初めに言葉があり、言葉は神なる18禁ゲー『Renaissance』感想

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エロゲーブランド:LiLiMが2002年に出した『Renaissance』という18禁ゲームを、FANZA GAMES遊び放題にてプレイした。
中々私好みだったので、DL siteにて購入。
2020年8月11日まではセール中で、なんと500円で販売している。

天童弘司は、展覧会で最年少受賞を記録した芸術の卵。
天才的な画家と師事する叔母・佳枝の援助を受けて独り暮らしをしていた。
仕事上の多忙を理由に母親の病床を訪れなかった父親を憎んでいたが、親子関係を修復する父親に戸惑ったものの、時を経てわだかまりが解けていった。
大学進学を考慮して、父親の呼びかけに応え東京に帰る決意をする。
その帰京を決めたことが引き金になったかのように、弘司の周辺で次々と不可解な事件が発生する…

https://dlsoft.dmm.co.jp/detail/sai_0009/

きっかけは、私がブクマしているゲーム感想文ブログがプレイしているのをみかけ、原画:煉瓦のイラストにひと目惚れしたため。
この判断が大当たりだった。
『Renaissance』の一枚絵はもうはちゃめちゃ、はちゃめちゃに良い。

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100点満点中、120点です。最高!
淡い水彩の塗りに、静謐な構図、神聖な影に憂える少女達。
ヨーロッパ風の建物が建ち並ぶ”神無町”を舞台に、それぞれの思惑と過去を抱えて立っていた彼女達のことが、本当に好きで好きでたまらない。
このエンディング絵の平野深雪なんてもう可愛すぎて少し泣いた。

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あ〜〜〜〜〜〜〜!!!可愛い!!!!!
どこが可愛いって全てですよね?ピンク髪の美少女がぶかぶかのジャケット羽織って、スカートの下にスパッツ着て、ごついスニーカー履いてるんですよ。
この快活なギャップが、ギャップが……あ〜〜〜〜〜!萌える!!可愛いから!!!!
(なお本人はこんな性格では一切ない)

絵がこんなにも最高な上、シナリオもめちゃめちゃに面白いんですよ!?!?
好きにならないわけがない。

プレイ時間は1ルート1.5h×5人で計8時間程度。
攻略した順は、源 優子→海江田 羽純(+早川 紅葉)→雨宮 麗依那→エレナ(+山岡あみ)→平野 深雪。
言語哲学や宗教観を交えつつ、「親に産み出された子供は、親に使役されて然るべき存在なのか?」というテーマを描いた作品だった。
音声もなく、休日の2日間あればクリアできるコンパクトなボリュームなところも私好み。

言葉の分節化や唯名論唯物論錬金術などの小難しい言語哲学系の単語が頻出するルートがあるので、インテリゲーとも言われる今作。
世界は言葉によって認識され、言葉を置き換えることが出来るなら、世界をも置き換えることが出来る……みたいな言語哲学の話を軽く学んでみたいという方にもおすすめ。
良くも悪くも、言語哲学の知識を武器にして、ラスボスを倒すゲームなんて滅多にあるものではないと思う。

以下、ネタバレ感想。
煉瓦氏のイラストが気になった方は、ぜひともプレイしてみてほしい。
単体DLで買っても2940円だし、FANZA GAMES遊び放題でやれば実質無料の作品であり、値段以上の価値は絶対にある。

 

 

 

 

 

平野深雪ルート

深雪ルートクリア後、パッケージ裏画像を見た時は笑ってしまった。

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家族写真だったんかい、これ(笑)
改めて見ると、アルコン(=フライ)と深雪(=マリア)と弘司(=耶蘇丸)、全員血が繋がっているというか生まれ変わりというか魂の転移の繰り返しというか。
おどろおどろしい「古の契約が今、時を超え蘇る……。」なんてキャッチコピーにも笑うよ。
契約というより、アルコンの独りよがりな千年王国建立計画だろ。

平野深雪がパッケージでメインヒロインに据えられていることを、私は完全に詐欺だと思っている。
ヒロインでは絶対にないはず。だって彼女はフライの娘であり、フライの女であり、耶蘇丸の母親ではきっと決してなかった。

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何故に、私と一緒に入水しないのです?
フライの期待に背いた今となっては、自ら命を断つのが筋というものです。
貴方はフライだけでなく、産みの親にまで逆らうのですか?
こちらに来なさい。
フライに謀反した以上、我らは死んでおわびをせねばなりません。

私はあの時、ああするしか無いと思ったんです。だって、私達は彼がいなければ、この世に産まれてきていないのだから………
私もあなたも、彼の期待にこたえられなかった。
だから、生きていても意味がないと思ったんです。

ど、毒親〜〜〜!!!

