switch版『犬鳴村~残響~』というゲームをプレイしました。
クリアまでの所有時間は6時間ほどで、元々はアプリで販売されていたものの移植版。
アプリからswitchに移植される際は価格も上がることが多いのだけど、今作はお値段変わらず730円。
ある者は、行方不明の弟を探すために。
ある者は、婚約者の手がかりを探すために。
ある者は、美女の誘惑のままに。
ある者は、配信動画のネタとして。
ある者は、親しき人物の復讐の為に。そこが禁断の地と知りながら―
6人は「犬鳴村」へと足を踏み入れる。引用:(犬鳴村〜残響〜)
「犬鳴村?あー、なんかそういうホラー映画あったな。ゲームでも展開してるの?」と思い、体験版をDLしたらこれが大当たり!!
オーソドックスなクリック探索ADVホラーで、エクスペリエンスの『死印』と『NG』のシステムを思い浮かべてもらえば早いかな。
プラス、サウンドノベル要素という感じ。
50種類以上のマルチエンディングと謳っている通り、すーーーぐ死ぬし、そのバッドエンディング全てにちゃんと名前があるところが好きです。
そもそも6人分のザッピングシステムがあるだけで100億点ですしね。
人物ごとに物語が進み、それぞれのルートでアイテム交換まで出来る。
いつまでも『街~運命の交差点』『428~閉鎖された渋谷で~』『千羽鶴』シリーズの面影を探し求めるサウンドノベルゾンビにとっては、満点に近い仕様。
アイテムの中継所がボットントイレなのはどうかと思うけど、原作映画を見た後だと、ファンサービスでもあるんですよね。
………そうですよ、私はこのゲームがあまりに面白かったんで、原作映画まで観ました。
Amazon primeの レビュー欄が評価数約2300に対し、☆2.6な時点でやばいんだろうなとは薄々勘づいていました。
まあホラー映画って評価が低くなりがちな面もあるから「言ってもそんなんでしょ」と思っていたら。
本当、驚くぐらい面白くなかったです。
色々言いたいことはあるんですが、主人公の犬鳴村滞在時間が実質8分というのに、なぜ誰かがおかしいと言い出せなかったんでしょうか。
現場の撮影スタッフだって、映画の完成フィルムを観た時に愕然としたと思うよ。
「あれだけお金と時間をかけて作った村の撮影セットがこれだけ!!?」って。
村の家屋内なんて1秒も写ってないのに、こうもちゃんとした背景素材があるってことは、実際に作ってあったって事なんですよね、きっと……。
それならせめてゲームにでも転用して、有効活用しないと報われないでしょ。
原作映画の公開日が2020年2月、アプリの発売日が同年8月なので、その間半年。
映画のプロモーションとしてリリースするには遅すぎるので、やっぱりこう……誰かスタッフの「せめて」という熱意によってスタートしたゲームなのかもしれません。
もしくは最初から映画とゲーム同時進行で作っていて、ゲームの開発が遅れたという可能性もなくはないけれど、映画の公式サイトを見るにそんな感じはなさそう。
ストーリーの出来はゲームの方が100倍いいです。これはマジです。
私が見落としていただけで、何か方法があったのかもしれない。
もしも人生をやり直すことができるのなら……次は必ず。
例え私自身の運命は変えられなくても、和樹だけは救ってみせる。
ゲーム単体のストーリーだけでも個人的には90点あげられるんですが、原作映画を観た後だと「あんな映画から、よくぞここまで……」と涙が出るほどの健闘ぶりに、加点30点、100点満点中120点ぐらいの評価になります。
ジャパニーズホラーというもの、そしてそれを好きでいるプレイヤーに対して真摯な印象を受けるんですよね。
ちゃんと同好の士を楽しませようという心意気が感じられるし、私はそこに好感が持てました。
ゲーム版のパブリッシャーであるちゅらっぷすとデベロッパーのFlame Hearts、あとシナリオ担当の山崎太基(ORIGAMIX PARTNERS)この3つのタッグで作られたゲームをもう1回やりたいという気持ちがあります。
原作映画の村シリーズは、第2弾「樹海村」第3弾「牛首村」と続いているんだし(正気か?)この2作品もゲーム化しないかな。
そしたら映画観るから!私も!
