復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

ブリューゲルの名画をマインスイーパー×ピクロスで学ぶ『Proverbs』感想

steamにて『Proverbs』というマインスイーパー×ピクロスのようなパズルゲームをプレイしました。

プレイ時間は24時間でED数は1。

 

マインスイーパー×ピクロスって何?と思うかもしれないけど、遊び方は以下の一枚絵説明で事足りるくらいシンプル。

その簡単作業をひたすら繰り返し、54,000以上のマスを埋めて巨大な絵にしていくというのが今作。

まあどちらかというとマインスイーパーの方がメインで、印象としてはマインスイーパー×ジグソーパズルの方が近いかも。

ちまちまちまちまとマスを埋めて、正解の絵を掘り出していく作業が病みつき。

 

正解の絵っていうのは、ピーテル・ブリューゲルというベルギーの画家が1559年に発表した『ネーデルラントの諺』。

(引用:ネーデルラントの諺 | 世界の歴史まっぷ

ゲームをクリアした今となっては、この絵のことが愛しくて愛しくて仕方ないです。

 

このゲームを金曜の夜に買って日曜の夜にクリアし、それでプレイ時間24時間なんだから、私のハマりっぷりは相当なものでした。

内訳的には4時間、11時間、11時間くらいかな。

今年のゴールデンウィークに、牧場物語×ピクロスゲーで一日11時間ピクロスを解いていたことがあるんだけど、体感的にもそれぐらい。

朝ご飯→ゲーム→昼ご飯→ゲーム→夜ご飯→ゲーム→就寝サイクルが延々と続きそうだったので、3日で終わるボリュームで逆に助かったくらい。

でも今作の続編やDLCが来たらすぐさまやります!

 

ただ私が今作にここまでハマれたのは、『ネーデルラントの諺』が持つ魅力と、それをゲームに仕立て上げた制作陣の方向性がしっかり噛み合っていたから。

一見巨大な一枚のフィールドに見えるマスも細かく、それこそ300以上のエリアに分割されていて、そこを埋めるごとに彼が描いたことわざが分かる仕組みになっている。

なんかそれがめちゃくちゃ楽しかったんだよね。

特に笑ったことわざは以下の4つ。

絞首台で糞をする

どんな罰にも怯まない

「どんな罰にも怯まない」の方向性が馬鹿すぎるでしょ(笑)

ゲームを始めてから割と初期の方に埋めたエリアがこれで、綺麗な海&青空と一緒に出現したこのバカバカしさにめちゃくちゃ笑いました。

1ドットでちゃんと糞を描いているのも細かくて大好き。

 

『ネーデルラントの諺』では、こういう庶民的な行動や感情が思わせぶりなユーモアで意味深に描かれているのが好きなんですよね。

例えば「あるパンから別のパンに手が届かない」。

あるパンから別のパンに手が届かない

予算内で生活するのが難しい

推し活に喘ぐ現代女子?

ドット絵の方では顔を上げているけれど、個人的には下を向いて引っ張られている油絵の強欲さが好き。

マジでしょうもなくてどうしようもない本性が表れているね。

 

その上では職人がベルトを作っているんだけど、その出所もあるある。

他人の革から作られる一番広いベルト

他人のお金はすぐに使われる

身に覚えがありすぎるエピソードやね。

 

絵の右端で強欲張りが四苦八苦している一方、左側の家の屋根にはタルトが敷き詰められていたり。

屋根にタルトが敷き詰められている

非常に裕福である

↑聞いたこと無い(笑)

ある!?屋根にタルトが敷き詰められている家は裕福だなんて!

言わんとしていることはわかるけど、日本には絶対無い感覚で笑いました。

ベルギーの方ではあるんだろうか……フルーツじゃなくてチョコレートタルトの方ならありそう。

 

日本では一切分からないことわざが展開されている一方、日本でも言い伝えられているような、万国共通の事柄が描かれているのも今作の魅力。

こぼした粥をすべて拾い集めることはできない

一度行ったことは取り消せない

どんなに精緻に織られても、すべてが日の目を見る

隠し通すことはできない

上は「覆水盆に返らず」だし、下は「お天道様はお見通し」だよね。

どこの国でも似たようなことを人間は思い付くんだなあというところに、人のシンパシーを感じます。

 

以下、完成画像を載せているので一応ネタバレ注意。

まあブリューゲルの絵そのものが一番のネタバレとはいえども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

24時間もの時を費やして完成させた絵を見た時、『ネーデルラントの諺』描かれている膨大な場面の大半の意味がぱっと理解出来るようになっていて、そこに一番感動しました。

分かる、全部分かるよ……!

初めて見た時は「ふーん、何か色々描かれてるね。これ全部ことわざの場面なの?へー、おもろ」ぐらいにしか思わなかったのに、今は指さしたところにあるものと意味を説明できる。

それがこんなにも面白いのは、やっぱり学習という行為そのものにある楽しさだと思う。

 

気にも留めなかったものに意味があったこと、その意味を説明できるということ。

知ることの楽しみを「ゲーム体験」という形で伝えてくれた今作に感謝です。

『ネーデルラントの諺』を文章と絵で解説している本やWEBページは数多くてあって、それを読むだけなら30分もかからないはず。

でも20時間以上一枚の絵と向き合って、ひたすらぽちぽちし続けたからこそ生まれる愛があるのだと、今作のクリア率を100%にした瞬間に思いました。

自分の手で解いたからこその達成感と共に。

 

あとBGMもすっごく良かった!

宮殿音楽のような優美なメロディーから、ちょっと不穏な田舎音楽みたいなアレンジまで。

全体クリア率が25%を超えるごとに、枠外に音楽家のキャラクター達が増えてくれるのも嬉しかったです。

最初はマンドリンの青年で、最後にハープのお姉さん。

25%ごとの達成を目指すモチベーションにもなるし、何よりこの3人が協力して今、流れている音楽を奏でてくれているんだという手触りににっこり。

 

 

↓追記:徳島県にある大塚国際美術館まで、今作の元ネタ絵を観に行った話