復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

【蝶/聲/銀猫 etc.】天野月子の個人的お気に入り曲【6曲】

しばらく前から自分の通勤電車がボックスタイプからロングシートタイプに代わり、その影響ですっかり電車に酔いやすくなっています。

行きはまだ大丈夫なんだけど、帰りなんて座ってスマホ5分見たらもう気持ち悪いくらい。

で、電車内で酔った時に爆音で聞いていると楽になるのが天野月子(現:天野月)の曲なんです。

 

この女性シンガーソングライターは、テクモ(現:コーエーテクモ)産ジャパニーズホラーゲーム『零 zero』シリーズの主題歌を担当したことで有名な人。

私にとって彼女の曲は身体的不調に速攻で効く鎮痛剤みたいなもの。

彼女の激しい歌声とロックな曲で和らぐ痛みがあって、私はそれに随分と助けられてる。

というわけで以下、私にとっては体調不良にかなり効く天野月子のお気に入り曲6選。

 

先に言っておくと『』『』『銀猫』『菩提樹』『箱庭~ミニチュアガーデン~』『人形』の6曲です。

 

 

蝶

  • 天野月子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

つぎはぎの幸せを寄せ集め蒔きながら
君の強さに押し潰されてた

なんだかんだで『蝶』が一番効きます……。

零シリーズ第2作目『零 ー紅い蝶ー』主題歌で、零シリーズの中でもトップクラスの人気を誇る曲。

ストーリーと曲の人気は次に挙げる3作目の方が強い印象があるけど、でもやっぱり私は『蝶』派です!


イントロの鐘と小鼓の音は閉鎖的な村とそこで始まる儀式の空気を立ち上げ、そこに弦の音がなだれ込むことによって物語の幕は落とされる。

ゲームの舞台そのものに直接迷い込んだような、空間の広げ方にはいつも息を呑みます。


地下に潜り穴を掘り続けた どこに続く穴かは知らずに 土に濡れたスコープを片手に 君の腕を探していた」で始まる歌詞は凄惨でありつつ、天野月子のあどけない歌声が「わたし」と「君」の幼さを象どる。

で、その歌声がサビで一気に激しく、「焼けつき 焼けつき 剥がれない掌の跡」と破滅を歌い上げるところがすっっごく好き。

もちろんこのフレーズは零シリーズ特有の凄惨な儀式、今作で言う「紅贄の儀式」のことを言ってる。

紅贄の儀式

双子の姉(兄)が妹(弟)の首を絞めて殺した時にひとつに戻り、その時に生じる力で虚を鎮めるというもの。

成功した場合、姉(兄)が妹(弟)を殺した時についた両手の痕は、蝶になって村の周りを飛び、この蝶が儀式の成功を判断するものとなる。

引用:紅贄の儀式 (あかにえのぎしき)とは

いくらホラーゲームの主題歌と言えど、絞殺を直接的な歌詞にして歌うって相当な覚悟がいることのはず。

その禁忌を真正面からやってのけたからこそ、彼女は次作以降も零シリーズ主題歌を担当していくようになったんだと思います。

 

サビが「上手に羽ばたく私を見つけて」というフレーズで終わる通り、この曲は今作の主人公である天倉澪の双子の姉、天倉繭の視点で姉を想った曲なんだと思う。

そもそも2番Aメロ「繭に籠もり描いた永遠は どこに芽吹き花開くのだろう」で繭の名前も出てくるしね。


私は女の子が女の子を想う物語に弱いし、それが血の繋がった実の、双子の妹に向ける感情なら尚更。

君の強さに押し潰されてた」「手探りで重ね合い 縺れては 君の在処になれると信じた」の過去進行形が切ない。

ずっと、ずっと一緒にいたかっただけなのにね……。


妹への感情を焚べて燃え盛り、そして消えゆく少女の命は、私の中に燻る痛みにまで飛び火しそして浄化してくれる。

イントロと同じように終わるアウトロは、まるで何事も無かったかのように漂う生温い風のよう。

そこまで含めて私にとっての、リラクゼーションになる一曲だなと思っています。

 

 

 

聲

  • 天野月子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

蝕んでいく 抜け落ちていく
私を塞ぐピアスが足りない

零シリーズ第3作目『零 ー刺青の聲ー』主題歌。

『蝶』の因習村的音とは打って変わって、月光のような、水面のようなピアノの静かな和音から始まる曲。

でもそこにストリングスが絡め落ちるように入ってくると零シリーズの曲だなあと思うね。

天野月子の曲全般に言えることだけど、編曲:戸倉弘智の仕事が良すぎ!


曲の構成や盛り上げ方自体は『蝶』と大体一緒なので、『蝶』が好きな人は『聲』が好きだし逆もそう。

ただその上でどちらを取るのかは、紅が好きか青が好きかの違いかな。

もしくはラスサビ後にCメロで締めるのを気に入るかどうかとか。


個人的に今曲の醍醐味はラスサビ後のCメロ!

蝕んでいく 記憶の欠片 わたしを塞ぐピアスが足りない」では低めにかかっていたコーラスのエフェクトが、次の「蝕んでいく 抜け落ちていく わたしを塞ぐピアスが足りない」では薄まっているのが、彼女が夢から覚めていく様を表していて切ない。

あなたの聲が雑踏に消える」が「あなたの聲が雑踏になる」で終わるのも良い!

