「二階堂」と「いいちこ」と「鬼ころし」…なぜこんなにも焼酎のCMは素晴らしいものが多いのか


一年に一回、公開される「大分麦焼酎二階堂」のCM。
その2015年版「孤独の風」を見た。

大分むぎ焼酎 二階堂 25度 瓶 900ml  

大分むぎ焼酎二階堂 CM 2015 「孤独の風」篇 - YouTube

完成もなければ、後悔もない。 ただ描き続ける

毎度のことながら、なぜ二階堂のCMはここまで芸術的センスにあふれているのか。
流れ続ける郷愁とノスタルジーと寂しさ。
30秒という短い時間ながら、そこには確かな物語性があり
上質な詩集を読み終えたかのような満足感がある。
思い返してみれば、焼酎のCMには他にも素敵だと思えるものがたくさんあった。
その一部を少し紹介したい。

 

清洲城信長  鬼ころし

 

清洲桜醸造 清洲城信長鬼ころし 2000ml×6本 

鬼ころし - YouTube

 飲み友達は、妻です。


2008年に放送された愛知県にある清洲醸造製造の「鬼ころし」CM。
使われているアクアティックラバーズ「枯れた花を咲かせましょう」が本当に好きなのだ。
優しくもしっかりした歌声と、夫婦がもつ確かな絆が強くリンクしている。
現在アーティスト活動はなされていないようなのが残念。
というかこのCMってもしかしてローカルCMだったりするのか?

 

 いいちこ

  三和酒類 いいちこ パック 25度 麦焼酎 1800ml   

iichiko TVCM 2009 アリゾナ篇 - YouTube

荒野で、短い夢を見ました。


公式サイトのCMギャラリー → iichiko DESIGN -CM Theater-

いいちこのCMは主に3種類に分類される。
ビリーバンバンが担当する iichico シリーズが30本
坂本冬美が担当する いいちこ日田全麹 シリーズが36本
 ゴールデンボンバーが担当する いいちこ麹プロジェクト シリーズが2本
どのシリーズが好きかは、どの歌手のテイストが好きかによるかだろう。

坂本冬美の演歌もいいし、ゴールデンボンバーの真面目にふざけてる感じも好きだが
一番は諸外国をまわるビリーバンバン担当のシリーズだ。
その中でも特に「また君に恋してる」が流れているアリゾナ編が好み。
2009年にカバーした坂本冬美verの方が有名だが、実際は2007年発売のこちらの方が先。
坂本冬美verの圧倒的な歌唱力で殴りかかってくる感じもまたいいのだが、
じっくりと柔らかく聞かせてくれる原曲ならではの良さがこの曲にはある。
白昼夢のような雰囲気が「いいちこ」という酒にぴったり合っていると思う。
映像自体はNHKか?と言いたくなるような眠さを誘う雰囲気ではあるが。

 

 

大分むぎ焼酎 二階堂

大分むぎ焼酎 二階堂 25度 瓶 900ml  

大分むぎ焼酎 二階堂のCMに至ってはどれも本当に素晴らしい。

特定企業のCMだけに有志によるファンサイトが運営されているのも
珍しいのではないか → 大分むぎ焼酎二階堂CMファンクラブ


ちなみに公式サイトでも、CMライブラリーの充実が素晴らしく
ロケ地データ集まで明記していてくれている。
大分にある通り、ロケ地は主に九州。
いいCMを流しているという自負があるからこそ、あそこまで充実させているのだろう。
特設サイト「刻の記憶」の出来もCM絵コンテ集があったり、散文詩があったりと
素晴らしいので一度、是非 →  二階堂酒造


1つには絞り切れなかったので、その中の5つを好きな順で紹介していく。
どれも甲乙つけがたく、選ぶのには本当に難儀なことだった。

 

5位 2005年 砂丘の図書館


大分むぎ焼酎CM「砂丘の図書館」編 - YouTube

夢を持て」とはげまされ、「夢を見るな」と笑われる。
 ふくらんで、やぶれて、近づいて、遠ざかって…。
 今日も夢の中で 目を覚ます。

 

 人生に、答えは必要ですか

 
ノスタルジーとはまた別の、シュールレアリズムを感じさせるCM。
下北沢で上映されている、カルト短編映画といっても通用しそうである。
このCMは特にナレーションがいい。良すぎる。
彼は今日も夢の中を生きている。いつか破れ、そしてまた膨らませる夢を。
「夢」が持つ、どうしようもない憧れと残酷さを描き出した傑作。
お坊ちゃん風の少年が詩を朗読するというマニアックさもたまらない。
酒のCMに子供を起用する時点で、もうこれは商品の広告ではないのだなと理解できる。
媒体の役割から外れているからこそ、二階堂のCMは芸術なのだろう。

 

 

4位 2002年 


cm 二階堂 父 - YouTube

 私の記憶に、いつも後姿で現れる人がいる。
あの頃、あなたが口にしなかった言葉に、
いつか私は、辿り着くのだろうか・・・?

