチと呼び、MV映像もゲーム本編でそのまま流れるアニメーション。
私はこのゲームをクリア済で、アルバムのブックレットに付いてるような短編小説の映像化という印象を受ける作品。
夜毎別の世界を歩ける少女:ヨミチが、そこで出会う人達との交流を通して癒やされていくみたいな。
私が一番好きなキャラは、別世界を歩ける主人公とは対象的に自分の家の付近から一切出ず、かつそれを良しとしているイトという娘でした。
「ここより素敵なところがあるかもしれないよ?」
そう言いながら、 ヨミチは自問する。
本当だろうか?ここよりも穏やかな場所なんて、どこかにあるだろうか。わからない。あってほしい気持ちもある。 彼女がまだ行ったことのない世界もたくさんあるだろうから、その中にもしかしたら、と期待する。
「ときどき、そういうことを言ってくれる人がいるけれど」
イトの言葉は優しく、冷ややかだった。「ここより素敵な、っていうのが、私にはうまく想像できない。
素敵って、どういうこと?ここより広いとか、 物がたくさんあるとか?」
「ずっと変わらない場所が、どこかにあったらいい。ここが、そうなったらいい」
私自身も引きこもり体質なので、彼女の言動が登場人物の中で一番共感出来ました。
ED映像でも、彼女がラスサビの一番良いところでこちらを振り向いて笑ってくれた事が嬉しい。
ここの歌詞がリフレインする「スポットライト」なのがすごく良いんだよね。
一人ひとりの生き方に強く光を当てる、そういう構成のノベルゲームだったので、それをちゃんと映像にしてる。
歌声もKAMITSUBAKI STUDIOが起用する女声ボーカリストらしい、今どきのチルっぽい感じ。
2番Aメロ「オーバーキルなマウントも」のところの歌い方が好きだな。
実生活でもこのフレーズが頭によぎることがあります。
「どんな強いコトバも オーバーキルなマウントも 気付いたら一人 空を引っ掻いていた」っていうのは本当にそうだよ。
ねむれ ねむれ 私の手に。
ここは楽しい夢。
悲しかった? おいで、私が全部正してあげるからさ。
アメリカ民謡研究会のXのプロフィールには「機械に朗読される音楽を作ります。」とあり、この曲を聞くと「ああ、その通りだなあ」なんて強く思います。
1番Aメロ「過ぎた時計のことを考えている。言葉を忘れた歌声が、呪いみたいに耳に縛り憑いて、それでも私を生かし続けているのを」が「せっかく歌っているのに……」という台詞に続くことで、このメインボーカルの子が機械側だということが分かる。
2番Aメロ「あの手紙の痕を、まだ、私は、抱いて、」からも。
サビ「部屋にそっと置いた秘密の日記、あれが本当だよ。 苦駄んない火は消して私を見ていて。 それで安心だから」がね~~、すごくいい!
日記を読むには明かりが必要で、その火を取り上げることは真実を見るなと言っているのと同じで、それがサビ直後の「ねむれ ねむれ 私の手に」と繋がってくる。
アメリカ民謡研究会は、一つの望みを言葉を変えて繰り返し言わせることでそれがどれだけ強い願いなのかを表す、物語的な表現がすごく上手い人だなあといつも思うよ。
これだけ機械目線の歌詞なのに、「一人の人間の一般的なエラーの一覧。」と名付けたところもすごい。
永久に繰り返す機械の献身を作り出す人間の過ちすら、一般的なエラーですよ。
AIが主流になったこの世界の数十年後もこんな感じなのかもね。
人間用にチューニングされた心地よい言葉が、誰に届くこともなく垂れ流されるのが放置され続ける未来。
・いつか貴方へ届くように歌い続けること。
・いつか貴方と出会うように願い続けること。
・いつか貴方を幸せにするよう祈り続けること。
・いつまでもいつまでもいつまでも永遠を信じ続けること。
が「生命の成す、一般的な最悪の行い」と評されるのも頷けるような。
ただ今曲の1分以上続き、そしてフェードアウトしていくアウトロに、「それでも迎える終焉」みたいなものを感じて心が震えました。
声が終わり主旋律が途切れた後も、同じメロディーを繰り返し続けた細やかな余韻もいつか絶えて終わる。
段階的にブレーカーが落ちていくかのような終焉を、音で描いたところに今曲の凄さがあるんだと思います。
さよなら 最低な五臓 掻い出して
真っ黒になった心を漂白して
CLAN QUEENについては「メンバー3人が作詞作曲、映像監督、グラフィックなどを全て担い、クリエイティブネオロックを提唱する新世代ユニット」とのこと。
たまたまYouTubeを見てた時に流れてきた曲なんだけど、男女のツインボーカルに加えてメロディーと編曲にも勢いがあって、一発でお気に入りアーティストに。
こういう強い曲を作り出せるのも、歌いこなせる声にも憧れます。
サビ後のピアノの連打も超格好いい!
