その一瞬のために二人で 神楽坂はんこ「真水をすくう手のひらで」感想

 

真水をすくう手のひらで (バーズコミックス ルチルコレクション)

BL漫画の感想なのでご注意を)


2013年に発売された神楽坂はん子著「真水をすくう手のひらで」を読んだ。
ジャンルで言うなら、まったり刑事バディ物ということになるのだろうか。
じわじわと温かい心になれる、いいBL漫画だと思う。

御巫朔が小日向暦に惹かれていく過程。
それが実に丁寧なコマ割りによって描きだされているところにグッと来た。

相手の肌に触れれば、その人物の死ぬ瞬間が見える御巫。
そんな刑事である御巫にとって
初めて触れてもその死期が見えなかった小日向は、最大級の特別だった。
このコマを見ただけでそれがありありと伝わってくる。

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小日向の方は…純粋に御巫の容姿と立ち振る舞いを好きになった…のかなあ。
彼も一事情を抱える人間ではあるけど
御巫を好きになった瞬間というのはどこだったんだろう。
第3話の湯たんぽシーンではもう好きだった気がする。

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 このシーンにはかなり悶えた。
こんな風に優しく気遣いされたらそりゃあ小日向のこと好きになるわ、御巫…。
 

 何より一番叫びたくなったのは
書下ろし短編「流星をつまびく指先で」のラストシーン。

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 ここまで温かいハッピーエンドを久々に見た。
誰かの特別であることのあたたかさ。
特別だからこそ、失いたくない、傍にいて欲しい。
例えそれが長い人生の中で一瞬のことであろうとも、
その一瞬を抱いて生きていこうと。
そう思える人がいることの奇跡を強烈に見せつけてくれた。最高だ。

読み終わった後にもう一度タイトルを読み返すと
これまた泣きそうになるぐらい上手い題名なのだ、「真水をすくう手のひらで」が。
本編中で御巫が手を浸しているのは、海水であって真水ではない。
それじゃあ真水とは何のことを指すのか、そこまでは分からない。
ただ「真水」って「血液」と対極の言葉だよなあと私は感じた。

御巫がこれまで目にしてきた数々の死亡に至る瞬間。
残された血痕や浴びてきた血しぶき。
そんなものとはまるで正反対の「真水」、それをすくう手のひら。
この手のひらはどちらのものでもいいと思う。
御巫の手でも、小日向の手でも。
透明で純粋で綺麗なものをそっとすくい取るように二人で生きていってほしいと思う。
 
 
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