最近読んだ恋愛漫画達の感想。
「BLと百合と男女を混ぜるなって!」という自分と「一緒でしょ!同じ恋愛漫画なんだから!」という自分が殴り合って、最終的には「次いつ漫画の話するか分からんから今全部書いとこ」というブログ主としての自分が勝ちました。
BL漫画
『♯BがLする4ページアンソロジー』、タイトル通りマジで1作品4Pしかないんだけどその分収録作が29作品と多く読み応えがありました。
メインは男子高校生ものなんだけど、ケモBLあり爺BLありとジャンルも幅広かったしね。
はらり『ねこにんげん~タマキチとシルク編~』
美容師志望の無毛猫:シルクがぶち猫のタマキチに無理やりヘアメイクをする場面があるんだけど、それがめちゃめちゃ可愛い。
↓
可愛いっ。
とぅるんとぅるんのぴっかぴっかじゃないですか。
オスねこにんげんが同じオスねこにんげんの身だしなみを整えてあげるの、ねこにんげんなりのグルーミングという感じがいいね。
後書き代わりのキャラ紹介文で、タマキチは
「これまでのスマホのカメラロールは
マキオ(※猫モデル)の画像ばかりだったが、
これからは「シルク&ヘアメイクしてもらった自分」の
ツーショットばかりになる」
って書かれているんだけど、それもすごく萌えた!
ツーショットですよ、ツーショット!
ヘアメイク後に首に巻くやつ着けたまま、鏡越しに「いぇーい」ってピースしてる2人の写真がある。絶対にある。私には分かるんです、そういうの……。
井口病院『おいしそうなともだち』
ニコニコ猫男子:三毛別君×ダウナー魚類男子:秋乃君の学生生活を描いたゆるギャグ4コマで、三毛別君が秋乃君のことをがっつり餌目線で好きなのが、笑えるやら空恐ろしいやら。
喧嘩した時に噛みつく擬音が、最初は「ガブ」で2回目は「もぐ」なのすごい可愛いんだけど、これ萌えてて大丈夫ですか!?
作者コメントで「食べる×食べられるの関係が大好き」とあって、それはそれで結構ニッチ性癖なのでは……と思うね。
秋乃君、「三毛別の事が好きだが、自分は食材としてしか見られていないのではないか……と時折心配になっている」と解説されているのがいじらしい。
ちゃんと好きなんじゃん!秋乃君の方が三毛別のことを!
ただ三毛別のあのニコニコ顔は圧倒的強者としてのニコニコな訳だし、秋乃君の気持ちが報われる日はくる、の、か……?
それにもし報われる時が来たとしたら、それはたぶん秋乃君の生死がかかっている状況でしょ。
作者が熱く「被捕食関係は最終的に食べるも良し、食欲に抗い苦しむのも良し、むしろ食べてほしいのも良し。無限の可能性を秘めたテーマだと思います」と語っていた理由が今なら分かる。
これは確かに無限の可能性が秘められていますわ。
ダヨオ『最終電車の恋人たち』
42歳、おっさん同士のカップルが軽く喧嘩した後に仲直りするまでを描いた話なんだけど、何よりまず恋人と仲直りしようとする精神が尊くて感動しました。
冒頭の「昨日は俺がネガティブなことばかり言って少しケンカした」からの電車内チューからの「暗いことを考えなさんな」ですよ!?
マ~~~ジでイイ男過ぎるね。
そりゃ受も最後に「たのむ 俺をお前の 最後の恋人にしてくれ」ってモノローグ入れるよ、入れて当たり前だよ!
ヤングカップルの真似してチューして、それを「おっさん同士で同じことしちゃったなー」って笑って仲直りのきっかけにしてくれるなんて、一緒に暮らすには最高の男だって私でも思うよ。
2人共40歳越えてるんだし、どうかこのまま末永く一緒にいて欲しいものだね。
背景というか車窓の外、夜景の描き方もシティポップっぽくて良かった!
ナウなヤングのラブラブと枯れ気味のおっさん達の仲直り、全て乗せての「最終電車の恋人たち」なんだなあと思うと、タイトル回収の仕方までお洒落だなと思います。
嶋次郎『わんことオオカミくんのラブレター』
授業中、後ろの席のクラスメイトが自分に回してくる手紙が誤字だらけで、その添削がそのまま告白に繋がるというアイデアが光っていて見事!
相手の支離滅裂告白を自分で解明しちゃうところが可愛くて好き。
あと黒髪ヤンキーの顔が……顔がめちゃくちゃどタイプ……!
次に挙げるアンソロ第2巻に続編が載ってて、この告白の後の話が読めたのも嬉しかったです。
『♯BがLする4ページアンソロジー』の続編。
かもがわ圭『告白するタイミング おかしいやつ』
これ、めっちゃ良かった!