と、令和に生きてるプレイヤーはきっと叫んだと思う。
家父長制に染まりきった戦国時代の女か?
子供は産まれた瞬間から、自分とは別の自我を持ち、違う思想を持つ人間だと理解できていない?
ってなるんだけど、でもこれって仕方ないことでもある。
彼女はずっとフライのことを、自分の父親であると知らずに男として愛していた。
知ってからもなお。

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アルコン「……御前はこのフライ・デ・ヘススと、とある修道女の間に産まれた不義の子だ」
マリア「……マリアがあの赤い水を飲み、耶蘇丸を身籠ったのは、フライを愛していたからです」

マリア「それでは、私は罪の子なのですか?」 

男として愛していた実の父親に、処女受胎をさせられた女は、妻にもなれず母にもなれない。
地獄だよ。どう考えてもアルコンが愚かな計画に巻き込んだことに責任がある。

しかもあの男、エレナルートでちょっとエレナに好意を仄めかしているんだよな!?
エレナも彼によって造られた人造悪魔であることを考えると、アルコンは自分が創り自分に都合のよいよう動いてくれる存在なら誰でもよかっただろ。

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「手前が望まなければ、御前はこの世に生まれていなかったのだぞ!」 

と言えてしまう傲慢さ、子供っぽさ、無責任さが育児に向いていない男親そのもので嫌いだ。
でも、こう、やっぱり、顔は良いので……!
マリアや弘司の母親と優子の母親が惚れ込んだのも分かる。

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顔が良い……超私好み……
眼鏡でロン毛で顔色が悪くて医者で野心があって根が傲慢な男、女の気が狂う理由としては十分過ぎる。

最後、深雪はアルコンと弘司の間で後挟みになって、どちらかを選ぶことを拒み、消えることを選んだ。
紅葉は「逃げることもまた彼女の一つの選択だ」と言ったけど、何も選べなかった彼女の未熟さは、彼女だけの責任なのだろうか。
マリアとして祀り上げられて、男と交わりもせずに子を孕まされて。
考えれば考えるほど不憫な女の子です、平野深雪は……。

 

源 優子ルート

優子の母親が女として、娘である優子に嫉妬する内容は中々きついものがある。

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どうして一緒に笑ってくれないの?
こんなに面白い話は、そうそう見あたらないわよ。

私が会いたいと思っている男そっくりの相手に、自分の娘が抱かれていると思っただけで平穏ではいられないわ。
憎いのは当たり前でしょう?

私はね、優子が妬ましくて仕方がなかったのよ。
母親と娘の関係でとらえることができなかったわ。
女同士の視線であの子を見ていたのね。

ど、毒親〜〜〜!!!(2回目)

 母親が娘に女として張り合ってしまうの、女の業の深さを嫌でも感じる。
……でもやっぱりこれアルコンが悪くないですか?
アルコンと弘司さえ絡まなければ、源親子は仲の良い親子でいられた訳だし。
優子が独り立ちする描写があるのが、せめてもの救いかな。

エピローグの数年後のCGは、源優子の一枚が一番好きだ。
聖母のようなイノセンスを宿した光や構図が本当に美しい。

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俺の母親は、未だにあの町のあの家で霊として存在しているに違いない。
優子の母親も、未だにあの町で彼女を虜にした男を待っているに違いない。
例の廃病院も、未だにあの町で野ざらしになっているに違いない。

俺の心は優子との未来と、彼女との縁を作った過去の間で絶え間なく揺れ動く。

 

雨宮 麗依那ルート

麗依那はそもそも死産した子であり、麗依那の父親とアルコンとの契約により擬似的に生存している状態だったと判明するルート。
どんどん謎が出てきて、それが解かれていくのがすごく面白かった。
ここにも父親という存在が密接に関わってくるが、上記2人の母親とは違い、だいぶ好意的に描かれている。
麗依那が神無町の人間に認識されなくなった後のことまで考えて、金銭を残してくれていたりする訳だし。
麗依那の数年後のエピローグもすごく好きです。

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ともかく、こうして雨宮 麗依那は別人として生まれ変わった。
麗依那を本名で呼んでいるのは、今やこの俺だけだ。
それから先のことは、神様だけが知っていればいい。

名前も髪色も変えた彼女を、雨宮 麗依那と呼べるのは主人公と、亡くなった麗依那の父親だけなんだろう。
神無町での雨宮 麗依那を覚えているのは、主人公と父親、この世で2人の男だけという結末は結構いいと思う。

 

