恐れを知らないコーラスアクション  石川智晶 「物語の最初と最後はいらない」 感想

 

物語の最初と最後はいらない【CD+DVD(特典LIVE映像2曲収録)】

 

個人的お気に入り度 5 / 5

 

 

2015年9月16日発売の石川智晶6thアルバム「物語の最初と最後はいらない
事前にトレーラー感想も書いたぐらい楽しみにしていたのだが、全体的感想としては一長一短というところか。
新曲7曲にはどこかしら好きになれる点があっただけで個人的名盤なのは揺らがないが、残り3曲のアレンジバージョンがどうにも。
DVD収録もライブバージョンを2曲…2曲だけって…それならライブバージョンの音源をどどーんとつけてくれたほうが嬉しかった。

ただアルバムの中に一貫とした空気が流れ続けていたこと、その空気に浸れただけで私は満足だし幸せだった。

 

 


1.物語の最初と最後はいらない

最初の30秒の時点で「ああ石川智晶の新曲だなあ」感が痛いほど伝わってくる導入曲。
新しいけど懐かしい、そんな歌声とメロディー。この感覚を味わうだけでも、購入した価値はあった。
Bメロの旋律が、円舞曲かのように滑らかに流れ出すところがすごく好きだ。
心の内側にくいこんでくるものは 裏切らない記録になり」っていうフレーズもいい。
私もここ最近アルバム感想をよく書くが、好きな曲というのは心にすっと入ってきて、それでいて忘れない。
こういう自分の体験と照らし合わせて納得がいく詩を聞ける、知ることができるのは運がいい。
2番のBメロ「物語の最初と最後は 誰かに覚えていてもらいたいだけの 石に刻むものを探してるだけ
はメロディーと相まって鳥肌が立った。

 

 

2.兄妹~aniimouto~

ターダコトバノラレツソノママー」と硬質なコーラスが幕を開ける。前曲のアウトロコーラスの雰囲気と少し繋がっている気がした。
ただ日本語ではあるがなんて歌っているのかが聞き取れない箇所もある。「自分から そそりぬけている」か…?
それはともかく、中毒性たっぷりのイントロだ。
この曲の魅力はここにあるといってもいいぐらいであるとは、言い過ぎだが。
凹凸を感じさせるメロディーの間に、雪崩のようにグランドピアノが入り込んでくるところなんかは本当に美しい。


手入れをし過ぎた花壇 完璧な土の上 思い描いた色にもう咲かないだろう
傷をつくる手はなお傷を閉じることもできると 愛した瞳が走り出す」らへんのフレーズは、雰囲気があって好みな部類だ。

兄妹という単語から「house」と繋がってるかと思ったがそうでもなさそうだ。
夏の終わりに太陽に嫌われた 荒れ始めた目の前の楽園は あぶら虫のついた菜の花だけが ぼんやり揺れていた
あたりと関連があるかとも思ったが雰囲気が違いすぎるな。

 

 

3.水のないプール

1stアルバム収録の「スリード」とかすかに似ている。
ただ一番重要な出だしの歌詞が「水のないプールって用のない空き箱だ」っていうのには驚いた。
「えっ、そんな当たり前のこと言うんだ!?」と逆に新鮮だ。逆に。
でもこの曲が一番歌唱の仕方が好みだ。「夏だった そんな」と低く囁くような声がたまらん。
彼女の歌声なら不穏なテイストすら、聞いていて心地いい。

 

 

4.数字

今作内では一番明るいというか、ポップで聞きやすい。シングル「サヨナラって言うから」のCP曲「その逆」に近いか。
だがサビ前のタメを入れる構成を多様しすぎでは…。
割り切れず足されることもない午後は うやむやな返事をすることは許してくれる」が文学的な抽象さで好き。
ラストの粒が零れていくようなアレンジもいい。数字の簡素さを表しているのかなとも思ったりした。

 

 

