復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

金を溜め込んで、幸せなのは君だけだ アニメ・ノイタミナ「C」前半感想(1~5話)

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2011年フジテレビのノイタミナ枠で放映されたアニメ「C」を5話まで観た。 
「C」第1巻 <Blu-ray> 【初回限定生産版】

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副題は「THE MONEY OF SOUL AND POSSIBILITY CONTROL
直訳すれば「魂と可能性を支配する金」でいいのか?いまのところは。
興味を持ったきっかけは、例に漏れずOPのハイセンスさ。

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未来を担保に、個人資産の化身である「アセット」を使役しミダスマネーの奪い合い「ディール」に身を投じることとなった主人公。
「C」はいわゆるマネーゲームバトルを描いたアニメらしく。
金が絡む電脳(?)世界のバトルアニメであることが、OP冒頭の15秒で、こんなにお洒落に表現されている点に興味を持った。
札の中に広がる世界。
そこには純然たる歴史があり、どの世界の貨幣一枚とっても物語がない紙幣などない。
そんなリアルマネーと、このアニメ特有のミダスマネー。
リアルマネーが積み重ねてきた歴史と、ミダスマネーの中に広がる世界との対比にグッときたのだ。
という訳で、5年遅れで「C」を見ているわけだが、5話まで見終わった時点ではかなり面白い。
金融取引というよりは、未来を担保にした事による鬱展開と、主人公のミクニを代替とした「父親超え」話のような印象が現時点では強い。
とにかく金融街&ミダスカードのデザインセンスと、映像センスがいい。
あまりキャラクター萌えはしていないが、映像美がこんだけ楽しめるんだから最終話(11話)まで付き合うつもりである。
 
リアルマネー・ファイトというと、SEGAのゲーム&アニメ「ヒーローバンク」を思い出すな。
ヒーローバンク」も子供向けアニメながら、中々良いことを言っていた気がする。
40話の「節約はカネを貯めるためにするんじゃねえ!!大事なのは節約したカネで何をするかだろ!」とか。
私はこのアニメOPの角田信朗withがっぽり仮面女子「かせげ!ジャリンコヒーロー」が大大大好きだった。
かせげ!ジャリンコヒーロー with がっぽり仮面女子

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  • 角田 信朗・がっぽり仮面女子(岡本 柚果、川村 虹花、坂本 舞奈、水沢 まい、百瀬 ひとみ)
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ジャリン ジャリン ジャリン ジャリン 稼ぐぜ! 

歌詞の直球さとイントロからして迸る熱さがたまらん。
角田信朗は歌手もこなす空手家だそうで。そりゃあ、これだけいい声していればな。
サビ「ヒルんでるようじゃ取り逃す つかめビジネスチャンス」の勢いも格好いい。
2番の闘志と投資をかけた「勝負にかけた闘資」やら「でっかくかけろ億千万」やら、わりと「C」の世界観にもマッチしたようなフレーズがある。
……いや、「ヒーローバンク」の原作ゲームは2014年発売だからこっちの方が後継者なんだけどね。
ではでは、以下各話感想。
 
 

 

・1話 complication 複雑
 

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(アバンでやられるモブのくせに、アセット召喚カードのデザインめっちゃいい)
 
三國壮一郎の戦闘&真坂気との接触金融街への招待回。
冒頭の召喚バトルがまず格好いいんだよなー、カードを額に翳すのは王道にして至高。
赤と白と黒で構成された金融街が、スタイリッシュで格好いい。
そこで繰り広げられる戦闘に、電子音声が華を添えているところがツボです。
金について、発せられる三者三様のスタンスの対比も面白かった。
三國は「世界と繋がる手段そのもの
対して「金がないんだよ」とこぼす主人公に「あるのに使ってないんじゃなーいの」と言う羽奈日。
「あるのに使ってない」には、私自身がギクッとした。
通帳に刻まれる数字はある。が、それを引き出して使うことに躊躇いを覚える。
金を眠らせて、手元に置いておきたいんだよねー。少なくとも私はそういうタイプだ。
真坂木は、主人公を説得する際「金融街は誰に対しても開かれています」と説明した。
お金を持っている以上、誰だって金融街に踏み入れる権利はある。
同時に、金融街で道を踏み外す可能性は誰にだってあるようにね。
このアニメの美術で好きな所は、車内広告にかなりの力を入れている点だ。

