平成30年、社会人の夏。
ず〜〜〜っと出勤中のカーステレオから流していたのが、ビッケブランカ「夏の夢 / WALK」のCDだった。
最初はAniUTaの配信で聴いて、すぐさまiTunesでDLして、それでも足りなくてCDを買った。
この音がなかった夏の朝を、私はもはや信じられない。
それぐらい、この音楽達に救われていた。
まあ、ほんと、ごくふつーに仕事が辛かったんですよ。
「夏の夢」が翳した夏の陽、
「WALK」が慰めてくれた孤独の道のり、
「夏の夢 (cold water remix)」が垂らした滴の冷たさ、
「Black Rover (city raven remix)」の曇天にこもる烏の羽ばたき。
心の奥底に溶け馴染み、すっと視線を導き上げてくれるような彼の歌声に、支えられていた夏だった。
何度も何度も鮮やかな情景で、色で、光で、現実の憂鬱を塗り替えてくれたことを、忘れたくない夏だった。
何というか、小川洋子の文章の一節を思い出しす。
『これは、油断すると自分でも忘れてしまうくらい遠い昔の話なので、ここに記しておこうと決めた。
たぶん、忘れない方がいいのだろうと思うし、もし僕がいなければ、他の誰も代わりに語ることができない記憶なのだから』
私以外の、誰にも代わりに語ることのできない情景を見せてくれた曲たちに、心からのお礼を言いたい。
ありがとう。本当にありがとう。
この一枚があったから、生きていける夏だったよ。
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