そこは縁なす楽園、サイケデリカ  vita専用ソフト「黒蝶のサイケデリカ」感想

黒蝶のサイケデリカ

 
個人的お気に入り度 3.7 / 5
 
vita専用ソフト オトメイト黒蝶のサイケデリカ」をプレイした。
感想を一言で言えば、短すぎ。
プレイ時間3時間×2日でトロフィー100%は、さすがにボリューム不足感が否めない。
2日だぜ、2日Amazonから届いたその日と次の日で終わりって。
コンパクトな良作とは聞いていたが、ここまでコンパクトだとは聞いてないぞ!!
 
ストーリーは可もなく、不可もなく。
見知らぬ洋館で眼を覚ました、記憶喪失の人間が4人――…で大体想像がつく物語展開だ。
盛り上がるところはいくつかあったものの、グッとくる箇所は少なかったような。
キャラ萌え的には、1番好きなキャラは鴉翅、一番好きなビジュアルは緋影だった。
これはまあ追記のキャラ別感想で。ネタバレを多分に含むので注意。
 
結賀さとるが担当したスチルは文句なしの満点。
線の細い画に、コントラストを強調したカラーが鮮やかに映え、アニメチックな幻想感がくっきりと描き出されている。
本当に素晴らしい。ここはとにかく強調したいポイント。
上記のパッケージ画像を見れば、一目瞭然だと言えども。
「黒蝶のサイケデリカ」の絵は、本当に乙女ゲー界最強クラスの美麗さだと言い張ってもいい。
 
同様に音楽も、個人的にはかなりのツボだった。
このゲームをプレイするきっかけになった、島みやえい子「黒蝶のサイケデリカ」はもちろんのこと
黒蝶のサイケデリカ

黒蝶のサイケデリカ

「エンディング 狭間.ver」で流れる、BGM「傷」のアレンジバージョンがすんごく良かった。

狭間.verのEDが流れた瞬間、思わず嗚咽が漏れたほどだ。
一瞬前まで「まあこんな感じか」と冷静に彼女らの結末を見ていたのに、あのピアノの和音が聞こえた瞬間、駄目だった。
ストリングスが入ってきた10秒後には、もうガチ泣きだった。
なんだ、なんなんだあの優しさは。メロディーにあふれる、あの悲痛な光はなに。
「傷」と銘打たれた優しすぎる曲に、涙が止まらなかった。
サウンドコンポーザー:林茂樹とあったが、彼の作曲だと思ってもいいのだろうか。
何はともあれ、とても印象強い曲だ。この曲が、狭間で迎える2人の終焉を飾ってくれる曲で良かった。
 
そうそう、OPである SCREEN modeBloody Rain」もかなり本編を意識した歌詞だったと思う。
Bloody Rain

Bloody Rain

……正直、かなり影は薄いが「心の深淵へ 降る雨 また真実の声掻き消したって 抗い叫ぶよ」というフレーズはいい。

 
 
ではでは、以下ネタバレ&キャラ別感想。ストーリーに関しては割りとぐちぐち言ってます。
(以下に使用している全ての画像の著作権は、アイディアファクトリー株式会社に帰属します)
 

 

<ストーリー感想>
 
登場人物たちが閉じ込められている館は、この世とあの世の狭間の世界だ。
死者と生者が交わる、縁なす楽園サイケデリカ。
ただ個人的には、主人公達がそこに至るまでの「たまたま」感が気になってしまった。
主人公を館の主が狙ったのは、彼女の頭に付いたヘアピンが万華鏡の欠片を埋め込んだものだったからで
そのヘアピンは主人公の宝物、という訳でもなく、単なる縁日で怪しげなおっさんが売っていたもの。
主人公達は10年前のサマーキャンプ中、あの館でナッちゃんとカズヤの意識を亡くしたが
あの館付近ではそういった事故も多発しているらしく、主人公達だけが特別というわけでもない。
怪しげなおっさんのヘアピン一個に左右される運命、に軽さを感じて冷めてしまった。
館での経験によって、10年前の事故から一歩前に進めた……という雰囲気でエンディングは締めているが
なんかそーゆーのも無理。
何か特別な体験をしなければ前に進めなくて、そしてそんなものをお膳立てしてくれる世界で良かったね〜〜〜と皮肉交じりに見てしまう。
日常で起こった事故のトラウマを、非現実の経験で乗り越える展開そのものが嫌いなので、まあ個人的には合わなかったということで。
 
 
・緋影

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最後まで本名と顔が不明な攻略対象……とは……。
パッケージからしてメイン攻略者だと思っていたのだが、中盤で衝撃の裏切りを披露したあとは普通の悪役。
本当に普通の悪役。
妹の死に精神を病み、死者を呼び戻す研究にのめりこんでいったとからへん、マジで普通の悪役。
最愛の妹を自らの手で殺した瞬間、記憶を取り戻す過程も王道すぎる普通の悪役。
コードギアス」のルルーシュとナナリーかよというツッコミはしてもいいのか。
悪役ポーズを見る限り、完全に狙ってるでしょ!!!