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この後も度々、こうした雑誌の広告は出てくるが、物語の展開と共に書かれる見出し文句も変わってくる。
そこら辺の移り変わりが、「C」の世界にリアリティを持ち込み、確固たる空気にしているような。
 
 
 
・2話 coincidence 暗合
 

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(あ〜〜〜〜、私好みのイケメンだ〜〜〜〜〜)
 
金融街への入場&自身のアントレ:マシュとの出会い&三國壮一郎と現実世界での邂逅回。
とにかくバトル:ディールについての説明回。
専門用語満載で、最初にきっちり整理しとかないと途中で意味が分からなくなるな。
2話の時点では、アセット(個人資産):アントレプレナーの武器であり、未来
メゾフレーションだとか、マクロフレーションとかそこら辺は次回説明されるのでご安心を。
主人公のアセットであるマシュが言った「コストをかけて攻撃すれば利益が出る」らへんは、マネーバトルならではって感じのルール。
2話でもう主人公と三國が知り合ったのは、意外だった。
しかもそのファースト・コンタクトがBLの攻め様か、お前?と言いたくなるようなやり方だったのは…その……。
厄介な客に絡まれている受を、金の力で颯爽と救う構図ってBLだとかなり王道、テンプレである。テンプレ。
あとは、現実世界に戻る際、真坂木の「世界が変わって見えますよ」という台詞は、何だか「C」を象徴する台詞のように思える。
知れば、世界が変わる。
知識とは、経験とはそういうものなんだと主張するような力強さがあった。
逆を言えば、知らなければ世界なんて何一つ動かないという事でもあるのだけどね。
今回の美術で気に入った点は2つ。
金融街の道路デザインと、三國壮一郎会社の机下にある巣だ。
前者は「地獄への道は善意で舗装されている」なんていう諺を浮かばせる秀麗さだし、後者は「蟻の巣」を円卓に用いる発想にやられた。
動いている蟻の上で、物事を動かす。
三國壮一郎の支配者感がよく表されたワンカットだと思う。……いや、想像するとすげーキモいけど。
足元で蟻がわさわさ動いてるのが見えるんでしょ?無理だわ。
 
 
 
・3話 conspiracy 陰謀
 
(うわー、BLだ!!と言いたくなるが、容姿が似ているので親子のようにも見えるシーン)
 
ジェニファー・サトウナレーション&主人公の父親真相解明&三國の主義主張が垣間見える回
初っ端から「誰!?」と言いたくなるようなナレーションが入ったのはビビったが、中々良いキャラのジェニファー・サトウさん。
3種類のフレーションについて説明もしてくれたしね。
ミクロフレーション:投資額10万の攻撃
メゾフレーション:投資額100万の攻撃
マクロフレーション:投資額1000万の攻撃
……メゾ、とか言われると先に音楽記号のmezzoを連想してしまうし、結構ややこしいな。
彼女が言うには「金融街の規模はその国の経済状況に比例する」とのことらしく。
各国にもこういう別世界の金融街があるのなら、今後グローバルな話展開になるのか?
OPの内容からしても。
彼女の任務は金融街の調査。故に小さく勝って、小さく負ける。
稼ぐのが目的ではなく、金融街に居続けるのが目的というのもまた新たな立場だ。
一方、叔母の実家から失踪した父の手帖を見つける主人公。
明かされたのは、彼の父もまた金融街で破産し、自ら命を絶ったという事実。
それを知って沈み込む主人公を「ここは俺のお気に入りでね」と、見晴らしのいい場所へ連れ出す三國には、本当BLの攻め様か何か?
…と呟きたくなったものの、このパートのやり取りは父子関係のそれに近いと思った。
父親に自殺された主人公と、父親の会社を金で乗っ取った三國。
どちらも良好な父子関係だったとは言えず、息子が超えるべき「強い」父親像は見当たらないままだ。
私には三國が、主人公にとっての「父」のように見える。
色々とアドバイスをくれ、手助けをしてくれ、いずれは敵対する存在。
三國もそれを承知して、その役割を引き受けているように見えなくもないんだよなあ。
この後の三國が言った「金を稼げ。それを誰かのために使え。君が金を使えば誰かを潤す。貯め込んでいれば幸せなのは君だけだ
はアニメ「C」前半一の名セリフと同時に、社会人の父親がまだ学生の息子に向かって言う、説教めいた忠告のようにも聴こえる。
ジェニファー・サトウによる「世界は歪み、屈折し、それを肯定しながら膨張していく」が意味深。
リセットすることも、覆すことも、出来ないものが世界なんだよね。
 