 

私の知らない父と 父の知らない私が 坂の途中ですれ違う。 

 
こちらは前のものとは対照的に、白字幕がとてもいい味を出している。
もう何をどうしたって届かない父親の後ろ姿。
昔の父親と今の父親は違う。それは「私」にだって言えることだ。
幼少期の親子関係が、成人後の親子関係と違うものであるように。
一番近しい存在であっても、全てを知り合うことは不可能。
親は子より先に生まれ、子は親より生き続ける。
自然の摂理に、ここまで深い感慨を思い起こすのは人間だけなのだろうか。
とにかく素晴らしいの一言。
というか個人的に弱すぎるだけである、家族ネタに。

 

3位 1996年 シネマグラス

探していた想い出に、
人は、どこで追いつけるのだろう。
人はみな、帰るべき刻があり、辿りつく夢がある。
夢から醒めて、ここにいる。

 

 帰るべき刻と たどり着く夢…

 
ラストカットが秀逸すぎる!!
夢から醒めてここにいる」と言う通り、「私」のシネマスクリーンを出ていく後ろ姿。
そして夢に取り残されたままの、残映を反射する硝子のグラス。
赤、青、黄色…さまざまな色がグラスにうつる様がレトロで、どこか玩具めいている。
砂丘の図書館」とはまた違った「夢」についての話なのだろうか、
それとも砂丘の図書館に対するアンサーか。
夢から醒めてここにいるが、人にはたどり着く夢がある。
このCMが描いているのは「ふくらんで、やぶれて、近づいて、遠ざかって…」の
遠ざかっている部分のような気がする。
それでもまた夢にたどり着く時、グラスシネマはあのようにそこにあるのだろう。
もしかしたらスクリーンに投影され、あのグラスに反射しているのは
「私」が辿ってきた人生なのかもしれない。

 

 

 2位 2008年 消えた足跡


大分むぎ焼酎 二階堂 「消えた足跡」 - YouTube

 

近道は、遠回り。 急ぐほどに、足をとられる。
始まりと終わりを 直線で結べない道が、この世にはあります。
迷った道が、 
私の道です。

 

 一生に何回 後悔できるだろう。

 

 カット一つ一つが素晴らしく、ナレーターの文も味があるのだから最高。
二階堂特有の悲哀が色濃いメロディーが流れた瞬間でもう最高。
特に私が好きなのは3つのカットだ。
・福岡市 JR南福岡駅 構内
・福岡市博多区 JR竹下駅
熊本県 長部田海床路

ここを選ぶセンスも、それを芸術的に魅せる工夫もすべてが一級品。
ただ2つめの竹下駅は改装してしまい、どうやらあの途中で途切れた線路は見られないようだ。
熊本の長部田海床路については、くまもんが詳しくまとめてくれている
こちらをどうぞ ↓

びっくまもとスコープ #01 海の上を走るトラック!?編 | 熊本県の情報サイト『気になる!くまもと』

ラストで続いていくべきはずの道が海に沈む、というのにグッとくる。
いいなあ、一回は行ってみたいなあ九州。



 1位 2014年 夢で逢いましょう


二階堂酒造 CM 2014 「夢で逢いましょう」篇 - YouTube

 

あの日から遠ざかるほど、 

あなたに逢いたくなる。

いくつもの色が重なり合い、
やがてモノクロームになった日々。

甘く、ほろ苦い…
すべてが刻まれた場所を
教えてほしい。

 

 一歩進むと、一歩遠ざかり、 あの日がよみがえる。

 

もう大好きすぎる。
人生や使命、そんな大層なものではなく、個人の想い出だけを追いかけた映像。
 ノスタルジーの極みと言ってもいいと思う。
ポルトガルギターマンドリン奏者のユニット「マリオネット」による音楽も
明るさだけではなく、仄かな不気味さを感じさせるテイスト。
階段というモチーフもツボ。
九州にはこんなに素敵な階段があちらこちらにあるのか。
とにかくもう好き、見て!としか言えない一本。

 

いや~本当に焼酎CM業界ってハイクオリティだなあと思った。
二階堂の来年のCMもまた、楽しみにしている。


↓ ちなみに父編で映った福岡「志免鉱業所竪坑櫓」についてはこちらでも言及している

iroribatadanngisitu.hatenablog.com