”あなたの聲が雑踏に消える”と”あなたの聲が雑踏になる”ではやっぱり意味しているものが全然違うよ。

 

歌詞もゲーム本編の物語をなぞりつつ、独自に人魚姫要素も入れてる。

たとえば海の底で あなたが生きてるのなら わたしは二本の足を切って 魚になろう

たとえばこの言葉が あなたに届くのならば わたしの声帯を取り上げて 捨ててもいい

自身の足を捧げて声を捨ててまでわたしが求めたあなたは、他の誰かの幾千の足音となって泡のように消える。

その物語の帰結も、やり切れなくて美しいです。

 

 

 

銀猫

銀猫

  • 天野月子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

逸らさず見ていてよ 私の写真が灰になるまで
喉が焼けて掠れるまで シャッター切って死なせて

↑これで『零』シリーズ関連曲じゃないってマジ!?

シャッター切って死なせて」とか零のためにあるフレーズとしか思えないよ、「過去と今をゼロに戻し わたしをわたしで葬る」とも言ってるし……。

たださっき挙げた2曲と比べると、ベースとエレキがメインでストリングスは入ってない。

今曲を聞くと、天野月子ってやっぱりロック系統の人なんだなあって思うね。

 

歌詞だと「すべて燃やそう あなたの頬を照らせるように」からの「あなたを温めて 埃に塗れた銀色の猫」が一番好き。

『銀猫』という単語には「江戸時代に銀二朱で買えた安い売春婦」という意味もあるそうだけど、個人的に今曲の銀猫はその名の通り、単なる銀製の猫の置物だと思ってます。

自身を燃やして作り出した光はあなたに届くように、でもその熱があなたを直接焦がすことはないように。

わざわざ置物を経由させる温もりがいじらしい。

 

自分の肉体へは狂気的な行動を取るけど、あなたの愛し方は最初から最後までまともなところが良いです。

まともな女をここまで破滅させるに至るまでが恋という感じもするし。

 

 

 

菩提樹

菩提樹

  • 天野月子
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

夢の先はもっと過酷で あなたの胸を貫く
私はここにいる 永くあなたの傍らに

出だしのサビから一気に最高潮まで持っていく構成が見事。

エレキもストリングスもドラムも、全ての音が渾然一体となったその中に一際ボーカルの声だけが輝く。

歌詞だけ見れば聖母のようなバラードにも出来たはずなんだけど、どこか悲壮的で心中のような曲調になるところに彼女の作家性を感じます。

どうかあなたが壊れてしまうのならば どうかこの体を燃やしてほしい そしてまた灰となってあなたを包み込む」の献身は『銀猫』と被るところもあって、そこがまた好きだな。

 

 

 

箱庭~ミニチュアガーデン~

箱庭~ミニチュアガーデン~

  • 天野月子
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

欲しい物など 手に入れたら ただのガラクタになり
忘れられてゴミと化す

↑真理やね……。

部屋の片付けをしてる時とか、通販で届いた段ボールを開封もせずに積み上げている時とかに、このフレーズが頭をよぎることがあるよ。

こんなにも正しい真理を1番出だしに持ってこれるから今曲はやっぱり神曲。


ラスサビ後のCメロで「扉を開け 手に入れた全てを置いて出て行こう」にこの物語は辿り着くけど、でもそこに至るまでの過程が人生だとも思う。

今曲のラスサビからアウトロまでの1分8秒の間に、私はいつも鶏の嘴打ち(孵化の際に内側から嘴で突いて殻を割る作業)を連想します。

卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない」というのはヘルマン・ヘッセの言葉だけど、今曲のラストで行われてるのはここで言う「破壊」に他ならない。

自分が言った「もしあなたと始まることになっても かまわないと今なら強く言えるの」を嘘にしていく気まずさが、変化を受け入れるということなのかも。

(私は「あなた」も含めてこの箱庭を棄てたという解釈をしてます)

 

零シリーズのwikiを流し読みすると、この『箱庭』がきっかけで零シリーズに推薦されたと書いてあり、まあそれも頷けるほどの曲だし歌声をしてるよ。

サビ「嘘を吐いてこのまま騙していてね」「永遠とは何かを感じさせてね」の語尾の「ね」にある強制力が強いなあと思うんですよ。

ABメロは非力な少女っぽさもある声なのに、サビから急に抑圧してくる強さがある。

そこに宿る主体性が、ホラーゲームの主人公に合ってるよ。

自分から動いてシャッターを切って怪異を鎮めていかないといけないのが零の主人公達だもんね。

 

 

 

人形 (Meg Mix)

人形 (Meg Mix)

  • 天野月子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

靴を履いて 私は踊る
あなたが脱がせてくれるまで

個人的には色々な意味で『箱庭』と対照的な曲だなあと思います。

あちらが箱から出ていける方の曲だとしたら、こちらは出ていけない方の子。

間奏に「邪魔となって捨ててきたのは はじめからなかった」という歌詞もあるしね。

 

今曲の特徴はサビのがなり立てるような歌い方。

彼女がこういう曲をこういう風に、激情そのものとして歌うのは割と珍しかったり。

ここまで声を張り詰めても、人形としての顔の表面には何も出ず、何も変わっていかないんだろうと察せられるのが余計痛々しい。

 

間奏「靴を履いて 私は踊る あなたが脱がせてくれるまで」のフレーズにおとぎ話のような仄暗いロマンチックさがあって好きなんですよね。

あなたがこの靴を脱がせくれれば、わたしは普通の単なる人形に、もしかしたら人間にでもなれるのかもしれない。

でもあなたがわたしに何かしてくれることはないから、ずっとこのまま。

人間のような感情を内に渦巻かせながら、ひたすら物言わぬ人形であり続ける永劫が悲しい。