個人的お気に入り度 4 / 5
2000年代後半に爆発的なブームを起こした同人ゲーム「ひぐらしのなく頃に」シリーズ。
このアルバムは、そのメディアミックス展開の際に起用された楽曲を集めたものだ。
OVAに至るまでのアニメ関連曲、更にはファンに存在自体が惨劇と言わしめた実写版の主題歌までばっちり収録されている。
雰囲気も雑多ながら私好みでかなりの満足。
「ひぐらしのなく頃に」については、コミカライズを多少読んだ程度の知識しか持ってない私でも十分に楽しめた一枚。
特に半数が島みやえい子の楽曲なので、彼女のファンだったら一見の価値はあり。
イントロ!!もうこのイントロが全て!!
ホラーテイストコーラスなんて私が気に入らないわけがない!!!
しかもこのイントロを逆再生すると3曲目「奈落の花」に繋がるという凝ったギミックまで仕掛けてある。最高。
全体の根底にある不穏な雰囲気全開の電子音アレンジは中沢伴行/高橋一矢両名によるもの。
ただBメロや間奏のメインにピアノを用いることにより、仄かな希望を感じさせるところがこれまた巧い。
何回も繰り返し聞くと慣れるのだが、初耳時は本当にこの曲が怖かった。
島みやえい子のどこか無機質な声が、血まみれの「惨劇」を呑み込んでしまうような底知れなさを感じさせるのだ。
「ひぐらしのなく頃に」シリーズの代表曲を聞かれたら絶対に私はこの曲を推す。
"Among the nonsense tragedies, what on earth you are looking for?You only have to be honest to yourself and your own fate."
(「意味のない悲劇の中で、いったい何をお探しですか?
あなたは、あなた自身とその運命について素直になりさえすればよいのです」)
OPとは対照的に内省的で繊細な歌声とアレンジ。
少なくとも恐怖や血の匂いは感じさせない穏やかな仕上がりではある。
ただ全編英語歌詞の日本語訳を読む限り、この曲が一番竜騎士07作品のセンスを強く感じる。
上記のフレーズにしてもそうだし、ラストの
「今、ここに誰もいないことを知るものは、誰もいない。私を除いた世界中のすべてが、まったくどうかしているのだ。」
「今、ここに誰もいないことを知るものは、誰もいない。私を除いた世界中のすべてが、まったくどうかしているのだ。」
「あなた(たち)が差し控えてもかまわないと思っている容赦とは、何ですか。
あなた(たち)が作り出してもかまわないと思っている安寧とは、何ですか。
だからどうすればいいの、だからどうだというの。 私が私を押しとどめているうちは、どうか私の邪魔をしないでよ」
あたりは、本当に竜騎士07独特の文脈だと思ったがどうなのだろう。
この曲の作詞:interface で検索してもひぐらしシリーズ以外の目立った作詞は見当たらない。
かといって竜騎士07と同一人物でもなさそうだし…謎な作詞家である。
1曲目と同じアーティスト達が担当した曲ながら、方向性は真逆となっているアニメ2期OP。
前曲が底知れない絶望なら、この曲はふりしぼった希望という感じだ。
メロディー自体はキャッチーながらも、イントロとアウトロが前曲同様不吉なアレンジなのが余計にそう感じさせる。
希望に向かって走りきれずにもがいているような歌詞が、胸を締め付けてきて個人的にはかなり好きな一曲。
04 対象a Vo.anNina(Annabel×bermei.inazawa) [TVアニメ「ひぐらしのなく頃に解」ED]
あなたの亡骸に土をかける それが禁じられていたとしても
純粋なまなざしの快楽には 隠しきれない誘惑があった
ピアノとアコースティックギターによるアレンジにより、どこかジャズめいた空気を醸し出している2期ED。
メロディー自体に起伏はなく、雰囲気で聴かせるタイプの楽曲だろう。
ひぐらしシリーズというより、アニソンとしてはかなりの異質。
ただ歌詞は2曲目同様、作詞を interface が担当しているので問題なく作品に合っている。
「罪があるのは諦めているから 罰があるのは求めすぎるから」というフレーズに、竜騎士イズムを感じるのは私だけではないはず。
ちなみに個人的にこの曲で一番気に入っているのはタイトルである。「対象a」という意味深さがいい。
これまたイントロが独特で最高だな!!
