仕事が辛いのでSFに逃げる日々 〜好きなSCPの話とか〜

仕事出来ねえ、マジくそ辛たん。
ってな日々が続いているので、SFに逃げてます。
SFは種を淘汰しこそすれ、個を責めたりはしないからね。
一つの職場の人間関係に固執する矮小さを、言葉と設定の力で超えていきたい。

という訳で最近読んだSF系小話の話。

最後にして最初のアイドル【短篇版】

最後にして最初のアイドル【短篇版】

 

130円で読めていい文章ですか、これ? 

こんな創世の神話をたった130円で読めるんですか?価格破壊がすごい。
アイドルが概念飛び越えて万物の素となり、ゆえに私もまたアイドルとなる運命がこの書には記されている。

さあ、アイドルをはじめよう。
あなたはキラキラに輝いてる!

わたし、私は古月みかの意志を継ぐもの。
継ぐものだから、 そう、私は他者を夢中にさせ、共感させ、自己同一化させられる存在なのだ。
この万能感のプレゼントを、受け取れてよかった。

そんな流れで、精神汚染系のSCP財団の話を漁っていて休日が終わった。
個人的に気に入った話を3つ挙げておく。


SCP-2718 :その後に起こるのは(SCP-2718 - SCP財団

俺には理解できない。
俺が細かなかけらに分かれていくほど、俺は痛みを知覚できるようになっていった。
俺が腐り落ちて生のある神経がどうやっても判別できないくらいに小さなものになったとき、俺が覚えていた不快さの感覚はその形を変えた。
人間の言葉に例えられそうな、焼けるような、うずくような、壊れていくような、そういう感覚から、十分に言葉に表せそうもないくらいにもっとひどい感覚に変わったんだ。
俺を作る部分すべてが他の部分から気が狂わんばかりにひどく広がっていくんだ。
人間はその生涯で慢性的な痛みの感覚が度々無くなるって言うよな。
でもな、何年たっても、何ヶ月という時が過ぎても、何秒と時間がかかっても、その感覚は常に激しくなっていくばかりだった。
俺はそう断言できる。

人間は死んだあと、意識が肉体から離れることなく、分解されていく肉体の苦痛を延々と知覚し続けるという話。
この話をフィクションだと否定する材料は、この世のどこを探してもない。
逃れられない死の牢獄に、全員が等しく、あまりにも平等に向かっている事実に背筋が凍った。
この強張りが解ける日は、きっとこない。


・SCP-324-JP:私はあなただけを見つめる(SCP-324-JP - SCP財団

SCP-324-JPは花の付け根にあたる花柄から切り落とす、または燃やすなどして全体の80%を損傷させることで駆除することができ、駆除されたSCP-324-JPは切り落とした花、地面に残った部分も共に即座に褐色に変色、枯死しその異常性を失います。
SCP-324-JPを切断によって駆除された場合、駆除した人物は様々な年齢、性別の人間の悲鳴の幻聴が駆除したSCP-324-JPから聞こえたと主張します。
また、駆除したと同時に駆除者の周囲半径10m内のSCP-324-JPが花弁を駆除者に正対するように動きます。
SCP-324-JPを1体駆除するごとにこの範囲は10mずつ広がります。
この正対運動はSCP-324-JPが駆除者の範囲内にいる間常に続き、範囲外になったSCP-324-JPは正対運動をやめ静止します。
この正対運動の範囲の解除は24時間の時間経過のみです。

花言葉から着想を得たであろう、向日葵の話。
静寂に群れ立つグロテスクな花にも、黙祷の意を併せ持つ動きがある。
SCPの中で一番忘れたくない話を選ぶならこれかなあ。
理屈抜きですごく好み。

・SCP-818-JP:えらいねぇ(SCP-818-JP - SCP財団

██研究員: 一体どこから帰ってきたのですか?

(直後、SCP-818-JP-Aが不意に泣き出し始める。SCP-818-JP-Bがそれに寄り添い、SCP-818-JP-Aが落ち着くまでの約10分間会話が中断される。)

██研究員: 落ち着きましたか?インタビューを再開しても構わないでしょうか?

SCP-818-JP-A: 茶色黄色白い、狭い柔らかい部屋、ゴミ箱で、他にも沢山いた。

██研究員: はい?ああ、話の続きですね、どうぞ。

SCP-818-JP-B: 毎日毎日、意味のない歌をうたわされて、他の人達と無理やり仲良くするように言われて、私達の役目は終わったと嘘をいわれたわ、そんなことはあり得ないのに。

SCP-818-JP-A: 何度も同じところ歩いた。不味いもの食べた。熱いお湯かけられた。あいつらはいつも私達を見下していた。そして私達を褒めた。私達を褒めた。私達を褒め続けた。笑っていた。

SCP-818-JP-A: 褒めるのは私達であるべきだ。だから戻ってきた。

人を「えらいねぇ」と褒め続ける老夫婦の話。
老人ホームという名の現代の姥捨て山の闇と、「えらいねぇ」の言葉が連想させる桃色のコントラストが重苦しい。
「これから先起こるのは」が死の地獄なら、こちらはその境目の地獄だろうか。
生の果てにある地獄。