裏と表で踊って踊って ヒトリエ「DEEPER」全曲感想

DEEPER

 
個人的お気に入り度 4.8 / 5
 
アニメ「ディバインゲート」OP「ワンミーツハー」が収録されている、ヒトリエの2ndアルバム「DEEPER」を聞いた。
ボカロPとして一部では有名だったwowakaが率いるバンドで、彼のアルバムをちゃんと聴きこんだのはこれが初めて。
前半は「好きだけど、なんか似たり寄ったりなボカロ風のアレンジばっかだなあ」という印象だったが
後半になるにつれて、どんどん引きこまれていってしまう一枚だった。
特に6曲目「フユノ」が個人的ドツボな曲だったので、お気に入り度はかなり高めの4.8。
フユノ

フユノ

iTunesの視聴だとイントロのみだが、サビがこれまたいいのなんのって。

 

 

1. GO BACK TO VENUSFORT 
GO BACK TO VENUSFORT

GO BACK TO VENUSFORT

愛の不整脈と正論の混雑と 今日の間違いを憂いてヴィーナスフォートへ行け 

この最初から音が詰め込まれていく感じが、ボーカロイドPだったwowakaらしいなと感じる。
単語も文脈関係なく撒き散らして、ただ中毒性だけがあるというか何というか。
サビはきっちりキャッチーなメロディなところも、それっぽさに拍車をかけている。
個人的には「反応して!  想像膨らませて!」と「0コンマ何秒の音楽の快楽で」というフレーズがツボ。
 
 
2.シャッタードール
シャッタードール

シャッタードール

そしてあたしに灼き付ける 「これでいいの?」って揺れる心も

サビ「瞬きして 私に 灼き付けて」の歌唱といい、どこかサイレンめいた雰囲気の一曲。
そこの滑らかに上がっていくファルセットが癖になる。
被写体の少女と撮影者のあなた。
瞬きをすることがシャッターを切ることと同意なら、みんな誰しも自分の人生の撮影者であり被写体だよね……みたいな話でいいのか?
ただ単に刹那的な関係を描いたラブソングかもしれないが、個人的には結構気にいっている一曲。
 
 
3.ワンミーツハー
ワンミーツハー

ワンミーツハー

「ねぇ! その心を貸してよ、 扉を開けてしまうから」

アニメ「ディバインゲート」OP。
この曲をアニメタイアップで耳にしなかったら、ヒトリエのアルバムを手にすることもなかったわけで。
何かしらのタイアップって、やっぱり効果あるんだろうな。
アルバム通して見ても、気合が入っているなあと感じさせる一曲。
ラストサビのアレンジや、Cメロの存在からして。
歌っていることは「私の裏側の私から見た私」……こういう題材、本当にこの人は好きだよな。
私にはあんまりピンとこない要素だ。
ただ「ひとりきりにはなれないって 叫ぶ 叫ぶ 私の心の蔵」というワンフレーズは結構お気に入り。
何よりCメロが良かったらいいんです。
Cメロさえ決まれば、どんな曲も私のお気に入りになります。
 
 
4.Swipe,Shrink
Swipe, Shrink

Swipe, Shrink

街中にはびこる 君の鳴き声も喘ぎ声も アンサンブルになる愛の形もさ 聞こえてるから

これまでの流れを、ガラッとまではいかずとも確実に変えるようなファンクロック。
スガシカオなんかが好きな人は、ハマるのでは。
サビのリフレインに匂い立つ、脳内ドラッグ感が好きだな。
バリバリに尖ったエレキギターのノイズが、快感すれすれを掠っていく感じがいい。
 
 
5.トーキーダンス
トーキーダンス

トーキーダンス

今すぐそう 舞台に立って笑って泣いて 踊っていいよ 踊っていいよ

思いっきり「ワールズエンド・ダンスホール」を想起させるイントロ。
イントロに独自のカラーを持っているアーティストっていうのは強いよなあなんて思う。
一音聞いただけですぐに「あ、これあの人の曲じゃない?」って分かる、名刺代わりみたいな色。
ここ最近だと、山下達郎が嵐に提供した「復活LOVE」とかね。すぐ分かるよね。
……それはさておき。
ワールズエンド・ダンスホール」と関連があるのかないのかは分からないが、今曲も「踊る」がキーワードになっている。
今すぐそう 舞台に立って笑って泣いて 踊っていいよ 踊っていいよ
この「踊っていいよ」というのは許可で、誰が誰にと言ったら、自分が自分に言っているわけで。
要するに自己肯定の歌なんだよな、このアルバムに収録されている曲の多くは。
眼を閉じたくなるような今日も ぶっきらぼうに泣く昨日も  それがあたしと言わせてよ!」が印象的。
素の自分に戻れるのは、ただ自分の部屋にひとりきりでいる時だけ。
ひとりきりの時でさえ、誰かが「いいよ」と言ってくれないと一挙一動が怖い。
そして、みんな「いいよ」と自分に言ってくれるほど暇ではないから、自分で自分に言うしかないのだ。
集めた夢の中 恥ずかしくたって 踊っていいよ 踊っていいよ」と。
私も、そんな自我のもろさに思い当たりがある人間なので、この曲はかなりのお気に入り。
でも唐突なポエトリー・リーディングは笑うので、やめてください。
 