という訳で、以下ネタバレ感想。
ストーリーの結末全てをバラしているので、未プレイの方は絶対読まずに、ゲームをプレイした方がいいです。
・ストーリーについて
なんかもう本当に良かったですよ。すごい良かった。
6人分の視点で描かれる犬鳴村の実像も、ルートごとの時系列シャッフルも、全てがツボでした。
奇天烈変人霊媒師だった霧幻が、オタサーの姫配信者乙葉の父親であり元刑事であったこと。
雑誌記者である加藤が犬鳴村出身で、村への愛着から侵入者に対して殺人鬼になったこと。
「あ!そういう事だったの!??」と驚いた場面がいくつもあったし、全員に好感が持てたのも良かった。
乙葉ルートにいるおとにゃん親衛隊まで好きです。私。
我らが姫……守る……!
おとにゃんを崇めよ……、称えよ……!!
原作映画ではタイムリープまで飛び出してきたのに対し、こちらはちゃんと現実世界での辻褄が合ってるし、その上で面白いっていうのは偉大なことです。
ダムの建設会社によって虐殺された村人達の、浄化されない悲哀もまさしくジャパニーズ・ホラーそのもので。
何者かに殺された者たちの霊が無数に漂っている。
どのような死に方をしたのだろうか、凄まじい怨念を感じる。
苦悩と無念から生者を引き込み、憑き殺そうとしているようだ。
それで彼らが救われることもなく、永遠に苦悩は続くというのに。
檻の中から女たちの霊が手招きしている。
地獄へ道連れにしようというのか。
恥辱の限りを尽くされ、魂まで踏みにじられた
その恨みの炎は
例え水の底に沈められても決して消えることはない。
赤子の霊が鞠のように転がっている。
人のカタチを成していないその憐れな姿は
堕胎されたことを物語っている。
生まれることを許されず、死んだことも分からないまま、
母を求めて泣く彼らに応える者は誰もいない。
「そう!こういうのが見たかったんだよ、私は……!」と心底唸りました。
個人的には、物語の結末がちゃんと親子愛で締められたことにぐっときました。
霧幻をトンネルの外まで導いてくれた乙葉の姿を思うと、私は今でも涙が出ます。
原作映画は最後の最後まで、親子の血は呪いでしかなかった。
それを否定して、親が子を想う気持ち、子が親を想う気持ちを糧に、犬鳴村から脱出してくれたことが嬉しかったかな。
というか、原作映画の結末をことごとく反転していったらこういう終わりになる気もする。
原作映画の結末なんて最後、主人公が犬人間になって終わりですからね!?
マジであれはどういうことだったんでしょうか、そもそも犬人間って何……。
でもこのゲームは、そんな原作映画を撮った清水崇監督のことが大好きなんですよね~~~。
エンドロールへの入り方見ました?
『呪怨』や中田秀夫監督の『リング』を彷彿とさせる仕掛けだし、ちゃんと牙が生えた犬人間女も出演してくれてるし。
怪異が画面を越えて迫ってくるっていう終わりは、スマホアプリのホラーゲーとしては定番だけど、でもやっぱり王道で最高。
それは原作映画に関しても同じでスタッフロールの映像だけはめちゃめちゃ良かったです。
私が見た映画の中でも、トップクラスに入るぐらいこの映像は好き。
犬鳴峠の山道をドローンで空撮し、
最後は入り口にあるブロックを越え、トンネル内に侵入していくところで終わる。
これは「旧犬鳴トンネル」が現実に存在しているかつ、それを題材としたこの映画でしか撮れない映像なので。
唯一無二にして、最高のスタッフロールだと思います。