ファンキーなロックのベースに、鉄板を歩むハイヒールのような高音がアクセントを刻む。
ただAメロまでの雰囲気は良かったものの、サビのメロディーはイマイチ。あの唐突さはないだろう。
こんな唐突に希望を見せつけて欲しくも、解決の手段を示して欲しくもないと個人的には思う。
そこに目を瞑れば「Super scription of data」と響くコーラス等気に入るポイントは多い。
ちなみにタイトルは Superscription:上書き という意味を持つ単語を分解したものだろう。
何らかの意図がある…のだろうか、どうかは不明。
4曲目の流れを汲む、ジャズ的でエモーショナルなナンバー。
メロディーは相変わらず平坦なものの、この浮遊感がクセになるのも分かるというものだ。
歌詞で言えば上記の他に「言葉に置き換えて 悲しみを忘れた ああ いま 何をなくしたのだろう」
「いつもすでに欠けている 人の祈り」というフレーズが個人的にはツボ。
ぼんやりとした抽象的な言葉選びながらも、伝えたいことは分かる感じが好きだ。
ちょっとちょっとダメですよ 怖い話は苦手なのです(汗)
タイトルから分かるように、これまでの雰囲気を色んな意味でブチ壊す萌え声満載のキャラソン。
単体で聞いたならたぶん好きにはならない楽曲だが、このアルバム内の流れで聞くと良い緩衝材になっている。
ハイテンションな掛け声とキャッチーなメロディーもオッケーオッケー、もっとやって!!と思わせてくれる。
じゃんけんぽんで決めた鬼で 追いかけちゃう あっち…こっち…
前曲は褒めたが、これはあまりにもダメすぎ。
ベースいる!???と叫びたくなるほど低音すっかすかのアレンジがあまりにも楽曲内で浮きすぎだ。
BPMもやけに速くてどうかと思うし、何よりソロボーカルなのでテンションの空回り感がキツイ。
もはや聞いているこちらまで妙にいたたまれない気持ちになるのd辛くなってくるほど。
あなたは今どこで何をしていますか? この空の続く場所にいますか?
ひぐらしファンの中では名曲と名高い「you」のオーケストラアレンジバージョン。
タイトルに冠されている Visionen im Spiegel はドイツ語で「鏡の中ビジョン」という意味らしい。
ひぐらしの声が響くイントロとアウトロは素晴らしいと思うが、どうにもBメロからの管楽器がうるさい。
特にサビが壮大というよりは、単にやかましいと感じてしまうのが残念。
間奏のピアノソロ程度並みに全体のアレンジを抑えてくれていたら良かったのに。
10 WHEEL OF FORTUNE (運命の輪) Vo.島みやえい子 [実写映画「ひぐらしのなく頃に」主題歌]
何度あがいても逆らっても 誰も逃れられない 運命の輪は ひぐらしがなく頃 回りだすよ
島みやえい子担当楽曲だが、正直に言えば微妙。
メロディー、アレンジ共に緩急がなく聞いていてつまらない。
間奏の謎めいたコーラスを挟み、ラストサビからCメロに移る頃にようやくいいかもと思えてくる。
アウトロの電子ストリングスが鳴り響いた後にロックテイストで締める感じは好きなのだけども。
タイトル「ディオラマ」はジオラマとも言う、箱物の演出法のこと。
背景を描いた幕の前に小道具や人形を置き、証明の加減によって立体感を与える…なんて何とも意味深なキーワードだ。
イントロの丸みを帯びたシンセサイザーの音が、確かに玩具っぽい印象を植え付ける。
ピアノとベースが奇妙に歪む、この独特なアレンジは流石の一言。
後半から一気に狂い始めるエレキトリックさも「これぞ、ひぐらし!!」という感じがして好きだ。
1曲目「ひぐらしのなく頃に」から自然の陰鬱さを取り除いた代わりに、おもちゃめいた都会の冷たさをプラスしたような作風。
同じタイアップ曲でも、有機物の闇と無機物の恐怖を差別化して表現しているところが素晴らしい。
一昔前のマイナー調J-POPか!?という感じがする一曲。
個人的には好きな範囲なのだけど、ひぐらしシリーズらしいかと問われると首をひねる。
ロックなエレキギターがキャッチーなイントロも好きなのだけど、どこか物足りない。
何だかんだ言って彼女らしいコーラスも入ってはいるのでトータルで見ればまあ、アリ。
ホラー・ロックから内省的なミュージック、萌え声満載のキャラソンまで聞いているこちらを飽きさせない構成だった。
ベストトラックが「ひぐらしのなく頃に」なのは譲れないが、その他の曲も聞いていて楽しかったというのが率直な感想。
このテーマソングコレクションの他にも色々とボーカルソングを集めたアルバムがあるそうだ。