2024年10月にハマっていた7曲の感想文でアーティストの五十音順にするとこんな感じ。
・amazarashi『アンチノミー』
・omi feat.重音テト+小春六花+葛駄夜音『イズ』
・King Gnu『SPECIALZ (King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME)』
・GEMN『ファタール』
・シャノン『恐竜電力の街』
・鷺巣詩郎 feat. Hazel Fernandes『Number One - Bankai』
・ヨルシカ『アポリア』
ようやく季節が秋冬めいてきてテンション上がります。夏が長すぎ!
機械仕掛けの涙
それに震えるこの心は 誰のもの
2023年冬アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』ED1。
先月のマイベストミュージック感想を書いた時に、「そういえば1期EDの方書いてなかった!」と思い出したので今更ながら。
やっぱりボーカル:秋田ひろむの声って歌声自体が特別すぎるよねえ。
俗に言う綺麗事も恨み言も彼の歌声でなら全てが響く、そういう説得力がある唯一無二の声。
ラスサビ「涙声 離せない あなたの手 あなたの手 まだ温いんだ」とか問答無用で涙が出るもん。
それでいて作詞・作曲センスもあるんだからもう全部を持ってるでしょ。
彼の言葉と声を支える出羽良彰の編曲も流石過ぎる。
個人的にはサビ後「壊れた夜は」のコーラスがお気に入り。
歌詞表記だと「壊れた夜は」と書かれており、本来なら「夜”わ”」と歌われるべきだけど実際は「よるは」と歌っている。
ということはやっぱり主人公達2人の機体名「ヨルハ」を壊れたと指しているんだと思うよ。
その文字と発音の齟齬というか、文章では欺き真実は口で謳っているところにぐっとくきました。
2期OP&EDを観た後だと、より1期の映像達も染みるな。
ED1では2Bが9Sを追うのと対象的に、2期OPでは9Sが2Bを追う。
別人扱いするには似すぎている彼らの容姿は近親相姦的で、その禁忌な雰囲気がニーアオートマタの味にもなってる。
鮮やかなバイアスが君に既読された
存在は記憶の果てまだ僕の目に映る世界から 超えてきた光のようだ
シューゲイザー感バリバリの激しい電子ドラムから、ふっと有機的で静かなピアノのメロディーにスイッチングし、なおかつラスサビにかけて一気に盛り上げて終わってくれるところが大好きな曲。
やっぱりラストがメロディアスに盛り上がるとテンション上がるよ!
タイトル『イズ』=is が何を指しているかといったら、やっぱりそれは「存在」なんだと思います。
be動詞の is は「存在する」という意味を表すことができます。
「ある」という意味、つまり「人やモノの所在」を表します。
混沌とした波に揺られ呑まれ、そしてそこから立ち上がるもの。
理路整然とした成り立ちでなくともただそこに突っ立っているものが存在であり、命であり、私なのだと主張するような今曲のめくるめく激しさと静けさにやられました。
走り出したらアンコントロール
”U R MY SPECIAL”
原曲は2023年9月のマイベストミュージックで書いていて、今回のは2024年1月27日、28日に東京ドームで行われた「THE GREATEST UNKNOWN」のライブ盤。
ライブの始まりが、King Gnuの現・代表曲と言える『SPECIALZ』で始まるのは超絶テンション上がるよね~。
1番「眩暈がする程”U R MY SPECIAL”」や「冷静にはならないで」とフレーズ終わりのメロディの変化が楽しい。
ラストCメロのツインボーカル:常田大希と井口理の色の重なり合いも深くて素敵。
僕を見ていてね、最愛のファタール!
2024年夏アニメ『推しの子』OP2。
やっぱり中島健人プロデュースの映像センスが信用出来るんですよね。
青と赤、ルビーとアクアの照明の下で教会の祭壇を背に、バックダンサーは白一色、メインは黒一色で踊るのが心底格好いいと思ってるんだろうな。
私も最高に格好いいと思ってます!
今曲の作詞曲がキタニタツヤなのは知っていましたが、編曲:Gigaなのは初耳。
確かに1番サビ後のエキゾチックなEDMにはGigaらしさがあるね。
あと中島健人とGEMN(読み方はジェム)を組んでからの、キタニタツヤのダンススキル上達がすごすぎる。
アイドルであるケンティーはともかく彼に踊る人のイメージは全く無かったので、とにかく練習したんだろうなあ。
あとアクア目線であろう曲の歌詞も個人的には結構意外でした。
アクアって星野アイのことはもちろん愛していただろうけど、こんなにもアイだけを神聖視して偏愛していたイメージが無かったので。
でも「全てを孤独から救う眩しい光 僕にだけ落ちる影はあなたのせい?」「致命的な欠落をくれたね 身勝手な巨星、狂わされた生」あたりの大仰な物言いは好き!
恐竜は死んで贄となり
やがて 蘇るの
す~~ごいものを観せてもらいました。
僅か4分のミュージックビデオだけど、長編アニメーション映画を一本観終わったみたいな満足感がある。
もしこの4分間を映画館で2000円払って観ていたとしても私は絶賛していたはず。
好きなカットはいくつもあって、まずは1番サビ、実写のコンセントを映した後にその奥から恐竜がこちらを見ているとこ。


