気軽にやれる短編フリーゲームがやりたいなと思い、サークル:小麦畑 作「好奇心は何かを殺し」というノベルゲーをプレイした。
1本道のノベルゲーであり、ラストに選択肢が2つ出るだけという簡易なホラー風味のもの。
初回プレイは7分、2周目はエンターキー長押しで30秒ほどで終わるボリュームだが結果的に8周した。
だって雰囲気が私の好みドストレートすぎる。
だって雰囲気が私の好みドストレートすぎる。
これで好きにならないわけがない。
ビジュアルもSEもBGMも、不変ながら確実なクオリティの高さを感じさせるものばかりだった。
赤とオレンジ、そして黒のカラー対比が好きな方なら絶対気に入る出来だ。
公式サイトの方に、ほぼゲーム文章そのままの小説もある。
公式サイトの方に、ほぼゲーム文章そのままの小説もある。
私は先に小説の方に目を通し、その設定に惹かれたのでゲームをDLした口である。
以下、ネタバレ感想。
<ストーリー>
一言で言えば、金魚が投入されたミキサーのスイッチを入れるか否かという話だ。
ちなみにこういった芸術的アートの展示は2000年代後半、実際にデンマークで行われている。
現実で行われた行為とゲーム内で行われた行為こそほぼ同一だが、両者の間には決定的な違いがある。
前者は「芸術」で後者は「調理」という点だ。
主人公は喉が乾いていた。
生しぼりジュースで喉を潤したかった。
材料がオレンジだろうが、赤金魚だろうが、調理の過程が少し刺激的になるだけで出来上がるものは単なる飲料である。
生しぼりジュースで喉を潤したかった。
材料がオレンジだろうが、赤金魚だろうが、調理の過程が少し刺激的になるだけで出来上がるものは単なる飲料である。
だからプレイヤーである「私」は、ミキサーのスイッチを押した。押せた。
あじを三枚おろしに出来る人間が、金魚をミキサーにかけることを躊躇うのは、おかしいだろう。どう考えても。
この「調理」というどこまでも残酷になれる行為を、ゲームで鮮やかに描き出したところに私はグッときた。
好奇心なんてものより、よほど多くの命を手酷く扱え、かつ罪悪感をほとんど感じさせない行為。
タイトルに冠されている「好奇心」は、個人的にはスパイス程度だと思っている。
本質はやはり「喉が渇いた。」ではないだろうか。喉が渇いたから、ジュースを買おう。ないなら作ろう。
ビジュアル面では、主人公がスイッチを押すか逡巡している時に現れたものが強烈だった。
最高すぎて度肝を抜かれるレベル。
金魚ジュースのストローが、まるでミキサーの刃のように鋭利かつ、万華鏡のように幻想的に組み合わされている。
卓越した構図に加え、色彩補正の効いたパンチの強いカラーも見事。
このビジュアルが見れただけでも、ゲームをプレイした価値は十二分にあったと断言できる。
サウンドの方も一言の文句もないぐらい、丁寧に挿入されていたと感じた。
最初の幕開けとウィンドウが閉じる時に鳴る、ぽとん、というたった一音の水音。
遠くの方から微かに聞こえ始める祭り囃子。
金魚を投入した際の、どぼん、という重い水音。
どれもゲーム内の和風かつ怪しげな雰囲気をじっくり高めていってくれるものだった。
評価が個人のツボに左右されるタイプのノベルゲーだと思うが、私の中では満点。
同作者のゲームを片っ端からプレイしたいと思わせるぐらいの魅力があった。
次は「デンシャ」というゲームに挑戦してみようと思う。こっちも面白かったらいいなあ。
次は「デンシャ」というゲームに挑戦してみようと思う。こっちも面白かったらいいなあ。
(関係ないが、この感想を書いている間ずっと中島みゆき「まつりばやし」が脳内を駆け巡りつづけていた)
人は誰でもまつりの終わりを知る まつりばやしに入れなくなる時を知る
↓ 澁澤龍彦「撲滅の賦」でも、金魚はざりがにカレイドスコピック的に喰い殺されるので、おすすめ