 
6.輪郭
輪郭

輪郭

掴めない理想ばかり歌って 当たり前に今日も忘れるんだ

メロディー・アレンジ共に、聞こえてきた瞬間、肌に馴染むような音楽だった。
ボーカルの声質は人を選びそうな感じがするが、そこを除けば驚くほどにキャッチー。
イントロからアウトロまで、一連の流れがすんごく好き。
次々に流れてくるフレーズが、ことごとく予想を裏切らない。たまらないな。
歌詞の内容は、まあ今までの曲と似たり寄ったりだけどそれもまたいい。
……ただ本当に「裏と表」というモチーフが好きだな、この人。
終わらない理想を読み耽って 当たり前の今日を思い出すんだ」には中々ハッとさせられたり。
私も読書が好きでよくするけど、その時間は他人の言葉に入り込んでいるだけで、自分の人生を生きている訳じゃない。
目の前にあるのは、いつだって当たり前の今日でそれが嫌だ、という感覚はとてもよく分かる。
 
 
7.フユノ 
フユノ

フユノ

私は 私は 冷たい季節に夜を待っていた

アルバム内で唯一、イントロがピアノオンリーの散文詩めいた曲。
個人的ベストトラック。
序盤の跳ねるような無邪気さと、後半に向かうにつれ色づくように楽器が増えていくアレンジが好きだ。
エモーショナル全開な雰囲気が最高
サビ「踊りたいんだって 止めないで 震えて動けなくなる前に」というフレーズには「本当にどんだけ踊りたいんだよ」とつっこみたくなったものの。
ここのファルセットが心をくすぐったくさせるほど可愛いので良し!!
楽曲が訴えかけてくる感覚と、自分の嗜好が上手く噛みあうとここまで病みつきになってしまうのがすごいね、音楽って。
ラスト付近の「笑いたいんだって やめないで」の開放感には、どうも涙腺が緩んでしまう。
いやあ、何だろ…好きだな。すっごく好き。
 
 
8.バスタブと夢遊
バスタブと夢遊

バスタブと夢遊

そんな風にさ誰かのこと 誰だって殺しちゃってんだ。 いつだってそれに泣いてる。

AメロとBメロ、サビとどれもテイストが違うので、聞きごたえのあるファンクロック。
特にBメロからサビまでの流れで、たちまち魅了されてしまった。
あのドラムが刻むリズムは卑怯でしょ、ファンキーすぎてしびれる。
間奏で炸裂するエレキギターも、破壊と混沌って感じで超格好いい。
 
 
9.後天症のバックビート
病原菌みたいに蠢いている 共感されることのない感情
楽曲単体は好きな雰囲気だが、いかんせんこの流れで聞くとちょっと弱い。
3曲目あたりの前半に配置されていたら、違和感がなく聞けたかもしれない。
 
 
10.MIRRAR
MIRROR

MIRROR

泣いてるのに 泣いてるのに 泣いてるのに 君はいないな。 

7曲目「フユノ」のと似通った、叙情的な一曲。
個人的にはかなりお気に入りの一曲。
何がいいかっていったら、やっぱりサビ「泣いてるのに」のリフレインだ。
あそこの、甘ったるいような掠れて今にも泣き出しそうな、そんな歌唱がツボ。
中盤でサウンドの雰囲気を変えて飽きさせないようにしているところとか、エレキギターの心地よさとかも好きだ。
鏡に映っていた君はもういない。
ウラとオモテ、踊る踊らないを歌い続けていたこのアルバムに、相応しいラストナンバーだと思った。
 
 
以上。
「当たりだわ、これ」と、聴き終わった瞬間に思えるほど満足度の高い一枚だった。
近いうちにファーストフルアルバムの方も手を出したいなと思いつつ。
WONDER and WONDER(初回生産限定盤)(DVD付)

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 ちなみに私のボカロ史についてはこちらで。