コンセントの全体像が直前に映ることによって、この黒枠がコンセントの穴の部分なのだと分かるし、その奥にいるもの=電気なのも伝わる。
「石油による火力発電」を恐竜に置き換えている今作のコンセプトを端的に表現しているスマートさが素晴らしいです。
ラスサビ前「恐竜は死んで贄となり やがて 蘇るの」で、ブラウン管のテレビを映してからすぐ隣の窓にカメラがパンされ、テレビの中と全く同じ光景がすぐ外にあるのを映すのは特撮っぽい怖がらせ方。


テレビに映る恐竜の首、それがテレビ横のコンセントから来ているもののように見える配置も上手いよね。
そのテレビが「日高原発、蒲生田原発 核燃料の緊急移送を勧告」と報じているのを読み取った時も心底びっくりしました。
だってこの2つ、どちらも建設計画はされたものの、実際は計画中止になった原発なので……。

日高原子力発電所(ひだかげんしりょくはつでんしょ)は、和歌山県日高郡日高町に関西電力により計画されていた原子力発電所である。2005年に、国による開発促進重要地点の指定が解除され、計画は中止となった。
蒲生田原子力発電所(がもうだげんしりょくはつでんしょ)は、四国電力が蒲生田岬のある徳島県阿南市椿町尻杭に建設を計画していた原子力発電所である。
日高、蒲生田原発と同じ地図に映ってる「海南発電所」も1970年に運転が開始され、そして2019年に廃止された発電所。
海南発電所(かいなんはつでんしょ)は、和歌山県海南市船尾字中浜260-96にあった関西電力の石油火力発電所。
関西の電力需要が減少傾向にある中、燃料費などがかさみ高コストのため維持が難しいと判断したため、2019年4月1日に4号機を休止、発電所自体が廃止された。
実際はもう動いてないはずの発電所がまだ動いていて、建てられなかった原子力発電所が建ってる。
あの世界はいわゆるパラレルワールド、この世界よりより大規模な電力供給が行われている日本なのだとさりげなく示すやり方が上手い。
ちなみに2番サビ前で映る「伊丹変電所」は実際にあるしまだ稼働してる。

