そうさ 双六のように未来を君が決めればいい / 柊奈緒「月下の舟」【感想】

vita『月影の鎖 -狂爛モラトリアム-』という乙女ゲーの限定版を買った。

月影の鎖~狂爛モラトリアム~ - PS Vita

月影の鎖~狂爛モラトリアム~ - PS Vita

 

 目当ては、Full.verのOP&インストが収録されている限定版特典CD「月影心中」
OP「月下の舟」のFullだけに、6000円も出す価値があったかと言われるとあったんだよなあ、これが。
むしろ安いでしょ。この曲が6000円は安い。
歌詞カードがないのは頂けないけど。聞き取った歌詞だとこんな感じ。
Short.verは公開されているOPムービーで聞ける。動画製作者はAb。

奈緒月下の舟
作詞:柊奈緒 作曲:柊奈緒 編曲:森藤晶司 

奈緒は今曲を発表した2013年以降、活動不明。
TAKUYO作品ではお馴染み、編曲の森藤晶司は精力的に活動中。

Full.verの何が素晴らしいかって、ラストの「その瞼を濡らしてくれるか 僕の手を抱いて」で先入観の全てがひっくり返るところ。
女性ボーカルに少女趣味の歌詞、幻想に揺れ燃えるような曲の雰囲気に、女である主人公目線の歌だと当然のように思い込んでいた。
確かに、一回も「私」とは言ってない。ただずっと「君」について歌っていた。
この歌を歌っているのが「僕」で男であるなら、「君」は乙女ゲー主題歌である以上、主人公でしかありえない。
こんっっっな情念に満ちた想いを抱える男とか、最高じゃないですか。
誰か知らんけど。たぶん「楽になれるのに」で目を細めた人?
同時に、「そうさ 双六のように 未来を君が決めればいい 幾重にも重なる未来を 賽の目に託して」の投げやりな言葉にも合点がいく。
恋愛ADVにおいて、攻略対象者から見た主人公像って、確かにそう言われるべき理不尽さ。

ムービーもちゃんと、瞼を濡らしているのは主人公で、その頬に触れているのは別の誰かになっている。
この頬に触れた手の戸惑いが、私はすごく好き。
動画製作者のAbは調べても月影の鎖関連しか情報が出てこないのが残念なほど。
チープっちゃチープなCGではあるが、歌詞と物語に沿った動きをしてるのが未プレイ者に分かる。
折った笹舟は、灯篭流しと共に流れ、主人公の涙に沈む。
このムービーの製作者は『月影の鎖 -狂爛モラトリアム-』と「月下の舟」ことが好きで好きでたまらなくて、本当悲しいぐらいに大好きなんだろうね。
技術やデザインの腕よりも、「この物語のここを分かって欲しい!」という熱意が直球に伝わってくる素晴らしいOP。

instrumentalでは、森藤晶司のサウンドを存分に堪能できる。
1番Bメロからのストリングスの入りが、あの世の彼岸を幻視させるほど美しい幽玄。
間奏でストリングスが疾走し始めると、ますますその美しさは光を纏って、走馬灯を想起させるように譜面を駆け上がっていく。
アウトロの笛の音は餞別の旋律のようで、「月影心中」の収録曲に相応しい一曲。