2025年3月14日公開『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』を観てきました。

私がモノノ怪に求めるもの全部あったよ!大満足!
怪異によって惨たらしく人間が呪殺されるさま、その根幹にある悲惨な境遇とそれを祓うために戦う薬売り&神儀さん。
私が観たかったものが全部劇場仕様のハイパー作画になっていて大満足!
1章で舞台説明が終わっているので、2章は冒頭からクライマックスという感じでスピーディーに話が進み、そこが楽しかったしノンストレス。
ED曲『渇望』も1章主題歌『Love Sick』と同じぐらい最高だったよ~!
「そう!私ってモノノ怪のこういうところが好きだったんだなあ」と思い出させてくれる第2章でした。
以下、ネタバレ感想。
ネタバレ感想
まず冒頭、人体が内側から発火し歩きながら炭化する場面からして唸りました。

焦げた皮膚が畳に跡を残す、こういうのが観たいからホラーアニメ好きやってるんですよね~。
終盤でも鮮やかな炎が人を焼き、その大盤振る舞い的な殺戮っぷりはもはやファンサービス。

↑これでちゃんと人が燃え死んでる。
終盤で死ぬのは嫌な悪役だったから余計にね。
まあ最後に嫌なやつを殺して綺麗に終わってくれるのもまたファンサービスの一種かな。
2章は1章に比べて悪役も味方も分かりやすく、勧善懲悪で綺麗に終わるのでエンタメとして王道。
ボタンとフキ、まさかこの二人が穏やかに「ご機嫌よう」と言葉を交わして終わるとはね。
予告ではあんなに敵対していた風だったのに!?


でもこの二人の仲が改善したのって直接フキが何かしたというよりは、子を身籠った女に対して、ボタンが寄せた思いやりという面の方が強そう。
同じ女だからこそ天子様に選ばれる女に嫉妬し、同じ女だからこそ生まれくるやや子を尊ぶ。
自分の父親よりも大奥の安定という名目のもとフキの子どもを優先した彼女の矜持が好きでした。
ボタンも好きだけどフキも良かったな!
家族に見せた笑顔がすごい可愛かったし、何よりスズの過去が今に重なるシーンではだーだーに涙が出て。
「お前は何が許せない」というキャッチコピーに対する答えは、「私」。

(↑こんな禍々しい堕胎薬の容器、今後一生見ることなさそう)
子どもの命を家族とのしがらみで堕ろしてしまった、そこで抗えなかった自分の事が許せなかった。
本当に大切なものを周囲の圧力に屈する形で手放すと、その悔いが呪いとなってモノノ怪になる。
『唐傘』でも「光を求めて捨てたものばかりが 永遠を喘いでいる」と言っていたので、今作は”集団の為に捧げられた個の犠牲の怨念”みたいなものがコンセプトなのかも。
フキは望まれぬ我が子を「産みます」と言い切って、周囲もそれをサポートする形に落ち着いた。
その強さに母親としての誇りがあって涙が止まりませんでした。
門番の坂下が泣いたのもよ〜く分かる。
後はとにもかくにも戦闘シーンが良かった!

神儀さんめっっちゃ格好良かった!
序盤と終盤の戦闘の違いで、ようやく私にも「モノノ怪を斬れるのは神儀さんだけ」ということが分かりました。
逆に言えば薬売りさんはモノノ怪を退けることは出来ても、有効な打撃は与えられないことが今回でようやく理解出来たというか。
TV版も1章も観ときながら今更!?って感じだけどね。
いや、TV版も映画版も薬売りさんの御札さばきがあまりにも格好いいものだから、雰囲気で効いてるものだとばかり。

