vita「薔薇に隠されしヴェリテ」の主題歌である、霜月はるか「un secret」を聞いた。
ゲームのストーリー紹介を軽く見る限り、舞台は18世紀フランス。
オーストリア皇女アントーニアに仕える単なる召使いであった主人公:リーゼは、何やかんやでマリー・アントワネットに成りすまし――という史実重視の乙女ゲーらしい。
フランス革命待ったなしですね……ギロチンEND絶対ありそうと思いつつ、楽曲もそのストーリーに強く添ったものとなっている。
咲き誇れる 一輪の薔薇が見つめていた かりそめの刻
まず言いたいのが、イントロの訴求力。
それらの音に加え、3拍子を刻むワルツも、宮廷音楽感全開で嬉しい。
1番のAメロはチェンバロとドラムが硬質な光を見せるが、2番からはストリングスが入る事により、これまでとはまた違う、優美な空気が流れ始める。
「千の煌めきの宮殿へ」とある通り、1番ではまだ冷たく感じる宮殿に、2番ではもう「楽に溺れ踊りましょう」と染まっている。
召使から王族へ。まるで湯水の如く浴びせられる贅沢に、順応するかのごとく。
言葉に頼らずとも、3分57秒のオープニング曲で、本編の物語を語ろうとする編曲が私は好きだ。
歌詞だと「暗闇でも気高き薔薇は輝くから」と「失っても あの日の薔薇の美しさを忘れられない」にグッときた。
薔薇を「豪華絢爛だった日々」と仮定するならば、すごくマリー・アントワネット、ひいてはフランス王族らしいフレーズのような気がする。
一度本物を知ってしまったら、どれだけ自分が没落しようが、またあの美しさを求めずにはいられない。
その美しさが過去にしかないのなら、ずっと過ぎ去った日々の夢に浸りたくなるという気持ちも、そりゃあ分かる。
カップリングかつED曲でもある「夢の抜け殻」と「貴方の居る途」については特にピンとこなかったので、ノーコメント。
ただ「もしも私があの日に帰れるのなら 空の色が眩しすぎて泣くのでしょうか」(夢の抜け殻)
「塗り潰された名前でも 悲しみに濡れた翼でも 貴方と居る明日へ翔べる それがささやかな幸せへの途」(貴方のいる途)には涙腺が緩んだ。
ゲームをクリアしていたなら、たぶんもっと泣けるんだろう。
重く軋む過去を背負い、それでもまだ温もりを求め今日を生き抜き、仄かに光る明日へと向かう。
その歩みこそを、気高いと思った。