5.landscape

紫にしか咲けない花がいる」の文節がどうしようもなく「TW」を思い起こさせる。
紫の花が持っている 咳き込むような正義感を」と言われたあの花なのだろう。
その花が「不幸せでもなく望んでもないことを 近づく夕暮れに伝えてきて」と歌っていると思うと涙腺にくる。
曲自体は穏やかなスローバラードだ。
だが後半で歪んだエレキギターがアレンジとして入ってくるところが面白い。
アウトロをアカペラで締めるところもこれまたこの曲らしくてよし。

 

 

6.物語の最初と最後はいらない ~左目~

1曲目と呼応するようになっているのかいないのか、分かりやすい仕掛けは見当たらなかった。
Aメロのアレンジがフィンガースナップを主体とした細かく刻んだもので、1曲目とはかなり違った印象になっている。
サビは似ているような、似ていないような…。
結局このアルバムのテーマは「留まることも解放されていくことも 説明のない物語が欲しい
物語終わらせてはいけない」というフレーズに収束していくのだろう。

 

 

7.ヘブンリーブルー

もうここからは「戦国BASARAタイアップ 和風コンセプトアルバム」と別物のような雰囲気になる。
正直2曲収録しかないDVDで2枚に分けるより、ここからの4曲+DVD収録2曲でCD2枚組にしたらよかったのにと思う。

曲自体はかなりアニソン&ゲーソン寄りのオーソドックスな雰囲気だ。アルバム内で比べれば、の話ではあるけれど。
short.ver公開時から結構好きな気に入るフレーズが多々あったので、今回のfull.verも期待を裏切らない出来で嬉しい。

 

戦国BASARAには全く触ったことがないので何とも言えないが、この曲は二重人格のキャラクターについて歌った曲というのは聞いた。
そう考えると
お前ならどう例えるのだろう どう触るのだろう
お前なら成せるか 私なら出会えるか
混ざり合う背中が底に沈んで 上澄みだけをどちらかが飲み干していく
滅びの美意識が重なる時に」等、そういった要素がいたるところに見受けられる。
…本当タイアップにはめちゃくちゃ強いシンガーソングライターだよなあ。
アニソン作詞家トーナメントなんてものがあったら絶対上位入賞してくるという確信が持てるぐらいだ。

 


8.逆光 2015 ~許されざる者ここにあり~

原曲が5分40秒弱で、これは6分56秒。7分近い大作になっている。
しかもこの後6分超えの楽曲がこれ含めて3曲続くという…やっぱり別のCDにするべきだったと思う。
イントロの呪術めいたコーラスが終わったあとは、あまり原曲との違いが感じられなかった。
篠笛と和太鼓の音は確かに美しいけれど…。歌唱法も原曲とそう大した変わってない印象。
ただアウトロの壮大さは好きだ。

 


9.落涙 2015 ~奪われし背中~

…なぜ2番のサビの前に妙な朗読もどきいれるんだろう…。
慰めに口にする善悪をすべて捨てることで」の箇所がこの曲の中で一番好きだったのに。
曲として捉えるんじゃなくて朗読劇みたいなものとして捉えた方がこの場合は適切なのかもしれない。

 

10.涙腺 2015 ~蒲公英情歌~

この曲は聞いていて楽しかった。
三味線の軽やかな音色は確かに蒲公英に例えるのが相応しいかもしれない。
Bメロでコーラスをかぶせてくることとか、サビ前に「ゆらゆらゆら」コーラスを付け足したところとかは良アレンジだと思う。
ただあの間奏の唐突さはどうにかならなかったのか。意図的なものだとは思うが。
あんなにふっつり切れて三味線とボーカルだけになると、聞いている最中にもうなんか吹き出してしまう。
「柔らかな土の匂いがしたあの」のところも急に戻りすぎて笑ったわ!!

 

 


なんやかんや書いたが、やっぱり私は石川智晶というアーティストが作る楽曲が好きなんだなと再確認した一枚。
リリースイベントにはもちろん申し込んだ。当選していてほしい。
*追記:当選しました。行ってきます。

 ↓ 行ってきました。最高でした

 

iroribatadanngisitu.hatenablog.com

 

 

 ↓ 当たり前だけど、今見ると結構違うな

  

iroribatadanngisitu.hatenablog.com

 

 

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