復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

振れ幅の大きさが半端ない ポルノグラフィティ 「RHINOCEROS」 感想

 

RHINOCEROS

 

個人的お気に入り度 4.5 / 5

 

ポルノグラフィティ10thアルバム「RHINOCEROS
彼らのファンと言いつつあまりフルアルバムは聞いたことがなく、大体はベストアルバムで楽しんできたのだが…
結論から言うと、とてもバリエーション豊かで十分に楽しませてもらった。

ポルノらしいアニソンちっくな「オー!リバル」や「ミステーロ」から
ロックに比重を置いた「ANGRY BIRD」に「バベルの風」
「俺たちのセレブレーション」などポップ系統も外さない楽曲の数々。
配置も飽きさせない工夫が随所に感じられて、かなり完成度の高いアルバムとなっている。

 

 


1.ANGRY BIRD

イントロからもう最高だ!!と思った。
ゴリゴリのロックの中に、時折ガツンと鳴らされる民族楽器風の音が格好いい。
間奏のギターもどこかそんなテイストだし、ラテン調の2曲目へと繋がってく感じがしなくもないような。
ボーカルは文句なしに格好いいし、こういう怠惰な日常への不満をわめき散らしたような歌詞も好きだ。

温かい血を送り出している鼓動の中に ぞっとするほどの冷徹な血が混じる
必要とされたことも 邪魔にされたことも PAST DAY 思い出せない
届かないものを見せる悪趣味につき合い切れず それを愛などと呼びだしたヤツは誰?

と、フレーズのセンスも冴え切ってる。「ネオメロマンティック」らへんの雰囲気が好きな人は間違いなく気に入ると思うのだが、どうだろう。

 


2.オー!リバル

「劇場版 名探偵コナン 業火の向日葵」の主題歌。
デビューから16年経ちメンバー二人が40代となった今でも、アニメタイアップを担当できるアーティスト性に密かに感心 した。
ピッコロと細かく刻んだガットギターが、一気に情熱をたぎらせてくれるようなラテンアレンジになっている。
アーコディングの音色がどこかもの悲しい空気を忍び込ませてくるのがたまらない。
間奏のコーラスは「アゲハ蝶」を彷彿とさせるのは、前シングル「俺たちのセレブレーション」でデビュー曲のフレーズを 匂わせていたあたり、きっと意図的な仕掛けだろう。
咽せ返る生命の匂いと」のところの一瞬だけ囁くような歌唱に、すごいトキめいた。

 


3.ohhh!!!HANABI

振り切ったお祭りソングで聞いてて楽しい。
どんちゃん騒ぎしつつも、サックスで華やかさを付け足す間奏がいい。
夏祭りの良さの上澄みだけを掬い取ったような曲だと思う。メロディーもキャッチーで聞きやすかった。

 


4.wataridori

1曲目に続き、「鳥」がタイトルになってるものの特に関連性はないか。
ミディアムバラードも上手いんだよなあ、ポルノグラフィティは。苦手な曲調とかあるんだろうか。
「任せろ!!」と言わんばかりのストリングスも安定感抜群。
一日の終わりに聞くのがふさわしい、しんみりとしつつも希望がにじむ一曲。

 


5.Hey Mama

「これポルノか!!??」と叫びたくなったほど、王道のカントリーミュージック
素朴なボーカルの声にめちゃくちゃ驚いたのだが、それもそのはずVocal.新藤晴一だった。
アルバムならではのお遊びソングというか…ここでこういった系統の曲を挟んでくるのが面白い。

 


6.俺たちのセレブレーション

これがリリースされたのが2014年9月だから、ちょうど1年ぐらい前になるのか。
またそのちょうど1年前の2013年9月にリリースされたシングル「青春花道」のブラスバンドアレンジが好きだったので、 この曲もすぐ好きになった覚えがある。
15周年アニバーサリ・ーイヤーのシングルだったこともあり、過去作のフレーズをちょいちょい持ってくるところがいい。
私にとっては最高のファンサービスである。
特に「晴れ姿のラビット」にはグッときた。
ミュージック・アワー」に一節である「ここでおハガキを一通 RN 恋するウサギちゃん」が成長した姿なのだろう。
ミュージック・アワーの発売日は2010年7月なので、あれから15年か。
現実世界での15年という時を経て、こうして答えを出してくれるところにもうじーんとした。

