復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

生贄管理+巨女とのデートシミュADV『SAEKO: Giantess Dating Sim』感想

steamにて『SAEKO: Giantess Dating Sim』をプレイしました。

EDは3つで、全実績解除までのプレイ時間は6時間。

 

主人公であるリンはとある雨夜、街を歩いている最中に突如身体が小さくなり、女子大学生:冴子に誘拐される。

彼女には人間を小人にする能力があって、連れてきた人間を学習机の引き出しで飼育し、毎夜その中から1人食べる性癖がある。

主人公は誰を冴子に食糧として差し出すかを決める管理人となり、同時に毎晩彼女と語らう役目をおう。

7日後、冴子と主人公が迎える結末とは、みたいなお話。

 

今作の魅力はとにもかくにもドット絵で描かれた冴子のビジュアル!

日を重ねるごとに彼女が連れて行ってくれる場所も増えていって、ある日はイヤリングを買いにアクセサリー屋へ

ある日は夜風に当たりに海へ連れ出してくれる。

そこで向けられる冴子の笑みや憂いにやられっぱなしでした。

もちろん自室内でこちらを睥睨する瞳にも。

 

自室内での語らいでは彼女の顔が見えず、代わりに巨大な手がよく動く。

その赤いマニキュアが塗られた綺麗な指の動きがやけに異質で怖くて大好き。

彼女の5本の指が順に机を叩き、自分に視線が向く。ただそれだけのことに怯えてしまうね。

 

引き出し内で一緒に飼われていた生贄候補メンバーも個性というかアクが強かったな~。

私が一番好きなのはパンク・ロック女のキヌかな。

彼女が、人を喰うことで愉しむ冴子の本性を「美しく生まれたがゆえに背負わされる苦しみがある」と情を寄せていたのが意外だったので。

でも、あのデカ女みたいに…
あんまりにも綺麗すぎて、あんまりにも人形みたいだとしたら。

普設の生活の中で、ちゃちな理想とか純粋さとかを、一方的に押し付けられてきたんだとしたら。

とんでもない衝動を裏側に溜め込んでたって、ちっとも不思じゃないような気がしないか?

あのデカ女がああなった理由も、あたしには分かるような気がするっていう、ただ、それだけ…

贄に捧げられる時のパンクロッカー精神もまた格好よし。

伝説になるためには、誰かに覚えててもらわないといけねえ。

なあリン、あたしの言ってる意味、分かるだろ?
ここじゃ、死体や基碑は残らねえ。記憶だけが頼りだ。

だから…どんな形でも良い。お前は少しでも長く生きて…

少しでも長く、あたしのことを覚えててくれ。分かったか?…小僧

 

個人的に意外だったのが、冴子との会話シミュレーションよりも引き出し内生贄管理の方がゲーム内の比重が大きいということ。

ED分岐もどの順番で誰を捧げたか、最後まで誰を捧げなかったかでする。

引き出しの中に設置されているアイテム説明もその生存状況で変わるのが細かくて感心。

例えば「コマ」の説明欄には、タキというキャラクターが生存中は彼との会話が添えられる。

木製のシンプルなコマ。
倒れるまで、周じ場所を回り続ける。

リン:(回っているだけで楽しいの?)
タキ:…回っているだけだから、楽しいの。

でも彼が死亡した後は、主人公であるリン1人だけの独白に変わる。

リン:寂しい趣味だなって思ってたけど…今なら、少し気持ちが分かるかも。

こういう風にアイテムのコメントで演出される無情さ、寂しさに私は弱いんです。

 

という訳で、私は今作のガラケー演出も大好き。

冴子との語らいが無事に終わった後、彼女は寝る前に自分の携帯をちょっとだけ触らせてくれる。

めっちゃ平成世代や……。

メニュー画面からは魔法のjらんどに接続してケータイ小説が読めたり

棒人間を操作して障害物を避けて上へ上がっていく「スケ棒 THE FINAL」なるフィーチャーフォンゲームが出来たり。

(↑ちなみにこの棒人間ゲームは地上から444cmまで上がるとクリア。不吉やね~)

ストーリーを進めると実績代わりのアイテムも机上に収集されるんだけど、それもまた2000年発売デザインの写ルンですと平成全開。

背景の本棚にしまってあるのが数学Ⅱ黄色チャートっていうところからも彼女の学力の高さが読み取れるね。

 

ただケータイ小説やゲームへのアクセスは許可する冴子は、メールの送信BOXと発信履歴の閲覧だけは頑なに許可してくれない。

主人公がそこを覗こうとすると、すかさず彼女の手が伸びてきて電源ボタンを押す。

ピッと無機質に鳴るボタンの音、暗くなった液晶に反射する冴子の瞳、主人公を潰すように閉じられる二つ折りのガラケー。

全てが急に深夜の雰囲気で背筋が凍ります。

まあこの彼女が抱えていた秘密も終盤には全て明かされるんだけどね。

 