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それは置いておくとしても、彼の軸は彼の妹で、主人公ではない。
妹が大事で、もう一度会いたくて、でも「会える」瞬間になったら、変わった自分を見られるのが怖くて。
彼が怖気づいた結果、あの世でも奈落でもない狭間としての館が出現した。
……なんてはた迷惑なシスコン、以外の言葉が見当たらないぞ。
序盤に見られる、負けん気の強さや神経質さも好きだったが、あれもほぼ全部演技だしなあ。
この可愛いドヤ顔も演技。いいけど!!可愛いからいいけど!!

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このイケてるメンも別人のトレース。いいけど!!格好いいからいいんだけど!!

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ちなみに、彼の一番好きな台詞は「『大丈夫』 それだけは『嘘』であってはいけない言葉だった」だ。
妹を安心させてやる、兄としての矜持。
「さすがシスコン、兄妹関係のことに関しては名言吐く」と感心した。割りとマジで。
緋影に関して、考えれば考えるほどに「緋影ルートのヒロインはウサギちゃんだよな…」と思わざるをえない。
 
 
・鉤翅 

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本妻ならぬ本夫
幼少期に主人公と結婚の約束をし、サマーキャンプで帰らぬ人となったナッちゃん。
自分が溺れ死んだ後も、彼女との約束を糧に10年間、館で待ち続けていたのだからメイン攻略者は実質彼では。
鉤翅ENDへの移行、めっちゃ雑だな!!と思ったものの、彼が関わるエンドはどれも好きだ。
BEST END と、鉤翅ENDと、大団円エンド。
特に最初に迎えた鉤翅ENDで流れた曲が、前述の「傷」だったため、そりゃあもう好き。
館で、現実世界の新婚生活を文字通り夢見続ける2人。
どうか穏やかな夢を、と言いたくなるような甘さと哀しさがあった。

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ちなみに、いくら綺麗事だと言われようが、大団円ENDが私の一番好きなエンドだ。
あの時に「雨が止むまで館の中で待とう」の一言が主人公の口から出さえすれば、ナッちゃんは死なず、カズヤも健康体で。
私自身が「おいおい、雨宿りしてけばいいだろ」と苛ついた所でもあったので、そこの未来改変ポイントにはグッときた。
彼らの世界に干渉出来た、という手応えのある選択肢を選ばせてくれたことが嬉しい。
いや、まあ大団円エンドだと、ガチで緋影君の出番が一切ないんだけどさ。
 
 
・鴉翅

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個人的最萌え
主人公の闇堕ち場面で「君の居場所はここだ!」と叫んでくれた瞬間、オチた。あれは惚れる。
ただでさえ主人公大好きな年下チャラ男系はタイプだっていうのに。
ストーリー感想で「日常で起こった事故のトラウマを、非現実の経験で乗り越える展開が嫌い」だと言ったが
彼は、現実世界できちんと事故のトラウマを克服しようとした所が好きだ。
事故が起こった後、遠くへ引っ越したものの高校入学時に主人公と再会。
その後は毎朝、主人公と待ち合わせして通学してくれたアプローチの仕方とか、
昔の弱い自分を恥じて、今は明るく振る舞おうとしているところとか。
10年前の事故に縛られている、主人公とタクヤに向かって
ふたりとも弱虫だよ。
 あの頃いじめられてたオレよりずっと弱くて、怖がりで、臆病で…見ててイライラする…!
 なんでそんなふうになっちゃったワケ!?
 オレにないもの全部持ってたはずなのに、」
と言い放った所には、彼の苛立ちにものすごく共感した。
頑張った、頑張ってきたんだよ彼は。悲しみに浸り続けることを拒否して、ものすごく頑張ってきた。
 
だからこそ、その努力を放棄した鴉翅ENDの退廃さにグッとくるんだよなあ〜〜〜〜〜!!!!

