陰鬱的悪夢の層 THE DOORS 「WAITING FOR THE SUN」感想

太陽を待ちながら
 
個人的お気に入り度 5 / 5
 
1960年代に活躍したアメリカのロックバンド THE DOORS の3rdアルバムを聴いた。
洋楽にはまったく詳しくない私でも、ボーカル:ジム・モリスンの名は知っていたので世間的にはかなり有名なグループではないだろうか。
手に取ったきっかけはBSにて放映されているドラマ「植物男子 ベランダー」のオープニングに
このアルバムのファーストトラックである「Hello , I Love You」が用いられていたからだ。

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抜粋されていた箇所は前半の爽やかで明るい部分だったため、特に何の気負いもせず聞き始めたのがまずかった。
1曲目の後半、そして2曲目からは何とも言えない世界観全開である。
調べてみたところジム・モリソンはかなりのドラッグ中毒だったらしいし、そんなサイケデリックな狂気が色濃く顕現した一枚。
個人的にはすごく好きな感じの狂気だったので個人的お気に入り度は5。

 

 

1.Hello,I Love You
Hello, I Love You

Hello, I Love You

 Hello , I love you   Won't you tell me your name?
(ハロー、君が気に入ったよ  名前はなんて言うの?)

サイケデリック・ロックとはこういうのを指すのだろう、たぶん。
ギターとドラム、それにシンセサイザー的な音が私でも聞き分けられるほど独立して存在している。
前半はまだ朗らかな体裁を保っているのだが、曲が一端フェードアウトした後半には明らかにこう…
「ドラッグでもやってるよね?」と言いたくなるほどの支離滅裂さ。
雑音に近くなっているギターが耳障りなようでクセになる。
 
 
2.Love Street 
Love Street

Love Street

 She has me and she has you

(そして私とあなたがそばにいる)

アコギメインのアレンジがいきなり哀愁さを漂い出す一曲。

間奏でいきなりメインを張るピアノがこれまた仄暗いヴィンテージ感を出している。
朗読パートも入ってきて、もう何が何やら。
ヴィンテージだからお洒落…と言えるほどの燦めく雰囲気がないので逆に不気味。
歌詞も「She has robes and she has monkeys (彼女はローブとサルを持っている)」とか
どういう意味だ!?アメリカにはそういう格言みたいなのがあるのか!?
 
 
3.Not To Touch The Earth
Not to Touch the Earth

Not to Touch the Earth

 Moon , moon , moon

(月が昇る、月が昇る、月が昇る)
 聞き終えた時の私→ (((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガク
完全にホラーテイストの曲。
ファミコン風の音源、いわゆる8bit音楽でホラー系が好きな方なら気に入ること間違いなし。
エレキとシンセサイザーの人工的サイケ感が個人的には怖すぎた。
しかもそのフレーズが後半で徐々に狂っていくとこが更に恐怖心を煽る煽る。
極めつけはアウトロのジャーーーン!!!!
…初耳時は心臓が止まるかと思った。
 
 
4.Summer's Almost Gone
Summer's Almost Gone

Summer's Almost Gone

 When summer's gone Where will we be ?

(夏が過ぎ去ってしまった時 僕たちは一体どこにいるだろう)
前曲よりはまだ明るい雰囲気なものの、それでも悪夢からは覚めてない、薄暗い曲である。
ピアノのちゃちな音と底深いギターの音が、物悲しさを更に煽る。
まさに残暑も過ぎ去った寂れたビーチの夕暮れあたりに流れてそうな曲だ。
1分34秒からの感想がキレイで好きだ。
オクターブほど甲高い鍵盤楽器の単音がこう、いいよね!!
 
 
5.Wintertime Love
Wintertime Love

Wintertime Love

You are so warm  My wintertime love to be
(君はとても暖かい 冬の恋にぴったりだ)  
明るい!!明るいクリスマスソングだ!!すごい、どんなバンドでもクリスマスソングは明るくなるものなんだ!!
…と思ったがクリスマスなんていう単語は一切出てきてないため、別にクリスマスソングではなかった。
R側からパイプオルガン、L側から電子オルガンのうきうきした旋律が流れているからそう思うのも無理はないと思う。
3拍子のリズムを刻むドラムが、童謡めいた感じを醸し出しているようにも思えるし。
ただ1分54秒と短いため、夢の層が見せた刹那の楽しさ…みたいな感じがしなくもない。
 
