個人的お気に入り度 4.8 / 5
アニメ「orange」OPである、高橋優「光の破片」を聞いた。
いやー…素晴らしかった!!
初めてサビを耳にした際、思わず涙ぐんでしまうほど。
こんなメロディーが、まだどこかの誰かからリリースされずに残っていたんだと驚くほど王道だった。
とっくにスピッツあたりが歌ってそうな曲なのに、「光の破片」は紛れもなく高橋優の新曲なんだよなあ…すごい。
高橋優ついて、名前は知っていたものの曲に触れるのはこれが初めて。
ただ、私の知り合いが彼のファンでして。
「最初の高橋優は、社会へのアンチテーゼを歌ってたんだけど売れなくて、それならまずは売れようということで、最近はもっぱら明るい曲をリリースしてますね」と去年辺りに言っていた。
今回のシングルに収録されている4曲を聞くと、この言葉はかなり的確だったのではと思う。
2曲目と3曲目が彼の声を張り上げて言いたいことだと思うが、それでも私は1曲目と4曲目が好きかな。
1.光の破片
寄り添い合いながら ときに遠ざけながら 不揃いな欠片と欠片つなぐ
イントロの途中から入ってくるアコギがまずふくよかすぎて、そこからして涙腺にきた。
郷愁を匂わせつつ、きちんと光を感じさせる弦の震え。
言い方がどうにも変だが、ちゃんと弾いているんだな、と親しむように鳴っている。
ピアノにアコギにベースにドラムと構成がシンプルだからこそ、光の煌めきが瞼に浮かぶ。
で、その光というのはアコースティックギターが奏でる高い単音で。
ギター一本で表現できる感情の奥深さに、改めて触れさせてもらえたような気がしてここでまた泣ける(2回目)
定番の王道を更に超えてきた、と直感的に信じられる楽曲だ、本当にすごい。
歌詞もフィクションが理想とする青春の空気間を徹底的に描いていて、ここまで理想化されたならいっそ好きになれる。
「ヒビが割れても 少し欠けても その欠片さえ輝いていた」
高校3年間というと……15歳から18歳か。
現役世代からしてみればたぶん「ケッ」と思うだろうに。
こうやってもう高校から卒業もしくは解放された人間があの生活を懐かしみ、夢を見ているのは。
少なくとも過去の私はそうイラついただろうが……まあ、何事も慣れ。
上手く高校生活を謳歌出来なかった大人のための、ビジネス青春モデルケースと割りきってしまえば、普通に楽しめる。
特に「気付いていたよ 君の強さを その横顔をずっと見てた」がお気に入り。
2.TOKYO DREAM
大きな夢を抱いてこの街にやってきたけど
希望だの理想だのパッケージ化して金にならなきゃゴミなの
前曲とは対照的に、攻撃的なエレキを多用したThe 社会へのアンチテーゼ曲。
彼ほどに社会への鬱憤が溜まっている訳でもないので、それほど共感出来なかったがABメロの歌詞には惹かれるところがあった。
「希望だの理想だのパッケージ化して金にならなきゃゴミなの」や「もめるのがこの国のエンターテイメント」
「手厚く放たれた紙飛行機 また放ってもらうまでただ待つだけアイデンティティ」
「『寂しさだけはもう避けていたい』人生という名のノルマから逃げ惑う人たちのスクランブル」らへんが特に。
「あげ足をとって儲けるセンテンス」「0.03gの魔法にしゃぶられた人」は2016年の時事ネタか。
がなり立てるように歌う声は、前曲よりこちらの方が好みかも。
私が男だったら、もっと共感出来たし、違う感想を抱けたかもしれない。
前から思っていたが、こういう歯がゆい生活への慟哭って性差があるような。
女性は自己嫌悪のように内面へ向かうが、男性は今曲のように社会へ、外側へと向かうイメージ。
……いや、そうでもないか。私が女性ボーカルによる自己嫌悪ソングを好きになりがちなだけだ。
3.誰かの望みが叶うころ
持ちうる人と持たざる人 笑えば同じ顔なのに
誰かの望みが叶うころ 誰かの明日が灰になる
タイトルを見ただけの私「あれ?宇多田ヒカルのカバー?」
誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ
みんなの願いは同時には叶わない
と、フレーズは似ていれど、内容は全然違う。
サビのメロディーは好みだし、寂寞さを打ち出したサウンドも沁みるが全体的にはどうにも。
が、凄絶すぎていかんせん聞き返す気にもならない。
「日本人が元気に手を振っていますとリポーターは興奮して伝え続ける 黒い蟻のようなあの1人の兵士のことはひと言も触れない」
「この国は危うい」「日本と名の付いていないものにならば いくらだって冷たくなれるのだろう」
1996年に起きた、在ペルー日本大使公邸占拠事件をモチーフとしているそうだが、何というか……受け止めるだけのキャパシティが自分の中にない。
4.視力検査
あれは上だ!いや下かな!君の前じゃされるがまま ただの点だ!いやカタカナだ
今曲だけ、メガネツインズ名義。
メガネツインズとは音楽プロデューサー兼ベーシストの亀田誠治と結成されたユニットであるらしく。
今曲で用いられているのはたぶんベースとアコギ、ボーカル&コーラスとハンドクラップのみのはず。
ドラム抜きだと思われるのにベースのおかげで曲全体が厚みを持って聞こえるし、ドラムがないからやけに軽快。
本当にギターが好きなんだろうな、この人達。
ちらりとフェチシズムを匂わせながらも、コミカルでまとめあげた歌詞もたまらなくツボ。
「眼鏡をおもむろにはずさせてきて '漆黒のスプーン'をあてさせて 辱めようとでもしてるの?」を男側が言うところが好き。
「愛の視力は2.0」なんていうフレーズもわざとやってるでしょと言いたくなるクサさがいい。
サビだってかなり馬鹿馬鹿しいんだけど、そのアホっぽさがこれまた可愛い。
以上。
私にああやって高橋優を語ってくれた知人も、今作を聞いているのだろうか。
少なくとも君の高橋優論がこんなとこで役立ってるよとは知らないままだろうなあ。