MMORPG中、しかもラスボス魔王戦直前に告白してくる男とそれを受けた男が
現実ではこう↓なの
最高では!!???
年の差が10近くある(たぶん)年下攻め好きなんだよな~~~!
好き、本当に私はこういう雰囲気の年の差カプが大好き。
攻の方は元気いっぱいオタク男子高校生!って感じなのに、受の方は社畜気味(だと思うよ、Discordのアイコンがモンエナなので)の会社員なのがたまらんない。
社員証を胸ポケット引っ掛けてるのも、途中で会社を抜け出してきた感ありありでぐっとくるな。
ネトゲでの振る舞い、つまり内面を好きになったんだから、相手が高校生でも社会人でも嫌いになるなんてことないでしょ?
サラリーマンの方が「うぐう……」って感じで照れてるのに、年下の方が溢れんばかりの笑顔っていうのがね!もうね!
魔王のクリアファイルを目印に待ち合わせしてるのも可愛い!全部可愛い!
「恋した男が相手だった」というコンセプトのアンソロジーだけど、どのカプも全く男同士の恋に葛藤してなかった気がする。
相手の事を好きだと気付く、自分の恋を自覚するまでを描いた作品が多くて、それって結局「自分」の再発見じゃないですか。
自分一人では気付けもせず、意識もしなかった自分の本質が、相手の眼差しの中には見えている。
そうして触れてくる指先に、震える心が好きなんです。
ずっと知り得なかった感情の揺らぎ、それを知覚した瞬間がたくさん描かれていて、いやもうこんなのずっとにやにやしちゃうよ!
その中でも特に良かった3作品について、作品の並び順に各話感想。
ナツメカズキ『待っている男』
年下運転手×会社若社長もので、これもすごい良かった!
出だしの1作目がこういうオーソドックスかつ平均以上の作品だと、本全体への期待感が高まっていいね。
現に私はこの話を読み終わった時、「やばい!当たりを引いたかも!」と思えたので。
そしてその予感が間違ってなかったことが嬉しいよ。
好きなシーンは数あれど、やっぱり主人公が心情を吐露するとこが一番好き。
逆にそれ以外何もいらんくね!?
自分が弱ってる時に側にいてくれて、優しい言葉をかけてくれて、恋に落ちるのには充分、充分以上じゃん。
ストレートでスマートな思いやりを、主人公よりだいぶ年下であろう23歳の男がやってくるのにたまらない気持ちになる。
23歳年下攻めっていい、本当にいいです……。
あとラーメン食べてる時の敬語同士のやり取りも萌えました。
「……まだ帰らないで欲しい」と言った時の横顔もめちゃめちゃ可愛かったし!
まだ素直にものをねだれて、それが叶えられると信じられる年頃なんだと思えて微笑ましいです。
独活『ギフト』
いわゆる従兄弟もので、最初の1ページで本当に絵が上手い人なんだなと分かる明暗で描かれた雰囲気にやられました。
麦わら帽子を被せてあげるコマ、線一本の風があるかないかでだいぶ印象が変わると思うんだよね。
1コマ目の逆光の白で夏の強い日差しを描き、次の風で新しく出来た兄弟への思いやりを示す。
ここ以外でも風景とそこに吹く風が2人の関係性を示す場面が多くて、漫画なんて一切書けない自分からすると感嘆するばかり。
読後感がまるで映画一本丸々見た後のように感じるのは、そういう動画的なコマ割りが上手いからだと思うんですよね。
内容もかなり私好みのストーリーでした。
「こいつずっと笑わんな、笑わせてあげたいな」とお互いがお互いに思ってて、でもその想いは噛み合わないまま、10年程が経過してしまって。
2人きりの世界では何一つ変えられなかった停滞が、第3者への恋を介して一気に動く。
その瞬間を「ああ、今ここで全てが決定的に変わるんだな」と読者に納得させるだけの絵作りに圧倒されました。
ここからのカーテンの描き方が上手いんですよ、マジで。
室内に吹き込む新風が、2人の間で固着した想いと関係性を塗り変えていくのを肌で感じるんです。
最後は雨降って地固まるというか、2人が再び手を繋ぎ直すカットで締められてるのも良かったよ~~~!
主人公:圭が「…握ってろ もう二度とないように」と告げた顔を見つめる彼(主人公が「お前」呼びしかしないので名前の漢字が分からん)の表情が、愛しく嬉しく、同時にとても安堵してるように見えて、こちらまで安心しました。
ん村『カフェ店員さんは今日もまぶしい』
コーヒーカフェ店員とその客との恋を描いたほのぼのもの。
序盤の接客中に言ってた豆知識が
「2分間抱きしめていいですか?」に繋がるの、
物語としてきれ~~~だなと思いました。
職業ものの舞台設定がストーリーのオチとして機能するの、定番だけど王道で大好き!