海江田 羽純&早川紅葉ルート

インテリゲーと言われる所以の、言語哲学が存分に学べるルート。
分節化とか対照言語学とか、平行世界についての考え方とか唯名論実念論とか。
平野深雪ルートでラスボスを倒すための方法を、ここで学んでおくという印象。

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人間は言葉によって置き換えが可能なものしか、理解もできなければ感情移入もできないのよ

人間は現実を言葉によって分けて、同時に分けた言葉を一定の法則に則って再構築することで、世界を捉えることを可能にしているのよ


海江田 羽純、家族が好きで寂しがりやというだけの女性だったのに、結構結末がエグくて閉口する。

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何故なら、海江田 羽純という女性は、俺の行使した置き換えの力によって、既に別人に変わってしまっているからだ。

実質バッドエンド扱いなんだろうけど、これ以外のルートで彼女の寂しさが報われる様子もないし…… 。
主人公の思う様に自分を変えてほしいと願うことは、これ以上自分が自分として存在するのを許せない、いわば一種の自殺だろうに。
ただ”寂しがりやだった”という一点のみで、世界を置き換えることを選んだ羽純の強さを、主人公はへし折ったし、羽純もへし折られることを望んだ。
強くあろうとしたのに、結局は弱くて自身がコントロールされることを選んだ羽純が哀しい。


エレナ&山岡 あみルート

これも平野深雪ルートに繋がる、言葉で構成される魂と肉体について学んでおくルート。

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これが魂です。
……あなたは聖書に書かれている、『初めに言葉ありき、言葉は神なり』という文句を知っていますか?
魂とは言語の集積体のことを指しています。

魂とは言葉の集積体であり、錬金術で作った「賢者の石」を用いれば、肉体と魂を分離させることができる。
また、賢者の石を使って出来た「命の水」なるものを飲めば、人は不老不死になれるだとか。
ガストのアトリエシリーズやってると結構気軽に出来ちゃうこれらの錬成物、いやはやすごいもんだったんだな……。
というか、アトリエの錬金術士達が凄腕すぎるのか?

 

・その他

深雪ルートの一番最後で、結構唐突に挟まった感のあるメタネタについては、私は否定的です。

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やあ。俺が見えてるか?
あんたには世話になったな。感謝しているよ。

これからは、あんたの話になるんだよ。

事前に色々な伏線があったとはいえ、こういうの、プレイヤー対キャラクターというよりプレイヤー対ライター、もっと言えばライターからの説教に思えて辟易してしまう。
もちろんこれが2006年に発売されたゲームだとは知っているが、「ドキドキ文芸部」(DDLC)や「君と彼女と彼女の恋。」、「アンダーテール」を知った後だと、どうしてももうちょっとプレイヤー対キャラクターの関係性に落とし込めなかったですか?と思う。

中々ルートに入れなかった時の独り言レベルで終わっていたなら、好きだったんだけどね。

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そうそう、個人的な意見として聞き流して欲しいんだけど、そろそろ焦った方がいいよ。
あんまり時間が残されていないんだ。分かるよな?


逆に、ループものだったと終盤で気付いた時の主人公は、結構好きです。

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俺は、この町から東京に帰ると言って……何度も同じ事を繰り返していた!
何度もだ!

優子を連れて東京に帰り、羽純さんと一緒に東京に帰り、麗依那と一緒に東京に帰り、エリスと一緒に東京に帰り……

でも俺はどこにも、誰とも帰っていなかったんだ!
同じことを繰り返していただけだ!

弘司にとってこの”神無町”は出ていかないといけない場所なんだよな。
ここに留まってしまえば、アルコンの思惑のもと、耶蘇丸として新しく創られたキリストにならなければいけないから。
でもずっと旅立ちを邪魔され続けて、ここに留まることを繰り返して。
深雪ルートでアルコンという親殺しを成し遂げて、彼はやっと辿り着くべき場所、東京に行けるのだと思うと、『Renaissance』ってもしかして子供の親離れ的な物語だったんだろうか…。

 あ、あとDlsiteにしろFANZA GAMES遊び放題でプレイするにしろ、「omake」フォルダを覗くのを忘れずに。
ゲーム本編では見られない、旧校舎に裸で佇む平野深雪のカレンダー画像が手に入るので。

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このカレンダー画像、最高じゃないですか!?!!?
旧校舎の教室に積み上げられたいくつもの自分の死体の上に立つ平野深雪。

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禍々しい壁の赤と、無垢な裸から発せられる禁忌がもう本当に好き。 


こんな感じかな?以上、終わり!

タイトルである『Renaissance』の語源は、古期フランス語「再び生まれること」の意から。
何度も何度も再誕させられて殺され続けた平野深雪の魂と肉体に安らぎがありますように。