復元可能な灰壺

個人的な感想文ブログ

「竹画廊 レターブック」、最低2冊は絶対に買え!!

 

竹画廊レターブック

「竹画廊レターブック」買いました。
いいですか、何があっても最低2冊は買ってください!!!!

 「全180ページ フルデザイン×リバーシブル印刷」のクオリティ、まじ半端ないんで。

 

まずはAmazonで一冊注文したんですけど、届いてぱらぱらめくった次の瞬間にはもう一冊買いました。
使用用と保存用の2冊です。
「もったいなくて使えない〜〜〜」なんて言ってる場合じゃないんだよ!!!
この本の1ページ1ページがここまで凝っているのは、使ってもらうためって、手に取れば痛いほどに分かるんですよ。
デザイナーと印刷所の執念すら感じるこの超絶クオリティは何のためなのか。
眺めて終わり、本棚に閉まって終わり、一人で楽しんで終わりの「画集」ではなく、「レターブック」として発行された意味を、1ページ1ページがなぜ便箋として使えるようになっているのかを考えて欲しい。

誰かに手紙を書くためなんだよ。
言葉を伝える便箋として、誰かと誰かを繋げるためにこの1ページを使ってほしくて、こんなにもこだわられているんだよ。
クリエイターやデザイナーの、良心の産物でしかないこの本。
ほんと、はちゃめちゃに売れて欲しい。100万冊売れてベストセラーになって欲しい。
だからお願いです、西尾維新の「戯言シリーズ」とか「刀語」とか、渡辺浩弐「ゲームキッズ」シリーズの挿絵がほんの少しでも好きだった人は買って。2冊買って。

 
ただ切り離す時は、カッターと定規が必須。
レターパッドのようにはなってないです。あくまで本。
電子レンジでチンしてノリを溶かしてから、切り離してもいいとは思うけど。

仕事が辛いのでSFに逃げる日々 〜好きなSCPの話とか〜

仕事出来ねえ、マジくそ辛たん。
ってな日々が続いているので、SFに逃げてます。
SFは種を淘汰しこそすれ、個を責めたりはしないからね。
一つの職場の人間関係に固執する矮小さを、言葉と設定の力で超えていきたい。

という訳で最近読んだSF系小話の話。

最後にして最初のアイドル【短篇版】

最後にして最初のアイドル【短篇版】

 

130円で読めていい文章ですか、これ? 

こんな創世の神話をたった130円で読めるんですか?価格破壊がすごい。
アイドルが概念飛び越えて万物の素となり、ゆえに私もまたアイドルとなる運命がこの書には記されている。

さあ、アイドルをはじめよう。
あなたはキラキラに輝いてる!

わたし、私は古月みかの意志を継ぐもの。
継ぐものだから、 そう、私は他者を夢中にさせ、共感させ、自己同一化させられる存在なのだ。
この万能感のプレゼントを、受け取れてよかった。

そんな流れで、精神汚染系のSCP財団の話を漁っていて休日が終わった。
個人的に気に入った話を3つ挙げておく。


SCP-2718 :その後に起こるのは(SCP-2718 - SCP財団

俺には理解できない。
俺が細かなかけらに分かれていくほど、俺は痛みを知覚できるようになっていった。
俺が腐り落ちて生のある神経がどうやっても判別できないくらいに小さなものになったとき、俺が覚えていた不快さの感覚はその形を変えた。
人間の言葉に例えられそうな、焼けるような、うずくような、壊れていくような、そういう感覚から、十分に言葉に表せそうもないくらいにもっとひどい感覚に変わったんだ。
俺を作る部分すべてが他の部分から気が狂わんばかりにひどく広がっていくんだ。
人間はその生涯で慢性的な痛みの感覚が度々無くなるって言うよな。
でもな、何年たっても、何ヶ月という時が過ぎても、何秒と時間がかかっても、その感覚は常に激しくなっていくばかりだった。
俺はそう断言できる。

人間は死んだあと、意識が肉体から離れることなく、分解されていく肉体の苦痛を延々と知覚し続けるという話。
この話をフィクションだと否定する材料は、この世のどこを探してもない。
逃れられない死の牢獄に、全員が等しく、あまりにも平等に向かっている事実に背筋が凍った。
この強張りが解ける日は、きっとこない。