こっちは再読。購入履歴が2019年2月になっていたので、もう4年前になるのか。
4年前から今に至るまでずっと好きだから、そんなに時間が経ってるのが驚き。
アンソロジーっていうのは流れがあるじゃないですか。
序盤は王道もので、中盤あたりで変化球入れて、みたいな。
私は大体中盤の変化球作品を好きになりやすいんだけど、でもそれは序盤の作品が王道もので気持ちを高めてくれたからで。
満足感のあるアンソロジーって、そういう作品の配置の仕方も上手いんだけど、今作と『恋した相手が男だったアンソロジー』はその流れが似ていると思ったので、ついでに改めて感想を書いておきます。
と言っても1作品だけなんだけど、ただその1作品が異様に私のツボなんですわ……。
笑平『鬼の5分間』
デスゲームに巻き込まれた2人の犯罪者が、何やかんやあって5分後に心中するお話。
私がフィクションの心中ものを好きな理由って、自分が最期に何を思って、誰の手を握って死ぬのかを、自分自身で決められるからなんですね。
犯罪者同士がたった5分間の会話で分かち合えた魂、それが最後に描いた幻があまりにも綺麗で胸が締め付けられる。
こんな、こんなにもまともな夢を見ながら死んでいくんだね、お前らは……。
もし2人が幼少期に出会えていたら、こんな風に仲良くなれたのかもしれない。
お互いの生活や学力がかけ離れていていたとしても、それを見下したり僻むことなく、お互いのランドセルにぶら下げたキーホルダーだけを標に友達になれたのかもしれない。
犯罪者の2人が最期に真っ当な愛を抱き心中した事自体、彼ら2人以外の人間にとっては胸糞悪いでしょ。
でも実際にあの2人はたった数分でお互いの理解者となり、手を握り合いながら死んで、その事実は誰にも干渉出来ない。
自ら望んで死の境を踏み越える者に訪れる束の間の聖域、その圧倒的な自由さが私は好きなんだろうなと思います。
動かない体、薄れゆく意識の中、人間社会から断絶されるのが確定した瞬間、ようやく言える本音ってものがあると思うんですよ。
それが例えどれだけ今までの生からかけ離れたものであっても、全てはもう終わるんだから仕方ない。
仕方ないからこそ、その人が本当に欲しかったものを望んでほしいよ。
百合漫画
秋津貴央『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』
1話掲載時からずっとWEB連載を追ってる『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』の19話、めちゃめちゃ良かった!
これは付き合ってしまわれますわ……。
個人的にはこのタマ(小説家高校生)と舞ちゃん(しっかり者小学生)の関係って、高校生と小学生だし百合一歩手前の親愛とか友情で終わるのかなって思っていたら、割としっかり恋愛してくれそうな雰囲気が漂ってきて興奮してます。
舞ちゃんって本当に小学生とは思えないほど人間が出来ているんですよね。
3巻12話でタマの引っ越し話が立ち上がった時「大事にするよって言いたかったの! どんな選択でも どんなあなたでも」と言えてしまうぐらいには自分の寂しさを受け入れ慣れてて、他人の今後を応援できて。
ただその気遣いを「私はイヤ」と突っぱねて、隣にいてくれる誰かが本当はずっと欲しかったんだなってことがこの後の涙を見ると分かる。
読者にも分かるし、何より舞ちゃん自身に一番分かるんだと思う。
自分を一番に優先してくれる人がいた嬉しさと、これから先もずっとその順位を期待しちゃっていいのかなってかすかに不安になる気持ち。
その2つが混ざると泣いちゃうよね。
でもさ~~~ここまでタマを情緒的に成長させたのは舞ちゃんで、過去の舞ちゃんの優しさが今還ってきてるだけの話だよ。
いわば正当な報酬(?)なんだから、笑って受け取って欲しいよ。
少女漫画
池ジュン子『水玉ハニーボーイ』
2014年から2019年まで『LaLa』で連載されていた、オネエ男子:藤君×男前少女:仙石さんという組み合わせのラブコメ。
ずっと楽しくて明るくて、私が好きなLaLa漫画そのものみたいな作品でした。
10巻完結の作品なんだけど、特に9巻の告白シーンが最高に良くって!
主人公の眼差しがもう恋を告げていてやばい。
こんなにも優しく穏やかに「あなたが好きだよ」って伝える眼差し、出来ますか普通!?
第1話から両片想い状態だったし、それなりにくっつくんだろうな~とか思っていたらこんな、こんなにも美しいものを見させていただいて感無量です。
雪の上に寝転んで、指を絡めて、おでここつんしながらなんて超最高のパーフェクトシチュエーションじゃん!
最終話ではちゃんと藤君の方からプロポーズしてくれたのも良かったな。
結局私はBLでも百合でも何でも、「ずっと一緒にいよう」って約束してくれる2人が好きなんだよなあ……。