 


7.Stand Alone

晴れた荒野を突っ走っている情景が目に浮かぶような、解放感あふれるサウンド
ハネウマライダー」を彷彿とさせる、といえば伝わりやすいだろうか。
爽やかさとドライさを両立させているのがすごい。

 


8.ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~

曲単体で聞いた時は「JUJUあたりが歌ってそうな曲調だな…」と思ったが、アルバム内だと彼らのふり幅の広さを示すいい ミディアムバラードとなっている。
匂わせている程度だが、不倫中の女性の心情を歌っているのだろう。
瞳の奥をのぞかせて」らへんに通じる歌詞…ではないか。こちらのほうが直接的。
間奏のギターも抒情的なメロディーで好きだ。
ただラストでいきなり「甘い幻」と囁いてくるのはやめてほしい。普通に笑う。

 


9.ソーシャルESCAPE

さあ今日も始めよう めくるめくタイムライン 液晶にタッチして 追い風を受けるんだ」とドしょっぱなからSNSをい じったフレーズが飛び出てくる。
別にそれは全然いいんだが、全体的にドラムが一定的だから少し単調に感じてしまった。
メロディーもあまり起伏があるようにも感じられず。ただアウトロの盛り上げ方は好き。

 


10.バベルの風

イントロから一気に引き込まれる格好よさ!!
がっつりロック仕様のギターとドラムが、テンションをすこーんとあげてくれる。
旧約聖書から引用された「バベル」という単語から、そのまんまアニメタイアップに持ち込んでもよさそうな楽曲。
空に放つ希望の歌が 掠れ足元へ落ちてく」という言い回しが格好いい。

 

 

11.AGAIN

用いられている音も多く、ポップさを失わないアレンジなのに「遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図で 旅をしているみたい」とファンタジーを匂わせてくるギャップにやられた。
戻れない世界。その切なさをきっちりあらわしている
追記(2015/10/11):ものすごい名曲だというのが分かってきた。
本当のこと言うよ 時間と共に地図は掠れていって 今では読めもしない
 そこに何があったか 思い出せなくて 僕は泣いているんだ
のところとか本当に最高。
郷愁めいた感情をここまで穏やかで切ない雰囲気に仕立て上げてくる才能に痺れる。

 


12.Good luck to you

いい意味でシングルのCP曲みたいだと感じた。
適度にロックで適度にアホっぽくて、適度に実験的なことをしている感じがする。
スタバでデート 飲むマキアート 二人でとりたいセルフィでSHOT ツイートアップ 誇るラブ Reply come on!」をエフェクトかけまくったラップ調で歌うのが面白い。
盛り上がりにはイマイチかけるものの、なんだか聞いていると楽しそうでいいなあと思える楽曲。

 


13.螺旋

うわーー!!格好いいーーー!!
ギターとアコーディオンの、この夕暮れめいた雰囲気が好みド直球だ!!
インストではあるが起伏がはっきりしていて飽きないところもいい。

 


14.ミステーロ

いい意味でアニソンっぽいポルノの真骨頂。
イントロがめちゃくちゃ格好いいというか、本当にアニソンじゃないのが不思議なくらい。
ミステリアスを疾走感でまとめあげるのが非常にポルノグラフィティらしいなと思う。
私が知っているなかで例えるなら、アニメ「ブラックジャック」op Janne Da Arc月光花」とか、同アーティストのアニメ「妖逆門」op「メビウス」が好きな人は絶対気に入る曲調だ。

軽くゴシックと神話が入り混じった歌詞もいい。
花の色に意味があると信じているうちは まだ I miss you
その体が美しいほど醜い明日を愛せない」とかもう最高。
神話の中に捨てた首飾りまで 不吉なカナリアに奪い去られた」あたりは何か元ネタがありそうだがどうなんだろう。

アウトロも優美なストリングスで外さないな、と思ったらラストで急に朗読をぶっこんできて「は??」となったけども。
いきなり「Sound Horizon」にでも交代したのかと思った。

 

 

いやー、良かった!!
10thアルバムでここまでバリエーションに富んだアルバムを作る事ができる、彼らの才能に感嘆する。
気が早い話だが、このリリーススピードでいけばメジャーデビュー20周年である2019年にもきっとアニバーサリーアルバムを出すのだろう。
その発売が今から楽しみだ。いや本当に気が早いけれど。