復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

潜水艇でカノジョを探す海底探索フリゲ『ディープ・シー・ベリアル』感想

あうぐさん制作『ディープ・シー・ベリアル』という短編フリゲをプレイしたのでその感想。

プレイ時間は20分程度でED数は2。

 

主人公は、20年前に行方不明になった飛行機の痕跡を海底に探し続ける男。

およそ 20ネンマエ


とある ヒコウキが タイセイヨウで スガタを ケし

すべての トウジョウシャが ユクエフメイになった

ソウサクするヒトは スコしずつ スクなくなり
イマでは オモいダされることさえ マレになった

いつまでも ソウサクをやめない ワタシを
ショウキを ウシなっていると アワれむ ヒトもいる

おそらく そのトオりなのだろう

それでも アキラめるつもりはない

カノジョの コンセキを ミつけるまで ゼッタイに

まずこのカタカナとひらがなのみで構成された冒頭の文章から、男の必死さとどこかおかしい様子が呈されていて一気に引き込まれました。

漢字で書かれるべきところがカタカナになっているのは、フォントがそもそも漢字対応してないからという事情がありそうだけど、でもそれなら漢字対応のフォントを選べばいい訳で。

そうしなかったということは、漢字を排したそのものに演出の意図があると思う。

単語ごとで細かく区切られているのもどことなく幼稚というか、頭はしっかりしているけど言葉遣いという常識がズレはじめている中年男性の悲哀を帯びた真剣さを感じました。

 

で、このゲームのメインは潜水艇での探索。

これがね~、楽しかった!

潜水艇ソナーが視覚化する障害物を避けつつ、右上で減る数字を基に真っ暗な海底を這うように進んでいく。

この黒と線のみの簡素な画面に、自分が今いる場所の深さと暗さを突きつけられているようで興奮しました。

音もソナーと気泡音のみというシンプルさがより没入感に繋がっていて良き。

 

道中は3回潜水艇を障害物にぶつけるor酸素メーターが0になるとゲームオーバー。

いわば簡単な迷路を進むだけだからそんなにゲームオーバーにならなさそうだけど、私は毎回2回ずつくらいはゲームオーバーになってました。

酸素量の減少と速度の遅さに焦れったくなり、ソナーの仕様に伴う視界の欠落に突っ込むとそうなります。

 

ただぼんやりとでも道を掴めば難なく辿り着ける難易度で、そこのバランス調整はかなり上手かったかな。

目的地である緑のアイコンが見えてくる度に、毎回確かな達成感がありました。

まあ私みたいに下手なくせに急くプレイヤーだけが海の藻屑になるんです……。

 

そうして迷路を乗り越え、目的地に辿り着く度に見つかるのが飛行機に載っていたと思われる人々の残留品。

女性の写真が入っているペンダントに

飛行機のマークが入ったプレート、

果ては人の頭蓋骨まで。

これらの品物を通して、徐々にカノジョに近づいている感触がすごく楽しかったし興奮しました。

以下、物語の結末に触れているのでネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

最初から数えて5つ目に見つかるのが、主人公がずっと探していたカノジョ。

闇の中で膝を抱える全裸の女性

どう見ても怪異の出で立ちで……。

 

カノジョが話す記号めいた言葉も、使用素材にクレジットされているフォント配布サイトを辿れば解明出来る。

【Ancient Dwarvish(古代ドワーフ語)】

フォント配布サイトで入手できる表に当てはめて解読してみると、以下の通り。

COME HERE

JACK
JACK

思ったよりちゃんと主人公に呼びかけてるんだなあ。

 

EDはこの【ヨびゴエにコタえる】もしくは【ヨびゴエにコタえない】で2つに分岐。

まあどちらも後味の良い結末になるはずなどなく……。

 

タイトルにある「ベリアル」はユダヤ・キリスト教における悪魔の名前であり、その名の意味は「無価値(beliya'al)」

そう考えると『ディープ・シー・ベリアル』が指しているものも2つあるように思える。

深海に潜む悪魔の存在と、深海に沈んでいる物は無価値であると最初から示す客観的な評価。

 

主人公は【ヨびゴエにコタえる】方で

だが これが ワナか なにかだった ところで ウシナうものなど ノコっていない

と言った。

【ヨびゴエにコタえない】方でも

ヌケガラのような マイニチを オクりながら 
ずっと オナじことばかり カンがえる

あれはなんだったのか

ワタシの センタクは タダしかったのか

その コタえが デることは なさそうだった

という言葉で物語は終わる。

 

無価値な物の入手に奔走する男の存在もまた同様に無価値になっていった、彼の孤独で無駄だった20年の歳月を想います。

 

 

 

 

 

↓同作者様制作『コスモスの咲く島』の感想。