キャラ萌え俳優映画でしたね、あれ」
この映画の魅力は、キチったキャラにこれだけの俳優をあてるキャスティング力にあるのでは?」
「やばない?雪源で煙草吸うマフラー姿の役所広司やばない?
やばいよ!性癖ぶっ叩かれてるよ、私!!」
「はあ」
「私は、役所広司の眼が好きなんだと思う。
錯綜する精神状態で、狂騒する老人の眼。そういう眼を、もっと見たい。
主人公は常に何かにキレてたけど、怒りっていうのはエネルギーの塊じゃん?
役所広司がキレればキレるほど、私はエネルギーを貰えるんだよなあ」
「ストーリー的には?」
「『娘を探す』で始まり、『娘を探す』で終わる、何も進まない映画だったって印象。
何かをパロりつつ、茶化す演出が120分続くのもきつい。
私は映画で、狂ってようが常識的だろうがどっちでもいいから、美学を見せて欲しい。
この『渇き。』の美学がどこだったのか、私には読み解けなかったって感じ。
タイトルの『渇き。』は、主人公に元々あった破壊衝動の事だと思う。
そんな父親の血を継いでいる加奈子が、バケモノと呼ばれるのは少し可哀想じゃないの?
罵られるべきは、どう見ても父親の方だと思うんだけど」
「ちなみに一番劇中で驚いた瞬間は、加奈子の本棚に
クラフト・エヴィング商會「すぐそこの遠い場所」と
シャーリイ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる」があったこと」
「私もその2冊、タイトルに惹かれて読んだし、加奈子と類似する要素が0.001パーセントぐらいある?」
「ないでしょ……」