 
 
・4話 conversion 転換
 

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あ〜〜〜〜〜、先生〜〜〜〜!!!
 
平成経済大学講師との戦闘回
いやー……すごいガツンと来た回だ
未来を!!未来を担保にするってそういうことかよおおおおおおお!!」って叫んだもの。
妻が3人目を身ごもった、夫としての先生vs主人公。
戦闘シーンと日常シーンを交互に挟む演出がニクい。
大学で3人目を身ごもった妻を紹介するシーンの主人公は先生で、モブは余賀公麿の方。
金融街でその立場が逆転するとしても、あの改変される前の世界で、先生は確かに自分の人生を生きていた。
それが余賀に負け、金融街で破産し未来を失った結果が、「子ども達」の消失。
既にいた息子と娘、そして生まれてくるはずだった3人目の、抹消。
何だ、このやりきれない展開は。
子どもを養うために、産むためにお金が必要だったのに、手を伸ばして負けた結果がこれなの?
ちょっと代償が重すぎないか……。
それでも、主人公と共に歩きながら、遮断機の前でこう叫んだ先生に惚れた。
せめて君は負けるな!!君に何かあったら大変だ。
 私の子どもの記憶を分かち合えるのは、もはやこの世で君だけなんだから!!」と。
敵を責めず、自己責任だと認め、それでいてこう宣言できる先生に、すんごいグッときた。
後に彼が憔悴していこうとも、現時点でこう言えるのは、彼の持ち合わせている強さだったと私は思う。
 
 
 
・5話 cultivation 修練
 

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(自殺者急増の背景にあるのは、どう考えても金融街のディールだよな)
 
主人公の椋鳥ギルド加入&芭蕉製薬倒産危機回&カップラーメン回
今話は大した感想がない…かな。
主人公がちょっとはディールをコントロールしようとしてみせたことと、三國がどれだけ世界を大切にしているのかが表明されたぐらい。
清潔な世界で人々が飢えていくよりも、俺は汚れた平和を選ぶ」ってね。
というか、早くも先生の心が闇堕ちしかけてるのが胃にくる。
妻が出ていき、ゴミ袋が積まれた玄関、衣服が山積みのベッド、水の溜まったシンクが描かれた家。
夕暮れの橙に染まった部屋に、パチンと蛍光灯を付けてくれる人はもういない。
本当に、代償が重すぎだよな……先生……。
っていうか!!主人公もちょっとは先生の世話やいてやれよ!!アフターケアぐらいしてやりなって!!
せめて食事にでも誘うとかさあ……!!(二次創作フラグ)
 
 
という訳で、アニメ「C」前半感想だった。
この世界と金融街の行く末は気になるし、三國壮一郎のビジュアルがかなりの好みなため最終話まで見るつもりだが、後半感想はどうしよう……なんかこう、茶化せる突っ込みどころがないんで書きにくいなあ。
今のところ、主人公組に爪の先ほどの好感も抱いてないというのもある。
いや……だって何もしてないじゃん、あの2人。
主人公とマシュについて語るぐらいなら、まだ1話冒頭のモブの方が語る事あるわ。
ビギナーズラックってこともある!!」の決め台詞とか、ディレクトされた瞳のつぶらさとか。
電車に飛び込む際、反対側(駅の構内)の壁を向いて立ち、たっと振り向いて線路に駆け出すところなんかも、すごいリアリティーがある。
私も、もし電車に飛び込み自殺をするなら、ああいった動きになると思う。
線路を見詰めて、そのまま飛び込むなんて怖くて出来ないから。
反動を付けて、まるで気が違ったように飛び込むしかないんだろうな。