・SCP-324-JP:私はあなただけを見つめる(SCP-324-JP - SCP財団

SCP-324-JPは花の付け根にあたる花柄から切り落とす、または燃やすなどして全体の80%を損傷させることで駆除することができ、駆除されたSCP-324-JPは切り落とした花、地面に残った部分も共に即座に褐色に変色、枯死しその異常性を失います。
SCP-324-JPを切断によって駆除された場合、駆除した人物は様々な年齢、性別の人間の悲鳴の幻聴が駆除したSCP-324-JPから聞こえたと主張します。
また、駆除したと同時に駆除者の周囲半径10m内のSCP-324-JPが花弁を駆除者に正対するように動きます。
SCP-324-JPを1体駆除するごとにこの範囲は10mずつ広がります。
この正対運動はSCP-324-JPが駆除者の範囲内にいる間常に続き、範囲外になったSCP-324-JPは正対運動をやめ静止します。
この正対運動の範囲の解除は24時間の時間経過のみです。

花言葉から着想を得たであろう、向日葵の話。
静寂に群れ立つグロテスクな花にも、黙祷の意を併せ持つ動きがある。
SCPの中で一番忘れたくない話を選ぶならこれかなあ。
理屈抜きですごく好み。

・SCP-818-JP:えらいねぇ(SCP-818-JP - SCP財団

██研究員: 一体どこから帰ってきたのですか?

(直後、SCP-818-JP-Aが不意に泣き出し始める。SCP-818-JP-Bがそれに寄り添い、SCP-818-JP-Aが落ち着くまでの約10分間会話が中断される。)

██研究員: 落ち着きましたか?インタビューを再開しても構わないでしょうか?

SCP-818-JP-A: 茶色黄色白い、狭い柔らかい部屋、ゴミ箱で、他にも沢山いた。

██研究員: はい?ああ、話の続きですね、どうぞ。

SCP-818-JP-B: 毎日毎日、意味のない歌をうたわされて、他の人達と無理やり仲良くするように言われて、私達の役目は終わったと嘘をいわれたわ、そんなことはあり得ないのに。

SCP-818-JP-A: 何度も同じところ歩いた。不味いもの食べた。熱いお湯かけられた。あいつらはいつも私達を見下していた。そして私達を褒めた。私達を褒めた。私達を褒め続けた。笑っていた。

SCP-818-JP-A: 褒めるのは私達であるべきだ。だから戻ってきた。

人を「えらいねぇ」と褒め続ける老夫婦の話。
老人ホームという名の現代の姥捨て山の闇と、「えらいねぇ」の言葉が連想させる桃色のコントラストが重苦しい。
「これから先起こるのは」が死の地獄なら、こちらはその境目の地獄だろうか。
生の果てにある地獄。


「また明日」って今日も言わせて / 劇場版「若おかみは小学生!」【感想】

【映画パンフレット】若おかみは小学生! 

 
劇場版「若おかみは小学生!」観てきました。
引くほど泣いたんですけど、これは悲しみと尊敬の涙です。
これはハッピーな成長物語か?絶対にそうではないから泣けるんだよ。
彼女が赦さなければいけなかったものの大きさ、彼女が手放さなければいけなかったものの大きさ。
あまりにも早く大人にならざるをえなかった少女に一大人として出来ることは尊敬の眼差しを送ることだけでしょ。
 
以下ネタバレ。
 

2018年発売BLゲームOP情報まとめ&一言【現13作品】

2018年に発売される、BLゲーム(PC&vita&アプリ)のOP情報と動画&情報みただけの感想。
個人的なメモなんで、抜けとか不備とか色々あるだろうけど、そこはまあ……。
発売されたら動画製作者の未確認欄も埋めていきたい。
18禁要素を含むものもありますので、未成年の方の閲覧はご遠慮ください。

↓2019年版

 

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腐女子のBL妄想が捗るおすすめ曲① ヒトリエ「フユノ」

腐女子ならさ!好きな曲でBL妄想するでしょ!?!?
という話にTwitter上でなったので、私の妄想爆裂おすすめBL曲を聴いて欲しい。
分かってるんだよ、アーティスト側だって別にそんな想いを込めて作った曲じゃないことぐらい。
勝手に一リスナーが想像を膨らましてきゃっきゃしてるだけの、ファンの風上にも置けない行為だってことぐらい。
 
でもさ!!!!
そういう妄想がしたくなる曲って、神曲の確率高すぎでしょ!?!?