↑これが実際にあるのに、↓これは無いなんて普通思わないよね。

「嘘を上手につくコツは嘘の中に少しだけ本当のことを混ぜる」っていうのは本当なんだなあ。
1番サビ、地図と送電線を交互に指差すカットも冒険感があって好きです。


これによって小学生であろう少年の視線の上がり下がりが見て取れるのがいいな。
手元の地図をなぞって、頭上の送電線を辿る。
地形図を引っ張り出してくることなんて、むしろ小学生時代が最初で最後の人間の方が多いんじゃない?
夏休みの自由研究の最中のように、好奇心で駆ける横顔にイノセンスを感じました。
勉強が楽しかった頃、恐竜を信じていた頃、今では信じられない距離を自転車で漕いでいった頃。
かつての私にもあって、そして今はもう消えた子どもという存在の可能性が目映い。
「送電塔を追って 追って 追って 60Hzを刻む心臓を見にゆこう」という歌詞がある通り、やっぱりこれは関西圏の話なんだろうな。
日本の電源周波数は、およそ、富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)を境に東側は50回(50Hz=ヘルツ)、西側が60回(60Hz=ヘルツ)となっています。
アニメーションも上手いけど、今曲は歌詞もすごい!
「恐竜は死んで泥となり 燃えさかる水となる」っていうのは、もろに石油のことだよね。
「お金って死骸みたいだな 腐りやすい僕らの抜け殻だね」というセリフは、「腐りやすい僕らの抜け殻」=化石燃料を莫大な金で売買している人間への皮肉みたい。
でも私が今曲で一番、一番好きなのはラストの歌詞。
僕の死骸を焼いて この街は灯りを灯してる
僕の死骸で買った 缶ジュースで喉潤してるまあ、あながち嘘じゃないけど ちょっと大袈裟だったよね
↑ここ最高じゃない!??
「まあ、あながち嘘じゃないけど ちょっと大袈裟だったよね」の一文が私の心臓にぶっ刺さって抜けないままです。
映像面であそこまでの大惨事を描いておいて、最後の最後に軽くこう言うのがまたね。
死体が人間に利用され続けてきた恨み辛みもあるっちゃあるけど、でもすでに化石となったものの悪戯心からくるからかいだと明かされて、「な~~んだ」って笑えるようになって。
そうやって気の抜ける感じがすごく、すごく寂しくて切なくて、取り返しがつかないもののような気がするんです。
シリアスなままこのMVが終わってくれても私はそれはそれで大好きだっただろうけど、でもこう終わってくれたからより私の心に刺さってる。
茶化して笑い話にして終わることで、深くなる味わいもあるものなんだなと初めて知った気持ち。
MVのラストカットもこれまた最高!

少年に腕枕されて眠る恐竜も少年と同じように、電化製品の風を受けて心地よさそうに目を細めている。
電力の供給、そして人間の発明の恩恵をゆったりと享受するその姿に、彼ら二人が確かな友達であったことを、最後に再確認できて良き。
Now you feel like number one
アニメ『BLEACH』20周年記念PV。
相変わらずBLEACHはファン以上に制作陣側の熱量が高くて素晴らしいなと思います。
黒崎一護をとにかく格好良く誰よりも格好良く、主人公として描くという意識が徹底されていて、そこに泣けてしまう。
アニメ制作陣側の方が原作を愛して物語を愛してキャラクターを愛してくれていることが伝わってくること、それが一番ファンとしては嬉しいものなんだよね。
特に尸魂界編での一護初卍解時のカット、その色彩には「おお~!」となりました。

このシーンは原作で背景が青空と指定されている以上、旧作アニメでは他の色合いにしようが無かったんだよね。

それはきっと今から尸魂界編のリメイクを作っても一緒で。
今まで青空のど真ん中で戦ってたのに、卍解したカットだけあんな朝焼けのような夕焼けのようなエモい色合いには出来ないでしょ。
でもPVという画面の整合性を取らなくていい尺でなら出来る。
卍解時の空の色を変えたのはラストカットでの青空を際立たせるためもあるだろうけど、でも新たな色であのシーンを描いてくれたのは感動。
令和のBLEACHは作画はもちろん、撮影処理が異様にリッチなのが良いよねえ。
原曲も旧アニメBGM『Number One』に「Bankai」と名を付けて新アレンジしてくれたところにテンション上がるな。
千年血戦篇1話アバンでも流れた時は、ものすごく特徴的な原曲出だし「ホウウォウウォウオォ~↑↑」が無い&編曲がすごくスタイリッシュになってたから一瞬分からなかったけど!
当時は歌詞の事なんて一切気にしていなかったので、20年経った今、ようやく今曲が何を歌っていたのかを知れて感慨深いです。
白い魚の群れにあなたは見惚れている
2024年秋アニメ『チ。-地球の運動について-』ED。
ABメロまではピアノとドラムの歌声、たった3種類の音だけなのに、サビでは一気に他の楽器も入って空気が膨らむ。
その膨張が気球の離陸のようで毎回新鮮に感動しちゃうな。
サビで入るマンドリンの弦の音。
こぼれ落ちる粒のように繰り返されるその音は、まるで「波打つ窓の光の束」「貴方の指は春の木漏れ日」、そして「白い魚の群れ」のようにきらめく。
ヨルシカというアーティストが描き出すその繊細な輝きに、今はただ見惚れるばかりです。