以下、ストーリー終盤とEDのネタバレ感想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

6日目の夜の海辺で冴子が見せた横顔と、黒髪の揺らぎが私は忘れられないです。

…仕方ないでしょ。心の奥に、もう1人の自分がいるの。

 

その子は鈍感で、普段はめったに動かない。
心の中のその子は、ある感情には強く反応する。
誰かの悲鳴、頬を伝う涙。

初めて誰かを縮めたとき、私はやっと満たされた。
これだ、ってすぐに分かったの。

 

いけないことだって、誰かを傷つけてるって、そんなのとっくに分かってる。

でもね…自分の心のなかに、制御できない何かがあって…

誰かを苦しめたり、傷つけたりしないと、その何かは永遠に満たされないの。

自分の心が少し満たされる、ただそれだけのために人を攫って喰う。

その告白は理不尽でありつつ、それを許容させてしまうぐらいに彼女の黒髪が美しく、ふくよかに波打つものだから……。

ここでの彼女の横顔は、無邪気で残酷な女子大学生というよりも妙齢の魔女のようにも映ります。

平凡な悩みを非凡なる力で解消できてしまった己の歪さを、闇の向こうに見つめている。

 

7日目に迎える結末は自殺ED、贖罪ED、虐殺EDの3つ。

個人的にアイテムでの演出なら虐殺ED、ラストのホラー展開なら自殺EDを推します。

 

まず虐殺EDについて。

虐殺EDに入ると【貝殻】が【壊れた貝殻】になって、【手鏡】も割れるんだよね。

【貝殻】

海辺で拾った巻き貝の殻。耳を近づけると波の音がする。

"この音って、自分の呼吸の反響なの"

【壊れた貝殻】

海辺で壊した巻き貝の殻。かつては波の音が聞こえていた。

”私、もう迷わないから”

 

【手鏡】

自分を見つめるための手鏡。今は、冴子の身体だけが映っている。

"そう、これが私"

【手鏡】

自分を見つめるための手鏡。砕けた表面には、何も映らない。

”他人の目なんて、もうどうだっていいもの”

と同時に、あれだけ冴子が見せたがらなかったメールの受信BOXと発信履歴が見れるようになる。

そのどちらもが「ありません」で終わる、空っぽのフォルダを。

この簡素な一文を読んだ時に、彼女が抱えていた孤独の手触りがあまりにもはっきりと感じ取れてびっくりしました。

受信履歴がありませんだったらただの可哀想な人だけど、発信履歴が一つもないというのもそれはそれで哀れというか。

自分を好意的に迎え入れてくれる人達に対して迎合か拒絶か、そのどちらも表明する意欲が持てない自身の空虚に、女子大学生として苦しむのは分かる気がする。

 

虐殺EDでの海で語った「小人さんと遊ぶの、本当に楽しかったから」って本当に、本当にそれだけが彼女にとっての楽しみだったんだなあ。

そしてその幸せを守り抜くと決めた時に、海辺で拾った貝殻は壊れて、手鏡も割れた。

普通の幸せじゃ満たされない。ずっと、1人で取り残されてた。


ねえ、リン。
一緒に、おうちに帰りましょう。

私、この幸せを絶対に守り抜くわ。

冴子の耳に揺れるイヤリング、あれは3日目の夜にプレイヤーが選んであげたものなんですよ……。

 

 

次に自殺EDについて。

このEDは連続誘拐犯として警察にマークされ、部屋に踏み込まれそうになった冴子が引き出しの中の小人達を元の大きさに戻して解放するのと同時に、自身が小さくなってその処罰を主人公に託すというもの。

↑この握り潰しシーンをわざわざご丁寧に、プレイヤーの操作でやらせてくれるのが嫌らしいね〜。

ここで初めて二頭身にデフォルメされていない、人間を縮小した等身での小人が描かれるのも妙な迫力があって良き。

 

最後、冴子の自殺を幇助し自由を得た主人公が、自室の机の引き出しを開ける場面で物語の幕は閉じる。

いや~~、気色悪くて最高ですわ!

最高、最高!こんなんめっちゃ好きに決まってる!

 

結局のところ、主人公は管理人として人の生死を左右する快感を忘れられず、自分であの引き出しの中を再現している。

このさ~~~、首をちょん切られた真っ黒まん丸おめめの人形はまあ常軌を逸しているようで怖いんだけど、その素材がピーナッツの殻っていうところがしょぼくてしょうもなくて、逆にもう大好き。

私は終始主人公であるリンのことを「きっしょい男やな~」と思っていたんで(そういう風にゲーム側も描いてるよね?)最後の最後を彼の凡庸でシンプルなホラーで飾ってくれて大満足です。