あうぐさん制作『コスモスの咲く島』という短編フリゲをプレイしました。

プレイ時間は15~20分程度でED数は1。
「外に出るな」という書き置きが残された部屋で目覚めた主人公が

その部屋から脱出し、赤いコスモスが咲く島を探索するというADV。
まずゲームを起動した瞬間に目を引くのが、ゲームボーイの画面を彷彿とさせるスクエア型のプレイ画面。
また探索マップでは思い切りデフォルメしたドット絵なのに、アイテムや島で出会う人達の画像は異様にリアル。

このギャップに背筋が寒くなります。
クリアした今では、この描写でやりたい演出がある、だから取り入れていたんだなと分かるから余計に。
ゲームの紹介欄に「一部、ホラー系の演出を含みます。(脅かしはありません)」とあった通り、このゲームはホラーゲーム。
クリア時間が15分とは思えないほど濃密なホラーで、個人的には割としっかり、かなり怖かった。
確かに脅かしはなかったけど、脅かし要素をプレイヤーの手で踏ませる演出はあったし、そこで表示されるものはもう脅かしだろ!ってつっこみたくなるレベルのものは出てくる。
生理的嫌悪感を想起させるいわゆる腫瘍系グロタイプのホラゲなので、苦手な人はご注意を。
私はこの描写がドット絵だったからスクショ画像も見返せられるけど、それ以外だったらたぶん無理。
でも作者がやりたかったこと、描きたかったことを伝えるために取られた表現だと理解も出来ているので、ホラゲーが苦手な私でもこうしてクリア出来ました。
繰り返しになるけど、この話の始めから終わりまでをわずか15分でプレイヤーに辿らせた演出力の高さは凄まじいなと思います。
以下、ネタバレ感想。
くどいようだけど結構ショッキングな画像もあるので、閲覧は自己責任で。
ネタバレ感想
探索を続けていくうちに判明するのが、この島の名前と存在理由。

この島の位置には”検疫島 Q-13D”と書いてある
戦線にいる複数の兵士が未知の感染症、もしくは敵の化学兵器、果てはそのどちらでもない何かを発症し、その隔離措置を取るための場所が今作の舞台である検疫島Q-13D。
なんかもうQ-13Dという識別番号すら不吉だな。
9は日本、13は西洋の忌み数字で、DはDeath(死)の頭文字だから。
そんで、その症状がまたエグいんですよ。
皮膚に緑斑が現れてからしばらく経過すると、体表に赤色の腫瘍が発生し、増加していく
奇しくもコスモスの花に似た形になると、粉状の物質を形成し、飛散させる
この物質に曝露した者には同様の症状が表れる
緑斑→腫瘍→破裂、この3段階をきっちり島の人物画で描写してきたところが衝撃的でした。

イ゛ッッ!!??

ヴッッ!!??

オヨヨヨヨヨ……。
私がさっき言った「腫瘍系グロ」の意味が分かるでしょ?
この人物グラは該当人物に話しかけると表示されるんだけど、エンター押した瞬間にこれが表示されるのはやっぱり脅かしに入るって!
「こんな風になった人を見たくないから話しかけたくない」と「話しかけないとゲームが進まない」の葛藤を行ったりきたり。
脅かし要素をプレイヤーの手で踏ませる演出がいかに効果的かを思い知らされましたよ。
また最後まで症状が進行し、咲いた検疫官の言葉が哀しい。
検疫官から本部へ
火葬を許可してください
教えに反するのは分かっていますどうか火葬を許可してください
火葬が禁止されてることから、作中で信仰されている宗教のベースはキリスト教だと思う。
キリスト教では最後の審判後に復活する肉体がないと復活して天国にいけないため、遺体を灰にする火葬はタブー視されているから。
でも今作における火葬の禁止って、ホラゲの演出としては他の意味もあるはずだよね。
例えば教会でコスモスの壁を調べると表示される聖書めいた言葉。

我ら、大地より生まれ、大地に還る
神の根に抱かれ、秩序の中で眠る
再び生まれる、そのときまで
ここから人間の肉=土だと解釈することも出来る。
神の胞子を植え付けられて、発芽、開花するための養分。
土色の人間から生えるものが緑から赤に変化するのは植物の成長になぞらえているからだろうし、寄生植物にとっては土が火葬されないほうが都合いいはず。
病状が進行すると、意識が乗っ取られると判明するシーンの演出も上手かった!

身体が勝手に動く
なにかに操られているみたいに意思に反して、脚は水を探してさまよい、腕は見つけた水を口に運ぶ
今、必死に抗いながら、これを書いているが、こんなことができるのも最後かもしれないこれが見つかることがあったら、母と弟に愛していると伝えて下さい
このシーンって主人公の操作権がプレイヤーではなくゲームに移る、いわゆるムービーシーンなんだよね。
今まで一言も喋らないために何を考えているか一切分からなかった主人公の思考が、プレイヤーからの操作を受け付けなくなって、病に操られ始めたここでようやく分かる。
主人公はプレイヤーの操作入力に常に従うというゲームの鉄則を、ゲーム側から裏切ってくる演出もまた一種のホラゲ演出として王道かな。
一番最初、「外にでるな」というメモを残して部屋に閉じ込めた人物が主人公自身であることもここで察しが付く。
緑斑のおっさんが「君は……伍長か」と言ってきたということは、彼ひいては島にいる生存者全員と主人公は知り合いということ。
だから部屋から出て一番最初に話しかけた男が「海の向こうはどうなったんだろう」という独り言めいたことを言うんだな。
自分と同じ検疫中の軍人だと分かっているなら挨拶も驚きも不要だよね。
ただその「外に出るな」という書きつけを守れなくなるぐらい症状は進行している。
そもそも「……喉が乾いた」という台詞で今作は始まるし。
感染者が水を求めて彷徨うのは、病気が「体内の水分量が大きな影響を及ぼす」「水分量が多いほど進行は早い」から。
咲いた検疫官の言葉を聞いた後、その建物から出た時にはもう島の天気は変わってる。

あ、雨……(絶句)
天から降る水はこの物語が終盤にさしかかったことを明確に告げていて、ここが一番今作でぐっときたポイントだったかも。
ここから主人公が取れる行動は実質一つだけだったし、プレイヤーの予想どおりに物語は進んで終わる。
海を見つめる男が言った、最期の言葉を思い出します。

終わってしまえば、あっという間だった
そうだね。限られた時間というのは得てして全て、そういうものなんだろうな。