 
6.The Unknown Soldier
The Unknown Soldier

The Unknown Soldier

Bullet strikes the helmet's head
And It's all over for the unknown solider
(銃弾がヘルメットに当たる それは終わりを意味する、名もなき兵士にとっては)
ブックレットの解説には、演劇的で反戦的な内容の一曲とある。
演劇的なのは同意するが(イントロとアウトロの拍手音やら曲中のセリフのやり取りやら)反戦的か、これ?
別に戦争を否定しても、美化してもないように思える。
ただテレビ越しに戦争風景を見る子どもたちを、狂気の目で捉え茶化したように歌っているように聞こえた。
メロディーとアレンジが長調で明るいのが、本当に狂ってます!!って感じで私はゾッとした。
1曲目と同じように、アウトロは支離滅裂な慟哭だし…うーん…マリファナでもやってる?
 
 
7.Spanish Caravan 
Spanish Caravan

Spanish Caravan

I have to see you Again and again
(私は君に会わなければならない 何度も何度も) 
前半はアコギとフラメンコギター(?)がメインのシンプルなアレンジなのだが、これまた後半で化ける。
例えるならヒッチハイクで乗り込んできた若者が、いきなり強奪者に変わった、そんな感じだ。
イントロから数えて60秒の、アコースティックギターセッションはため息がでるほど美しい、
美しいというか、心の奥底にじんわり響くような音色をしている。
それだけに1分50秒あたりでエレキギターが入り込んできた時の「…ん!?」という不穏さ。
そこからはもうシンセサイザーエレキギターとドラムの暴力的な支配感に慄くしかない。
やっぱりどう聴いても「絶対に君らスパニッシュ・キャラバン襲っただろ…」としか思えない。
 
 
8.My Wild Love
My Wild Love

My Wild Love

The devil was wiser
(悪魔はあいつより頭がまわる)  
6曲目よりもさらに、演劇のような作為を感じる曲。
朗読に多数の人間のハンドクラップとフィンガースナップ、野太い合唱が絡みついている。
これまた、悪夢めいた曲だなあと思う。
歌詞カードの日本語訳だと 「My wild love」が「奔放な彼女」になっているが本当か?
全然しっくりこないのだけど。
 
 
9.We Could Be So Good Together
We Could Be So Good Together

We Could Be So Good Together

Angels fight Angels cry Angels dance and angels die
(天使は抗い 天使は叫ぶ 天使は踊り、そして死ぬ) 
メロディーだけ聞くと、このアルバム内で見れば多少ポップな感じがしなくもないが
歌詞と合わせるとやっぱり、悪夢。
健全なラブソングにはどうしても聞こえない。
アレンジも1分9秒のところでいきなりエレキギターの高音が聞こえた時は、心臓に悪かった。
あの挿入ではまるで悲鳴だ。
 
 
10. Yes , The River Knows
Yes, The River Knows

Yes, The River Knows

On and on it goes   Breathe under water till the end
(どんどんと 終点にたどり着くまで 水の下で息をしながら) 
まともだ!!まともなバラードだ!!
スネアドラムとベースとピアノの三重奏は最後まで暴走することなく、終始穏やかに輝いていた。
それだけで妙に感動する。
2曲目で述べた「ヴィンテージだからお洒落」というフレーズも難なくクリア出来る仕上がりだ。
これなら深夜のジャズバーで流れていてもおかしくない。
ラストサビでにわかにエレキギターが盛り上がってきた時は一瞬びくっとしたがそれもいいスパイス。
 
 
11. Five To One
Five to One

Five to One

Get together one more time
(もう一度 一緒にやろう) 
このアルバムのラストトラックに相応しい一曲だった。
個々のソロの美しさも、悪酔いしてるかのようなボーカルも、途中で入り込んでくる悪魔のようなコーラスも。
フェードアウトしていくアウトロの向こう側で何か叫んでいるところまで完璧な悪夢。
 
 
 
全体を通して、あまり歌詞に物語性があるとは思わない。そもそもが違う言語なので私が読み取れなかっただけかもしれないが。
ただ音に物語性があった。
個々のソロはとても綺麗だが、重なり始めるとノイズに近い響きになっていく。
そういった変化の過程がなんだかとても独自性があり素晴らしいように思えた。
洋楽感想を書くのはこれが初めてなので上手く言えないが…。
THE DOORSというグループに初めて触れたのがこのアルバムで良かったと思う。
「太陽を待ちながら」と言いつつ太陽が昇ってくる気配が欠片もない、それを望んでもいないようなこの一枚で。