「ねえ、これBLソングじゃね?推しカプのためにあるような曲じゃね?」
っていう腐女子の勘違いコメント共に紹介されているような曲、ぶっちゃけ同類のツボを抑えてくる確率が高すぎる。
誰かのイマジネーションを刺激したという事実は、どっかの音楽番組がやってるような毒にも薬にもならないアンケートランキングなんかより、よほど信頼性があると思うんだよ。
 
突然出会えたある曲に心底心動かされて、その感情の揺れをどうにか自分のものにしたくて、脳内妄想をし始める。
そういう一腐女子の、その人にしか言葉に出来ないようなとりとめのない妄想を、聞かせて欲しい。
立派な物語でなくていいから、あなたの心を動かしたその曲に対するあなたなりの解釈を私にも教えて。
っていう、そういう話です。まずは私から!


ヒトリエ『フユノ』

フユノ

フユノ

  • provided courtesy of iTunes

かつてのボカロ好きなら知っているだろうwowaka率いるバンド、ヒトリエ

個人的にはボカロPの曲より、ヒトリエになってからの曲の方がずっとずっと好きだ。
特に今曲は、もうイントロのピアノからして「冬」のエモさがすごい。
冬、ピアノ、雪の舞う街……こんな情景の浮かぶ曲でBL妄想するなっていう方が無理でしょ!?!?
 
という訳で以下妄想。
 
舞台は、冬。
CP属性としては、レース職人(30)×数学科専攻大学生(22)。
個人的に叔父×甥の同棲ものが性癖なので、当然のように叔父×甥で同棲している設定。
テーマとしては相互理解。

レース職人はいつも俯いた手元の狭い視界で、大学生は数字で世界を見ている。
周囲の人々は2人を理解してくれてるし、世間とのコミュニケーションも特に問題はない。
でも、気まぐれにお互いの世界を見ようとしてくれるのは、この広い世界でお互いだけっていうそういうBL。
 
レース職人はごくたまに、新聞のナンプレ欄を埋めようと鉛筆を握ったりする。
大学生は講義の空き時間に、本屋にあるような初心者向けレース編みセットを買って開けてみたりする。
けれど、いつもその試みは失敗に終わる。
どれだけ眺めたってレース職人には数字はただの数字でしかなく、
大学生の指先が編み出す模様の目は荒い。
相手と同じような世界を、同じような美しさで見ることは出来ないわけで。

でも後日、お互いがお互いの努力の痕跡を見つけるんだよ。
大学生は、ゴミ箱の中からくしゃくしゃに丸められた新聞の3面を見つけるし
レース職人は、大学生の机の上に自分の物ではないレース用の糸束を見つける。
新聞のナンプレなんて、大学生から見たらどこで躓くのかも分からない簡単なものだし
置いてあった糸束は、レース職人なら購入するはずもない安物。

そして、それがとんでもなく嬉しいんだよ、お互いにとって。
恋人が自分と同じ目線で、ものごとをやろうとしてくれた。
その事実がたまらなく嬉しいし、その幸福感のままベッドになだれ込んでほしい。
お互いが見てる世界も、感じる美しさも違うけれど、同じ言葉で、同じ熱を感じて欲しい。
この冬の日に。
 
……っていうね!
妄想を言葉にするのって、創作するタイプの人間じゃないからむずいし恥ずいな……。
でもほんと、こっ恥ずかしい妄想しちゃうくらいにこの曲が好きなんですよ。
ピアノは糸の形をしていたし、ドラムは数字のような正確さで足跡を刻んでいくから。
大学生が冬に身につけるマフラーと手袋は、レース職人お手製のものであったらいいし
レース職人はたまに大学生の本棚から数学書を抜き出して、レースのような数式のグラフを書き写してたらいいよ。


幸福を紡ぎ望む百合アンソロジー / 「Avalon」&「Avalon~bitter~」【感想】

本屋で表紙買いした百合アンソロジー2冊についての感想。

Avalon (girls×garden comics)

Avalon (girls×garden comics)

 
Avalon~bitter~ (girls×garden comics)

Avalon~bitter~ (girls×garden comics)

 

表紙&装丁が最高すぎる。
はい、もう一回Amazonリンクの画像拡大して貼るから見て。

Avalon (girls×garden comics)

 Avalon~bitter~ (girls×garden comics)

ああああ〜〜〜〜、最高〜〜〜〜!!