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……紅百合ちゃん。君はアイちゃんじゃない。紅百合ちゃんだ。
 オレも、弱くて頼りなかったアキラじゃなくて、キミを守ってあげられる鴉翅で……
 ねえ……この世界で全部やり直そーよ。
 つらい現実じゃなくて、幸せな夢を見よう?……ね?
この言葉を最高と言わず何と呼ぶんだよ!!!マジで!!!
ここでエンド分岐の選択肢が出た瞬間、見る見る見る、今すぐ夢見るレッツゴー!!とその手を取って、鴉翅ENDへ直行した。
本当に興奮したね、ここは。
今まで精一杯頑張ってきた男が、もういいと、自分はもう幸せになりたいと。
そんな風に訴えかけてきたら受け入れてあげたくなるじゃん!!癒やしてあげたくなるじゃん!!それが女心ってもんじゃん!?
もう愛だとか恋だとか 難しく 言わないで 私の子供にな〜りなさい〜〜だよ!!(脳内で流れ出す中島みゆき

主人公が彼の甘えきったねだりを受け入れると、チャラ男っぽさの中にエロさが入るのもたまらん。

いいじゃん。キスしよ?  キス。きっと気持ちいーよ。
と言われた時は、ほんっっとに最高だな、お前!!!!と手近な壁をどんどんしてしまった。
うんうん、気持ちいいよね。気持よくないはずないもんね。
今まで頑張ってきたこと、ぜ〜〜〜んぶほっぽり出してさ、好きな子と2人きりで好きなコト出来るもんね。
肉体的な接触の上に精神的解放感が加わり、ただただ快楽が伝わってくるような文章にやられた。
その次の
紅百合。逃げたいなら逃げていいよ。
 怖いこと、悲しいこと、つらいこと……。嫌なことから、好きなだけ逃げればいい。
 でも、オレからは逃げないで。逃げる時はオレを連れてって
も良かった。良すぎるよ。
現実世界で怖いこと、悲しいこと、つらいことから逃げようとしなかった彼が言うからこそ、ここまで堕落の味は深く甘く。
最萌えだよ、これは文句なしの最萌だよ、鴉翅くん!!どうぞ館で醒めない夢を!!
 
 
・山都

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担当は共依存
メインカラーがブルーということで、スチルが全体的にめちゃくちゃ美しかった彼。
ただ序盤で闇堕ちしかけ、それ以降は一人温室にいたのでどうにも印象が薄い。
いや、スチルはめちゃくちゃ美しかったけど!!

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・紋白

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仮面の下の正体は、サマーキャンプ中の事故で意識を無くし、10年間一人で館に留まり続けたカズヤ。
恋愛的な萌えというよりは庇護欲をそそる彼だが、紋白/カズヤルートのvs緋影は熱かった。
緋影の強さと非情さを知りつつ、それでも緋影に挑む姿はかなりヒーローチック。
……返り討ちにあって闇堕ちしちゃうんだけどね。緋影は普通の悪役だからしょうがないね。
島みやえい子「黒蝶のサイケデリカ」の2番サビ「だから心の目は閉じないで 感じて 感じてこの風を」はここの彼のことを指しているのかなあ、なんて思ったり。
彼と鴉翅とのショートエピソード「取り合い」は、一番好きなショートエピソードだ。
猫のように、主人公にじゃれつく2人が可愛い。
「もうダメ、おしまい!」と言われ「えー。」「えー。」と拗ねて見せるとこが特に可愛らしかった。
個人的に好きな台詞は「……いい。つらいのも悲しいのも、耐えられる。でも、寂しいのだけは、嫌。
うんうん、寂しいのだけは一人で解決出来ないもんな。嫌だよな。
 
・紅百合

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乙女ゲーの主人公に感想いるか!?とも思うが、6章の彼女の言葉がすごく好きなので。
聞いても教えてもらえない。口を開けばはぐらかされる。
 ――仲間、のはずなのに。そう思っているのは、私だけなのか。
 私だけ、取り残される。
皆と一緒にいるはずなのに、心がひとりぼっちだった。
 守られているはずなのに、胸がきりきりと傷んだ。
なにが『わかった』なのかわからなかったけれど、納得したふりをして笑みを浮かべた。
 話し合いを放棄し、心にもない嘘を吐いた。
 私の仲間でもあるはずの皆なのに、皆にとっても私は仲間のはずなのに
どれほど教えて、と訴えても、誰も真実を教えてくれない辛さ。
そりゃあストレス溜まるわ。オタサーの姫状態も大変。
 
 
続編である「灰鷹のサイケデリカ」も発売決定している。
今回はストーリーがツボとは合わなかったが、次作もキャラクターデザイン&原画:結賀さとる らしいので購入予定。
というかこのキャラクターPVを見た瞬間、購入決定だよ!!
館に降る雨は、街へ降る雪へと。
何より、民族調謎言語コーラス音楽と「幻想連鎖アドベンチャー」なんて、私が好きにならないわけがない!!