箱舟を壊して、はじまる約束 vita「アーシャのアトリエ Plus ~黄昏の大地の錬金術士~」感想

アーシャのアトリエ Plus ~黄昏の大地の錬金術士~

 
個人的お気に入り度 3.8 / 5
 
一ヶ月ほど前にプレイした「エスカ&ロジーのアトリエ」がかなり良かったので、前作である「シャリーのアトリエ」もプレイしてみた。
31時間で全END閲覧、トロフィー率は96%。
後の4%は難易度HARDでのやりこみ要素なので、見送ることとして。
 
世界観から調合要素、ストーリーに戦闘にキャラまでとにかく地味なゲームだった。
静かに滅びへ向かう世界…というよりは、スパイス程度の毒気さえないと言ったほうが正しい。
遺跡付近で失踪した妹、ニオを救うために旅立った姉、アーシャ。
3年間という期限の中で、妹をいつ救ってもいいし、例え間に合わなくても師であるキースグリフが代わりに助けてくれる。
そもそも囚われている状態のニオでさえ、ラスボスの管理下を抜けだして会えるので緊迫感&悲壮感ともになし。
仲間になるキャラクターもほぼ全員いい人で、その仲良しっぷりが心地いいやらぬるいやら。
プレイ済みのアトリエシリーズエスロジ+のみである事を差し置いても、作れる爆弾もかなり弱かった気がする。
こちらの攻撃が弱ければ、敵の攻撃も弱い(ラスボス1回の攻撃ダメージは20)ので戦闘シーンは延々とスキルで殴るのみだった。
負ける訳ないと分かっているのに、敵の体力ゲージが中々削り切れないバトルっていうのは苦痛以前に感情が消える。
 
しかしその地味さの中に、じわじわと良さを見出だせる作品ではある
比較要素がエスロジ+しかないが、OP映像とフィールド、ラスボスの立ち位置にキャラクター、BGMは今作の方が好み。
こういう聖書やら神話ネタベースの物語が好きな人にはたまらないゲームだ。
という訳で、以下ネタバレ感想。
特に、ラスボス撃破後に見るOP映像が素晴らしすぎたということは言っておきたい。
 

 

 
私が今作で何より評価しているのは、OP映像。
初見時は「ああ、リアルな植物を描いていてお洒落だな」と思っただけだったが、ラスボス踏破後に見ると驚くぐらいストーリーを踏襲しているのが分かる。

アーシャがふわふわと漂っている空間は、ラスボスであるイグラシドルが守ろうとしていた箱庭の内部だろう。
かつて訪れた大破壊から種を守るため、創設されたノアの箱舟
序盤でアーシャが二人、鏡写しのように映る場面が決定的だ。
ノアは箱舟を完成させると、妻と、三人の息子とそれぞれの妻、そしてすべての動物のつがいを箱舟に乗せた。
アーシャにとってのつがいは、背中合わせになった自身であり、その姿は水面に触れたように消える。
ここからして、アーシャはノアの箱舟に乗れずに、破壊してゆくストーリーが見えてくる。
 
それを証明するのが、アーシャの瞳に浮かび、つがいが消える瞬間に揺らいで消える siberoan irisだ。

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映像序盤で、彼女の周りに浮かぶ言葉は、どれも植物の英名である。
Amarine / FennelFour o'clock(午後過ぎに咲く白粉花の別名) 等。
属名の Iris(アヤメ) はギリシャ語で虹を意味する。
神は全ての生きとし生ける物を絶滅させてしまうような大洪水は、決して起こさない事を契約した。その証として、空に虹をかけた。
irisが意味しているのは間違いなくこの虹で、ラスト、アーシャが見上げる空に虹はかかっていない。
代わりにたんぽぽの綿毛が浮かんでいるのだが、この綿毛こそが、今作のストーリーを象徴しているように感じた。
 
浮かんでいる花の英名は、単なる言葉で記号でしかないという印象を受ける。
種という記号で保管され、次世代に持ち越されていくことと、この滅び行く世界で咲き誇ること。
どちらが正解なのか人間には分からないし、それをアーシャも理解しているから、真理を探求しに行くキースグリフEDがあるのだろ。
ただ今作の物語は、アーシャがニアを救出するため、箱舟を破壊する物語だった。
エスロジのタイトルからして感じていた事だが(エスカ&ロジー=Eschatology(終末論)の分解)、
黄昏シリーズは神の死んだ世界で、人間がどう生きていくかを描こうとした意欲作だよな。
 
ちなみに今作の主役が姉妹だったことも、箱舟の破壊を暗示していたのかもしれない。
ノアの箱舟に乗れるのは、動物も人間も等しく雄と雌のつがいだけだ。
姉妹が2人で箱舟に乗ることは不可能で、だからこそアーシャは囚われたニオを取り戻すためならば、箱舟の破壊を躊躇うことはなかった。
イグラシドルを倒した後で自問こそすれども。
OPの中盤でアーシャが手を伸ばし、触れようとした百合の花。
同性愛の象徴というよりは、雄しべと雌しべを持つ両性花であることのほうに意味がありそう。

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既に答えはOPで提示されていた、こういう呆気にとられるような瞬間があるから、オープニング映像って最高だ。
 
 
他には…黄昏の大地を謳う通り、植物に満ちたフィールドも探索していて楽しかったし

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BGMも良質なものばかりだった。
さすがにボーカル曲だとエスロジの方に軍配が上がるが、ラスボス戦闘曲「MARIA」も負けず劣らずの名曲。
MARIA

MARIA

 

以上。
キャラ萌えも結構あったけど、オープニングを越えるほどの衝撃はなかったので割愛。
ティザームービーでも言っている通り、今作の謳い文句は「やくそくが はじまる」だ。
旧時代の箱舟を壊し、世界が滅びに向かい続けていようとも、人は生まれて、約束は始まっていく。
黄昏シリーズ第1作目に、相応しい物語だったと強く思う。
3作目「シャリーのアトリエ〜黄昏の海の錬金術士〜」もやりたいと思いつつ、やるゲームの予定がかなり立て込んでいるので何とも。

今作の箱舟モチーフに触れたことで、PSアーカイブスの「リンダキューブアゲイン」がやりたくてしょうがないぞ、今。 

リンダキューブ アゲイン

リンダキューブ アゲイン

 

この星に住む主人公ケンは、恋人であるリンダと共に、ネオ・ケニアが壊滅するまでの8年の間に、できるだけたくさんの動物のつがいを収集し、箱舟と呼ばれる宇宙船と共にこの星から脱出することとなる。

 
 
※色々他の方のアーシャ感想も漁ってみたところ、考察すげえな!!と思ったのが以下のブログ様のもの。

ナナカと牛とハロス村の関連とか全然気付かなかった…。
 

 


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