表紙とカバー下のSSを担当しているのは、イラストレーターの切符。
キャラクターが可愛いのは勿論だけど、特筆すべきはやっぱり背景じゃない?
西洋絵画を意識しているんであろうタッチ、ぼかし、光源がたまらない。
もう芸術の域です、百合は芸術!!

Avalon」の方は、モネやシスレーを彷彿とさせる印象派系のにじみが本当に美しいし
Avalon ~bitter~」の方は、ゴールドと模様の組み合わせが、もろにクリムト系のゴージャス感。

ã·ã¹ã¬ã¼ããã¼ã«=ãã«ãã®æ´ªæ°´ã¨å°è
アルフレッド・シスレー「ポール=マルリの洪水と小舟」)

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グスタフ・クリムト「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」

中村晋弥(LUCK'a Inc.)によるデザイン&装丁も最高なんですよ!

左がカバー下のSSで、右がカバー。
こんな素敵なカバー下、見たことある!?!?私は初めて見ました。
表紙の手触りもマットPP加工でさ、高級感のあるいい手触りなんだよ。
彼女達が来ている衣服を、なぞるようなこの官能的な手触りだけで値段分の元が取れます。

収録されている話でグッときたのは2冊合わせて3作品。
打率で言えば低いけど、まあアンソロジーなんて好きになれる話が1つあればいい方なので。

1.いとう「良い旅を」(「Avalon~bitter~」)

あなたがあまりに優しいから

あなたが色々な星を巡る夢ばかり見ていたの
私の重力に引かれておちてなんてほしくない 
…いや こんな言い方不誠実ね

すべきこと 
全ては成せなくてごめんなさい
一緒にいられなくてごめんなさい …そして 良い旅を

百合SF。
SFに関しての私は、伊藤計劃アーサー・C・クラークレイ・ブラッドベリも読んだけど、「マジで意味が分からん」の一言に尽きる残念系。
回りくどい文章の羅列で、結局は人間の感情を描いただけにしか思えなくて、好きになれない。
けれど惹かれる。難解だからこそ、読み解いてみたいと思う。
理解出来ないものを、理解できるもの以上にありがたがってはいけない」っていう名言もあるけどさ、回りくどい言葉でしか深めていけない感情もあるんだろうし。

今作に関しては、そういうSFっぽい会話のやり取りが味わい深かった。
特にラスト
あの人の言っていた 愛と責任についてよく考えるのだ
 何一つ知ることが出来なかったから 
 特にこんな――美しさの中では
」で夜明けを迎えるところが王道で最高だった。
ただただ光が美しいという事実に、そしてこの光こそを彼女に見せたがったミツガワの真心に少し泣いたよ。
例え完璧に理解できなくとも、心震える景色に圧倒されたい。
 

2.須藤佑実おねがい」(「Avalon ~bitter~」)

どうしてこんな無意味なことを 繰り返さなきゃいけないの
この涙は どこに行くの
せめてこの涙が海に溶けて 雲になればいいのに
そしてやがて雨になって あなたの背中をたたくの

失恋自殺からのループ片思い執着百合。
いや〜、ストーリーの結末と始まりを繋げる滴が、物語として綺麗すぎるね。
こんな日はいつも 懐かしい人が一瞬浮かんでは 消える
主人公が流した涙はちゃんと雨になって、その雨はひろちゃんの中で漠然とした涙となり、また主人公を無為な嘆きへと目覚めさせる。
メビウスの輪のように、ひっくり返され続ける砂時計のように。
終わっては始まり、始まっては終わってゆく、切れ目のない慕情が哀しい。

3.桜庭友紀「魔女と女王」(「Avalon 」)

どうせ賭けるなら 持てる最高を

街の存続を賭けた女王様vs魔女もの系百合。
詰め込みまくったセリフ・絵・展開、とても熱量のある同人作品を読ませてもらったという感じ。 
正直、話にはついていけないんだけど、でも喰らいついていきたいと思わせてくれる情熱が確かにある。
一本の漫画というよりは、何処かのゲームのコミカライズ化という印象すら受けるほどの情報量なので、考察とか好きな人にはウケそう。

振り返ってみると、私は分かりにくい百合が好きなのかもしれない。
こういうこだわりが詰まった、良くも悪くも同人っぽい商業誌、個人的には結構好きなので次もあったら買いたい。