MVの演奏シーンのライティングも青緑をベースにしながら、補色の赤を差し色に使っているところがおしゃれ。
光の点滅を多用し過ぎ感もあるけど、その迫力に見合うだけの曲で満足。
誦した魅力が弾丸 君の語尾を剥いで
タイトル「プルートー」は、ローマ神話における冥界を司る神。
「きっと地獄までの階段です」や「四苦八苦続きの煩悩 九相図効いてない」「極楽浄土で待っていて」という宗教的ワードが出てくるのも、冥界をテーマにしているからかも?
曲調は前述した『自白』と似てるけど、男性ボーカル:AOiがよりABメロでメイン寄りになっているのが違いかな。
アルトサックスや銃のリロード音に金属的な質感があって楽しく聞けるところが好き。
フラッシュバックに麻酔も打たずに
巡らせた毒が放火した
SennaRin 1stAL『ADRENA』のリードトラックにして表題曲。
今曲に関しては、澤野弘之が気合入れてきたな~と唸ったね。
ベースがあるといえど、ボーカルのコーラスメインにしたアカペラで勝負しに来たのは、やっぱりSennaRinの歌唱力に自信があるからだよね。
彼女の声が弦のように弾んで伸びるのを聞く度に、人間の声も楽器なんだなあと強く思うよ。
自分は謎言語コーラスで育った謎言語コーラス大好きオタクなので、今曲ももちろん大好き。
イントロの第一音からして神曲が始まるなという予感があったし、それが裏切られることなくアウトロまで突き進んでくれたことが嬉しい。
曲の構成もサビ2回分をラストに持ってくるという変則的なものだけど、それが曲自体の爆発力に直結してるところが上手いな。
こんな世の中 愛じゃ救えないのかな
中島健人主演ドラマ『しょせん他人事ですから』主題歌。
ドラマのほぼ各話ごとに多少歌詞が違うアレンジバージョンが存在して、今現在放映6話で4曲分あり。
それだけ多いとどれを好きになればいいのか迷うくらいだけど、まあ原曲が一番ベーシックかつ王道アレンジなのでここで挙げておきます。
やっぱりね~、中島健人の音楽の趣味って信用出来るよ。
彼がソロになって立ち上げたファンクラブのPVを見て即入会した身からすると、今曲のリリースもめちゃくちゃ嬉しかった!
こういう風にお洒落で踊れて聞きやすいキャッチーなアイドルソングを私もいつまでも聞いていたいよ。
ジャケットの金髪+黒スーツのビジュアルもめちゃイケ。
まあ中島健人の歌声で歌われたら何でもいいような気もするけどね。
サビ後半「指先が嘘を撫でる世だから」の歌い方もフレーズもエロくて本当に好き。
何か一つでも得られたなら
奪われてばかりの生活も報われるかな
一発で作詞作編曲:香椎モイミと分からせるゴシック・ダークな曲調が流石。
イラストレーター:zoëによる絵も、キャンバス地の上に描かれたアクリルガッシュのような線が印象的。
黒と白の女の子のツインボーカルで、社交的で皆と仲良くやれてる方が黒というのも珍しかったな。
個人的に今曲で一番好きなのが2人が声を重ねる「許せない 許されない」というラスサビ前。
「許せない」までなら自分一人の感情だけど、「許されない」とすることで周囲を巻き込んで大義名分を自分側が得ようとする。
たかだか恋にかけるその大仰しい浅ましさが香椎モイミが描く女の子らしいなあ。
ウソつきな鏡の前 全て覚えていたの
動画概要欄にある「とある黄薔薇に思いを寄せて」というコメントと、MVの絵を見るに、今曲はフリーゲーム「Ib」に登場するメアリーというキャラへ捧げる曲らしく。
ファンアートならぬファンソングというか、音楽が作れる人ならではの二次創作で羨ましいな。
もちろん「Ib」自体を知らない人が聞いても、キャッチーでロックな素晴らしい曲だと思うよ!
Bメロ前のピアノソロとか、それ単体で軽やかで綺麗だし。
私は「Ib」自体はプレイ&クリア済なんだけど、自分の中ではメアリーってもっと怪異寄りの化物という印象があったので、彼女にこんな切なさを見出すファンもいることが意外というか……もしかしたら私がゲーム内での言動を色々見落としているだけかも?
サビで「あなたが あなたが あなたが あなたが 」と4回も繰り返すところに、主人公であるイヴ、ひいては彼女を操作しているプレイヤーへの執着を感じる。
そこがホラーゲームっぽくて私は好きなんだけど、もっとひたむきで純粋な少女の想いと捉えた方がよかったりしますか!?