薬売りさんの白御札だと壁か何かしらに貼り付かないと機能しないけど(たぶん)、神儀さんになると札は黒くなり、宙にも浮いてバリアにもなる。
子鼠の群れと御札の乱舞が絵的にも互角感があって、観ていてテンション上がりました。
薬売りさんはモノノ怪の形・真・理を聞き出すまでが仕事で、そこからは神儀さんの役目。
そういう二人の違いにもクローズアップした戦闘が多くて興味深かったです。
というかXで行われていた「#モノノ怪質問箱」という企画で
Q:薬売りさんと神儀さんの衣装には何か呪術的な意味があるのでしょうか?
例えば、薬売りさんは女性物の着物ですし、神儀さんは手足に黒い布を巻いています
と質問していた方がいて、私はそっちの方にひっくり返りそうでした。
薬売りさんの服って女性物だったの!?
言われてみれば確かに帯の位置とか女物っぽいけど、言われないと全く気づかなかったし、そもそもあれをごく普通の人間が着てる服の形だと認識してなかったです。
神儀さんの服が男物なのは分かるけど……。
ということは薬売りさんと神儀さんて雌雄同体、両性具有、アンドロギュヌス的な感じなんですか!?
そう考えると、ボタンに退魔の剣を没収されかけるシーンで薬売りさんがくるくると剣を投げて遊んでたの、何かエロい気がしてきたな。
質問箱で他に好きだったのが道具達の扱い。

Q:劇場版では退魔の剣の箱や背負子が不思議パワーで動いていましたが、あれは薬売りさんの力によるものですか?
A:薬売りの力もありますし道具たちが気を利かせて動いてくれてる場面も多いです。
たぶん仲良しなんだと思います。【回答】総監督 中村健治
仲良しなの可愛いね……。
曲もね~、良かった!
1章の『Love Sick』が個人的超神曲だったから、2章でそのTK from凛として時雨が参加しなかったのは残念だったけど、作詞作編曲:武藤弘樹の『渇望』の方向性も同じくらい好き。
モノノ怪の映画主題歌達って、ぱっと見は天子とその側室との男女恋愛もののようだけど、本編を観た後だとそんな印象は露と消える。
「無くせなかった熱を帯び 消えない愛に呑まれていく」
「歪む世界を喰らって 存在を唄え」
「鏡に映る姿 呪った そんな心が生まれてしまった貧しさは 蝋のように燃やせ」
これらは全部『火鼠』の心境、子を堕ろさざるを得なかった母親が吐く呪詛の言葉でしょ?
1章の『Love Sick』も女中だった『唐傘』を描いた曲だったし、2曲ともモノノ怪の咆哮を、後悔を、アイナ・ジ・エンドの声で叫んでる。
そういうところが退魔物アニメらしくて大好き。
主人公は薬売りさんだけど、主役はやっぱりモノノ怪そのものなんだよね。
岩崎琢の劇伴は1章から変わらず最高でした!
OPである『No Trespassing』(”進入禁止”という意味)も、神儀さん戦闘BGM『疾駆RUN』もすごい格好良かったな。
この2曲だけでも早めに配信して欲しいよ~。
2章主題歌『花無双』も映画の中で流れるとしんみり。
「生きてるだけで 愛を知るの」って、母親が子にかける言葉として当たり前だけど良い言葉だよね。
こんなにも王道の泣ける系バラードを終盤で流して弔いの花火も上げて、明確なハッピーエンドを迎えたところで2章は終わる。
だからこそ3章がすごい楽しみ!
もう大奥でやれることはやったというか、大奥で迎えられるハッピーエンドはこれが終着点のはず。
じゃあ3章で何をやるのかといったら大奥の解体以外に他ならないんじゃない?
3章タイトル『蛇神』は別名:水神様。
大奥の女性達が毎日飲まされ続けていた臭い水の秘密が解明される1年後を楽しみに待ってます。
やっぱり2章って1章に比べれば素直に好かれやすい形をしていて、逆に言えば1章でもそう出来たはずなのにこうしなかったのは意図があるはず。
1章、2章とはまた違った『モノノ怪』があともう1度観えることが確約されているなんて、贅沢な話ですよホントに。
↓1章映画感想
↓TV版感想
